アーパダー=カラミティ 4

アーパダー=カラミティ 4


〜西の部屋の扉前〜

「………ねぇ。何だがこの扉、今まで通り過ぎたのと比べて異質だよね。」

「蔦で扉が覆われていますね。」

「蔦ぐらいなら取り除く事が出来るのでは無いかー?」

「当機構が試してみよう」

ぐるりと一周するために螺旋階段を沿うようにして歩きながら右側を見つつ歩いていると一目見て可怪しく感じる扉が目に入ってくる。今までと同じように重厚そうな重さのありそうな何のデザインも施されていない扉は太い蔦に覆われその全貌を把握することが出来ない。

XXと太歳星君がまじまじと蔦を見つめながら言葉を呟くとハタヨーダナが扉へと近づき武器を展開する。

「『世界を救え、その為の我が戦い(ブラフマシラーストラ)』!!!」

「武器の威力を抑えたせいか、表面の蔦が一掃されただけみたいだな。」

「私の炎なら焼き尽くせるかもしれないから、どいてちょうだい。『化身の円盤よ、一帯を焼き尽くせ(スダルシャナ・カーンダヴァプラスタ)』!!!」

「…………半数程減りましたが、依然として覆い尽くしてますね。」

「周りに被害が行かないように威力を抑えるってなると結構難しいものなのね・・・。」

「どいでくれ」

ハタヨーダナが周りに被害がいかないように注意を払いながらも宝具を展開したが、蔦は切れた跡が残るものの依然としてそこに存在していた。ビーマが後ろから覗き込み扉の状態を確認する。すると今度はバーヌマティーが前に出て建物を燃やさないようにしながらも宝具を展開して蔦を燃やし尽くそうとする。威力が十全に行き届かなかったのか未だに残っている扉の蔦の様子を確認しながらもユユツが言葉を漏らす。それを静かに見続けていたカルナ・リリィが前へと足を進める。

「『威光を、ここに(プラカーシャ・ターパ)!!』」

「…………スーリヤ………?」

「蔦が全部吹き飛びましたね。これで進むことが出来ますよ!」

ぶわりとカルナから炎が生み出され、それが蔦のみを飲み込んでいく。ポツリとガルダが誰にもに聞こえないように小声で不思議そうに呟いたのと同時に、その炎の勢いが徐々に収まっていくと扉を覆っていた蔦は跡形もなく消えっていた。XXが問題無いのかを確認するためにかペタペタと扉に触れてから此方へと振り返る。

「今までと違って外に影響を及ぼせる敵性体が居るのかもしれないな。」

「マスマスー、ゆっくり開けてみてもいいかー?」

「ダメージが通らない相手の可能性もあるから、何かあったら直ぐに撤退出来るように、心がけておいて!」

ハタヨーダナが扉を睨み付けながら呟いたセリフを聞きながらも太歳星君が扉へと近づきXXの隣へと並ぶ。

別の特異点でダメージの通らない相手と相対した事が何度もあるため、注意を促しながらも開けて良いと言う代わりに頷いてみせた。

 ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

部屋の中に入った途端、視界を埋め尽くすのは緑。恐らく元に戻った状態の部屋と同じような四角形の構造をしているだろう壁も、床も、天井もすべてが茨で覆いつくされていた。部屋の最奥にある壁には誰かは分からないが人が茨に囚われているのが確認する事ができた。

「今まで見てきた部屋とはまた雰囲気が変わったわね。」

「天井が元に戻った状態の今までの部屋よりも高いのは、茨によって上の部屋を突き破った結果ではないかと当機構は推測する。」

「ここからだと、誰かは分からないが誰かが茨によって囚われているな。」

「罠の可能性もありますが、警察官として囚われている人を見過ごすことは出来ませんすぐさま助けに行きましょう!」

キョロキョロとバーヌマティーが周囲を見渡し、ハタヨーダナが天井を見上げ、それぞれ感じたことを報告してくる。ガルダが目を細め奥の壁に視線を向け、XXがまだまだやる気に満ちているのか生き生きとした様子で告げてくる。

周囲に警戒をしながらも全員で最奥の壁へと近づいていくと、その人物は見知った色を纏っているように見受けられた。

「スヨーダナ・・・?」

「スヨーダナ!!」

「・・・・・・・・・。」

最初に気が付いたユユツとビーマが思わずとでもいうようにその人物が囚われている場所へと駆け寄る。茨に囚われている青年(スヨーダナ・オルタ)は気を失っているのか、深く眠り込んだ様子で彼らの呼びかけにピクリとも反応を示さない。

