イミテーション
・転生兄上と海軍√ロシーのバッドエンド的な1つの結末(異変からの派生)。
・ぶっ倒れた後に言動がかつてのファミリー時代に酷似したものになったドフラミンゴの真相とその裏側についての1つのパターン。
・救いがない
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拒絶される事も怒られる事も責められる事も無かった。
話しかければ答え、求めれば胡乱げにしても応じてはくれていた。
ただあまりにも熱を失ったそれが心配で、そして…怖くて。
何より何を話せば良いのか思い付かなくて。
だからどうしても話題はかつてが多くなってしまっていた。
わからないから問いかけて、知りたいから言葉を重ねた。
けれど決して、こんな結末を望んだ訳じゃなかったんだ。
◆ ◆ ◆ ◆
キラキラと、チカチカと。
ある筈の無い光が瞬いて降り積もっていく。
かつて与えられ、注がれ、手渡され、けれどそんなものは無いはずだと目を背けて取り落とし続けたもの。
砕けて壊れてごみになってしまったそれは、きっとかつては〝愛〟やあるいは〝心〟と呼ばれたもの。
そして。砕け散ったガラス片のようなそれらの中に、ぽつりと立つ人影がひとつ。
〝もう渡せるものなんて無いのに〟と音なく紡がれた言葉がその口元を微かに動かして、疲れ果てた虚無の表情で首を傾げる子供がひとり。
──そして、気付く。
問い続けた〝何故〟や〝何か〟は、きっと砕けたそれらの中にあったのだ。
伝えたかった事も聞きたかった問いも求めた救いも願った想いも、かつてのその時に全てが等しく落ちて砕けて無為になった。
届かなかった言葉、伝わらなかった想い。
出来うる限りの事をやっても、駄目だったのに。
なのに今、〝何故〟と問われる。〝何か〟ないのかと心を覗かれる。
渡せる限りの言葉も心ももう手放してしまった。かつて渡したそれが違うと言うのなら、もう何も残っていないのに。……渡して砕けたそれらのどこにそれがあったかなんて、もう自分でもわかりはしないのに。
ああ、けれど。……お前がそれを望むのなら。それが、欲しいというのなら。もう一度、そこから探すチャンスが欲しいのなら。
こんなもの、好きに持っていけばいい。
──傷だらけの手のひらでかき集められた欠片達。
その上に、最後まで握りしめられていた少しだけ大きな欠片が乗せられる。 その一欠片はどろりと溶けて積まれた欠片達と溶け合い混ぜ合わさって、やがて軟体生物か何かの様に子どもを呑み込み伸び上がる。
それはやがて色を持ち、形を作り、そして1人の男へと変わった。
〝これでいいんだろ?〟
それは。ただもう一度、かつて自分だったものをかき集めてくっつけて、無理矢理かつてを再現したツギハギの再現体。
どれが何かなのかも、どこに何があるのかもわからなくなってしまった〝今〟ではもう応じてやれないモノを、求める者に見付けさせて取らせて終わりにする為の模造品。
欲しいモノ、見たいモノ、聞きたいコト、やりたいコト。
あの時こうしていれば、あの時聴けていればという、〝もし〟や〝たられば〟の検証と実践を行う為の生体シュミレータ。
かつてを再現し実演させる為だけに〝今〟を潰して〝かつて〟を作り上げたのが、このドフラミンゴだった。
「───ッ!!!」
「ロシー!? どうした、大丈夫か?」
涙が、勝手に溢れ出て止まらなかった。
垣間見た幻視風景。
砕けた欠片を無理矢理にくっつけたヒビだらけの心が。……その向こうに蹲って消えた小さな人影が忘れられない。
壊れて、砕けて。もう痛みを痛みとしてまともに自覚出来なくて、痛いと訴える事さえ忘れてしまって。
ただただ静かに死んでいった世界が、どうしようもなく焼き付いている。
一時的な混乱でも、ましてや回復した訳でもなかった。
あの疲れ果てて諦めてしまった子供こそが本当で、それをそのまま知って受け入れるのがきっと最後のチャンスだったのに。
「ごめん……ごめん、兄上……っ」
「……フフ、どうした、ロシー。今度はどんなドジをやらかしたんだ?」
まさに〝あの頃〟を思わせる言葉が。
落ち着かせようと背を撫でる小さな掌が。
本心から案じているのだとわかる表情が。
……その全てが、今はただただ哀しかった。
あの頃に聞きたかった事があるのなら。
あの頃にやりたかった事があるのなら。
あの頃に話したかった事があるのなら。
〝今〟の自分は、別に必要無いだろう?
〝違う〟と今更叫んでももう遅い。
砕けたそれらを集めて溶かして作り直したそれはきっと、自分が一度砕け果てていたのだという認識さえ残ってはいない。
一針分の隙間さえ無く、ヒビだらけではあっても確かな形をもっている。
これで、〝かつて〟のドフラミンゴに問う事は出来るのかもしれない。
けれど、〝かつて〟を経て今何を思っているのか。〝かつて〟があるからこそ今何を願うのか。……それを聞く事は、きっともう、出来はしないのだ。
奇跡でしかない再会の先で。
何かが欲しかった訳じゃない。
何かをして欲しかった訳じゃない。
むしろ願ったのはその逆で。
話して伝えて聞いて終わったあとに、何かを欲してくれるなら、何かを願ってくれるなら、今度は自分が叶えられたらと、そう願っただけだったのに。
今になって漸く見付けたそのこたえは、けれど〝かつて〟に阻まれた〝今〟に届く事は無い。
END?
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わかりにくいので補足(読まなくてもOK)
ざっくり言うと記憶の混濁による一時的なものではなく、今よりもかつてを知りたがっている≒あの頃の自分が居たほうが良いのかと早合点(半分は正解でもある)したドフラミンゴ自身が自分自身をその頃の形で再構成したものだった、という話。
今のドフラミンゴも混ぜ込んで居るので、ローの成長とかロシナンテ達の状況とかも何故か受け入れた状態でかつてに良く似た言動をする上、たまにファミリー時代より前の素振りも出たりする。
なので余計に違和感が酷い事になっているし、完全に作り直してしまったのでもとに戻る見込みがほぼほぼ潰えてしまった。
自己犠牲も無くは無いけどそれ以上にどうしたら良いのかわからん状況であれこれ聞かれたりされたりするのも疲れたから終わりたい(けど普通に死んでもまた転生するかも)っていうのも半分くらいあるので、ロシナンテ達だけが悪い訳では無い。
再構成じゃなくて純粋に記憶混濁状態であれば、まだ良いエンドに向かえる可能性はある。