イリヤの甘くて刺激的な恋
───それとあの、こちらの(ごにょ)かっこいい(ごにょ)お兄さんは…?
初対面の時から、胸がドキドキしてたまらなかった。
そのドキドキは、一緒にあの特異点を駆け抜けて、その後カルデアのサーヴァントとして召喚されてからさらに大きくなった。
───思ってたよりも、ずいぶん長い夏休みになっちゃったな…。マスターさんは、ちゃあんと責任とって、わたしの宿題手伝ってよね!
───ん……えへへー。マスターさんに頭なでられるの、好き…。あ、今度お風呂上がりに髪乾かしてほしいなー、なんて……ほぇっ!? お、お風呂いっしょには、ダメーっ! …まだ…。
───リツカお兄さんに、喜んでもらえたら……嬉しいな☆
いろいろな思い出を積み重ねて、そうして迎えたバレンタイン。贈るチョコをハート形にしたのは、つまりそういうこと。
───わたしは、リツカお兄さんに恋をしている。
───
───今日の夜、オレの部屋に来てほしい。…伝えたいことがあるんだ。
バレンタインのチョコを贈った時、意を決した表情のお兄さんにそう言われた。お兄さんの部屋に行くのは初めてじゃないけど、こんな夜遅くに行くことはあまりなかった。だから、ちょっとドキドキする。
「マスターさん、イリヤです」
《ああ、今開けるよ》
インターホン越しの会話の後、ロック解除を知らせる電子音が鳴ってから部屋の扉が開く。
「いらっしゃい、待ってたよ」
「は、はい…! 失礼します…!」
「とりあえず座って。そろそろ来ると思ってホットココア淹れてたんだ。チョコの味は飽きてるかもしれないけど、良ければどうぞ」
「は、はい。ありがとうございます」
一見いつも通りの、柔和な雰囲気のマスターさん。けれど、どこか雰囲気が堅い。これは、もしかしてもしかすると、そういうことなのだろうか。
いつもの癖でベッドの縁に座る。そんなわたしの前にあるサイドテーブルに、湯気を立ち昇らせるマグカップがコトリと置かれた。
マスターさんもまた、いつものようにわたしの隣に腰掛ける。何もかもがいつもと同じで、違うのはお互いの心だけ。
「もらったチョコ、ちゃんと食べたよ。程良い甘さで美味しかった」
「そうですか!? 良かったぁ…」
「…あとルビーの薬の副作用とかもなかったよ」
「えっ、あー……うん、良かったです…」
「……」
「……」
緊張のせいか、会話が途切れる。…少し気まずいけど、ここはわたしから切り出した方が良さそうな気がした。
「えっと、マスターさん。伝えたいことってなんですか?」
「っ…。そうだな。オレが呼んだんだし、ちゃんと伝えないと。…その……オレの気持ちとか、色々」
「気持ち……それって…!?」
「…オレ、イリヤが好きなんだ」
「!」
「でもオレ……クロのことも好きで、その……今はクロと付き合ってる」
「ぇ…?」
衝撃の一言、その連続だった。告白されたと思ったら、いつの間にかクロに抜け駆けされていたことをカミングアウトされた。
…流石にショックだった。
わたしの方が先に出会ったのに。わたしの方が先に好きになったはずなのに。なのに……気づいた時には、クロにリツカお兄さんを取られていた。
そういえば、クロのバレンタインチョコはわたしのと色違いのハート形だった。…クロも、わたしと同じくらいリツカお兄さんが好きだったんだ。
じゃあ、わたしが勝てる道理なんてない。だって、ここは元の世界とは違う。“お兄ちゃん”を巡っていた時のようなぬるま湯の均衡がない以上、積極的なクロの方が恋愛強者としてわたしの上を行くのは必然だ。
「…えっと、わたし…」
…こんな時、どう返せば良いのかな。ショックで泣けば良いのか、それとも二人の仲を祝福するべきなのか。でも、それだとわたしに好きって言った意味が分からない。
答えなんて見つからないけど、何か返さなきゃいけない気がして言葉を探す。探して、探して……今はまだカルデアにいない親友の……ミユの言葉を思い出した。
…そうだ、諦めるのはまだ早い。クロに先を越された程度でめげてやるもんか。そう思って口を開こうとするより早く、リツカお兄さんが口を開いた。
「…こんなオレを、どう思う?」
「え? どうって…?」
「こんなの、まるっきりクズの言い分だって言うのは分かってる。けど、オレはイリヤもクロも好きなんだ。一人になんて絞れない。…だから、正直な気持ちを言う。クロと愛し合ってるオレだけど、こんなオレでも良いなら……オレと、付き合ってほしい」
縋るような目つきで、わたしの手を握るリツカお兄さん。その目はとても真剣で、わたしのことが本当に好きなんだってことがすぐに分かった。
…リツカお兄さんはわたしのことを好いてくれている。だったら。
「…わたしも、正直な気持ち、言って良い?」
「…ああ」
最後の霊基再臨にかこつけてデートした時のように、口調を砕けたものに変える。大切な人相手に、かしこまる必要はないから。
「わたしも、好きだよ。“リツカお兄ちゃん”のことが大好き。初めて会った時からずっと恋してるの。だから、自分のことクズだとか言わないで。…あのね? 昔、ミユが言ってたんだ。『みんなで分け合えば、争いは起こらない』って。リツカお兄ちゃんの愛はとってもおっきいから、二人で分け合ってもきっと余裕だよ。だから、今は二人平等に、もしミユが来たら三人平等に、愛してほしいの」
「…っ! イリヤ!!」
感極まったリツカお兄ちゃんが、わたしを勢い良く抱きしめる。わたしはそれに抵抗せず、抱きしめ返す形で応えた。リツカお兄ちゃんの体温や体臭がわたしを包んで、とても心地良い気持ちにさせてくれる。
「…夢みたいだ」
「夢じゃないよ。夢になんか、させないから」
そう言って、お兄ちゃんの唇にゆっくりと口づける。
───男の人とのはじめてのキスは、甘いココアの味がした。
───
「お兄ちゃ、んぅっ…♥」
「ちゅ……ぷは……イリヤ…」
ベッドの上、生まれたままの姿で抱き合いながら、何度もキスを繰り返す。
お互いの服は脱ぎ捨てられて、床に散らばっていた。「しわができちゃうかも」と思ったけど、そんなことどうでも良くなるくらい幸せな気分だった。
舌と舌が絡み合う。お兄ちゃんに導かれるようにして舌を動かすと、お兄ちゃんはそれにすぐさま応えてくれる。
「ちゅぷっ…♥ …ひゃっ…♥」
いつの間にか下に下がっていた左手で、お尻を撫でられた。その手はさらに下に下がっていって、わたしの大事なところ……おまんこに触れた。
「ひゃっ♥ ふぁぁッ♥♥ なに、これっ…♥ いつもより…♥♥」
大事なところを直接触られたわたしは、背中を走り抜けた気持ち良さに身体をガクガク震わせた。
すごい、自分でする時と全く違う。無意識のうちにかけてるブレーキがない分、余計に気持ち良いのかな?
…というかリツカお兄ちゃん、女の扱い上手すぎない? クロで慣れてるから?
…ちょっと、妬けちゃうな。
仕返しとして、リツカお兄ちゃんのおちんちんに触れる。クロは多分こういうことをしょっちゅうしてる。ならわたしにだってできるもん、の精神だ。
「っ……イリヤ、そこ…」
「…おっきい…♥」
───それに、かっこいい。わたしは素直にそう思った。
赤黒くて、大きくて、脈打ってて、ちょっとグロテスクなおちんちん。それをかっこいいと思うなんて、わたしおかしくなっちゃったのかな。
そんなことを思っている間にも、大事なところの触りっこはどんどんヒートアップした。ここまでくると、一度イかないとお互い止まらない気がする。
ちょっと下品なキスを繰り返しながら、おちんちんとおまんこをいじりあう。
「…ちゅ……イリヤ、もうそろそろ…!」
「うん、うんっ♥ 一緒にイこっ♥」
二人で手の動きをより激しく、早くして。そして。
───イった。自分の手ではなく、好きな人の手で昇り詰めて、イった。目の前が真っ白になって、チカチカと点滅している。そんなわたしの身体に浴びせられている熱いものは、多分リツカお兄ちゃんの精液だ。
(…熱くて、変な匂い…♥)
そんな飛沫の存在が、“この先の行為”を強く想起させる。
自分でするだけならここで終わり。けれど、今しているのはお兄ちゃんとのセックスだ。だから、まだ終わりじゃない。
「イリヤ…!」
「きゃっ…♥」
わたしをベッドに押し倒したリツカお兄ちゃんが、荒々しく覆い被さってくる。
ああ、わたし食べられちゃうんだ。そう思っているうちに、おちんちんとおまんこがぶちゅっ♥ とキスをする。…そして。
「んぅ…♥ ぁ、あ…♥」
…おちんちんが、ゆっくりと入ってきた。
わたしが痛くならないように、少しずつ、少しずつ押し進められるおちんちん。それが途中で何かにひっかかる。───わたしのはじめてだ。
「…イリヤ」
「うん、良いよ。来て…♥」
微笑みながら促すと、辛抱たまらないといった様子のリツカお兄ちゃんが、腰を一気に進めてきた。
ぷちっ───という呆気なさすら覚える感覚と同時に走る痛み。それが意味するところはつまり。
(ああ。わたしのはじめて、リツカお兄ちゃんのものになったんだ)
わたしは、他の誰でもないリツカお兄ちゃんの手で大人の女になった。
けど、これで終わりじゃない。わたしはこれから、リツカお兄ちゃんに魂の髄までむしゃぶり尽くされて、手垢だらけにされて、リツカお兄ちゃん以外とはえっちなことできない身体にされちゃうんだ。
───そんなの…。
(幸せすぎるよぉ…♥♥♥)
わたしの一番奥にリツカお兄ちゃんが到達したのと同時に、そう思った。
───
そうして始まった本番セックスは、わたしが感じていた痛みを打ち消す程の快感をもたらした。
「っ…イリヤ…!」
「あっ、はぁっ♥ お兄ちゃあん♥♥」
リツカお兄ちゃんが、わたしに覆い被さりながら必死で腰を振っている。無我夢中って感じでかわいいな、って思った。
…普通、はじめての女の子がここまで乱れることはないらしいけど……やっぱりわたしがヘンタイだからなのだろうか。
…正直、わたしが元からヘンタイかどうかなんてどうでも良い。…だって、わたしの身体は現在進行形でヘンタイの身体に変えられてるんだから…♥♥♥
「わたしのこと、もっと好きにして良いんだよお兄ちゃん♥ ずぷぅっ♥ ってして、どぴゅぅぅっ♥ ってして良いんだよ♥」
「はっ、ぁ…!」
しっかりした作りのベッドがギシギシ鳴ってるのが聞こえる。リツカお兄ちゃんのおちんちんがわたしのおまんこを貫いて、自分の色に染めようとしてる証だ。
…カルデアに召喚されたわたしは、もうとっくにリツカお兄ちゃんだけのものなのに。変なの。
「ぁっ♥ おまんこずどんずどんされるのイイっ♥ お兄ちゃんのカタチにされるのイイっ♥♥ 好きっ♥ リツカお兄ちゃん好きっ♥ だいしゅきっ♥ もっと♥ もっとおちんちんちょうだいっ♥♥」
「イリヤっ……オレも、大好きだよ…!!」
「嬉しっ…嬉しいよぉっ♥ じゃあわたしもクロみたいにしてっ♥ かっこいいマスターさんの奴隷にしてっ♥ どんな命令でも絶対服従するから♥ だから好きにしてぇっ♥♥♥」
「だったら…! 奴隷じゃなくて、オレのお嫁さんになってくれ…!! イリヤッ!!!」
脳みその中ぐちゃぐちゃなまま発したわたしの言葉に、リツカお兄ちゃんは完璧な答えを返してくれた。まるで、白馬の王子様みたい…♥
「イリヤっイク…! オレ、もうイク…!」
「大丈夫っ…! 全部受け止めるからっ♥ だからきてぇ♥♥♥」
「ッッ!! イリヤぁッ!!!」
───どびゅッ! びゅっ! ぼびゅ! びゅくッ!! びゅるるるッ!!!
「ッ……くッ…ぁ…」
「ほ、ぉ゛っ…♥ …おにいちゃんのしゃせい、かっこいいよぉ…♥♥♥」
絶頂と同時に、素直な気持ちが溢れ出る。今のわたしには、リツカお兄ちゃんの何もかもがかっこよく見えた。
そう。リツカお兄ちゃんがかっこいいのは、なにも顔や内面だけじゃない。おちんちんも、何なら射精すらかっこいい。初対面の時からかっこいいお兄さんだったリツカお兄ちゃんがすることは、なんだってかっこいいのだ。
白濁した熱い精液が、わたしを中から塗り潰すのが分かる。リツカお兄ちゃんの色に染まったわたしの心と身体に、その存在がより深く刻み込まれて行くのが分かる。…素敵。
「リツカお兄ちゃん、満足してくれた…?」
「うん、最高だった。ありがとう…」
「…えへへ」
褒められちゃった。嬉しいなぁ…♥
幸福感と共に意識が落ちていく。
今度は、告白した時言ったようにクロも交えて三人で楽しもう。そしていつか、ミユも…♥
(…楽しみだなぁ…♥)
幸福な未来に思いを馳せ、リツカお兄ちゃんの温かさに包まれながら、わたしは眠りについた。
───こうして、わたしの初夜はとっても幸せな形で幕を下ろした。
───
…余談だけど。この日から、わたしとリツカお兄ちゃんは一緒にお風呂に入ることが増えた。
もう恥ずかしい気持ちとかはほとんどない。だってわたし達、もっともっとすごいことをいっぱいしてるんだもん。
キスとか、最近仕込まれ始めたフェラチオとか、セックスとか、後はクロも交えた3Pとか。だから一緒にお風呂入るくらい、恋人同士なら全然普通、だよね♥