ユユツとビーマは茨を引き千切りたそうにしながらも、XXの助言を気にしてかこちらが駆け寄るのをその場で待ち続けていた。

「目覚めないな。」

「スヨーダナ・オルタ、ここに囚われてたのね。この茨、一体何なのかしら・・・。」

「なあ、カルデアのマスター。この茨、引き千切ってもいいか」

「罠だとしても、スヨーダナを助けたいんです。」

「分かった。良いよ。」

ハタヨーダナが近づいて声を掛ける。先程威力を抑えたとはいえ、焼き尽くせなかった扉の茨と同じように見えるものをバーヌマティは苦々しい表情をしながら見つめる。

スヨーダナ・オルタが囚われ、背にしている壁をまじまじと見つめると柱の様になっているのを見ながらもビーマがこちらを伺うように問いかけ、ユユツも懇願するような響きを持って話しかけてきた。

仲間であるスヨーダナ・オルタを助け出したい気持ちは同じだったため、了承する。こちらが言葉を話すと同時にビーマが篭手を球体からずるりと引き出し、手にはめる。スヨーダナ・オルタに傷がつかないように細心の注意を払いながらも手早く茨を取り払っていく。入り口の茨とは違ったのか、茨は次々に取り払われていき、茨という支えを失ったのかぐらりと彼の体はバランスを崩す。それをビーマは対格差があるもののどうにか抱え込み、一番近くに居たユユツの元へとすぐさま舞い戻った。だがそれと同時に部屋中の茨がざわざわと蠢き始める。

【―――――――――!!!!!!!】

「皆、気を付けるのだー!」

「先程から謎の生物のバーゲンセールでもしているんでしょうかね!!」

「・・・はっ!てめぇみたいな臆病な奴を怖がるわけねぇだろ!なぁ、ユユツ。」

「・・・ええ。どれだけ気味の悪い姿をしていようと、今更ブレたりはしません。スヨーダナを苦しめた罪、償ってもらいます!」

スヨーダナ・オルタが背にしていた柱の茨がズルズルと動き、灰色の不気味な樹木が姿を現す。天井に届かんばかりの梢が震え、人一人は入れそうな穴が開いた楕円形の顔がぬるりと顔を出す。太い根っこは床の茨を押しのけ、まるで足のような動きを見せた。ある程度予測はしていたものの、スヨーダナ・オルタが背にしていた柱こそがこの部屋の茨を統べるものだったのだろう。苛立ちに任せ吠え、今まで見たこともない大きさのグリーンマンの様に見えるエネミーはこちらに敵意を向けてくる。

太歳星君とXX、ユユツとビーマの言葉を聞いても全く意に介さず、周りの茨を伴いながらもこちらへと襲い掛かってきた。


FINAL BATTLE 1/1 

エネミー名がバグって見えないがグラフィックが通常のよりも大きいグリーンマン姿の敵と戦闘。

こちらが攻撃した後、蔦の全体攻撃で前衛が一掃されてしまう(どんな攻撃にも敵がHPを残して耐える為、負け確定の戦闘)。後衛と入れ替わってバトルフィニッシュの演出が入る。


「なによこれ、一回の攻撃が広範囲だし、威力が桁違いじゃない!」

「マスター!これ以上戦っても、無意味だ。我なら大丈夫だ、先に行け!」

「・・・ありがとう、ガルダ。皆、急いで扉の外まで撤退!」

バーヌマティーが今まで戦ったことのあるグリーンマンとは比べ物にならない威力の攻撃を見てしまったためか驚愕するようにして叫び声をあげる。ガルダがこちらから意識を逸らすためか上空を飛び回りながらも提案をしてくる。ちょこまかと上空を飛び回り蔦の攻撃をかわし続けるガルダが気にくわないのかグリーンマンのように見えるエネミーはこちらに意識を向けていない。バタバタと部屋を走り抜けガルダが最後に扉をくぐり抜けた瞬間、全員で急いで閉める。暫く警戒するようにして見つめるものの、攻撃音が全く聞こえてこないため、思わず床に座り込んでしまった。

「ビックリしたのだ〜。」

「今まで相対してきたものよりも段違いであったが、何だったのだろうな。」

自分と同じく床に座り込んで太歳星君がため息を吐くようにして言う。未だに警戒したまま扉を見つめたままハタヨーダナが首を傾げながらも呟いた。

「…………う…………?」

「………スヨーダナ?」

「良かった!気が付いたんですか?」

逃げる際にハタヨーダナに背負われてもピクリとも動かなかったスヨーダナ・オルタがうめき声をあげる。その声が聞こえたのかビーマは彼の名前を呼ぶ。ハタヨーダナは背中からスヨーダナ・オルタを降ろし床へと横たえる。ビーマとユユツは共に慌てて彼らの傍にしゃがみ込んだ。

全員で近くに寄り様子を伺うと、スヨーダナ・オルタはゆるゆるとその瞼を持ち上げた。

「……………ここは何処だ?」

「スヨーダナ・オルタ怪我はない?」

「マスター?いや、怪我は無いが。………私は先程まで、一体何を……」

「………モンスターに囚われていたんですよ。スヨーダナ、貴方が無事で良かった。」

「……………ユユツ!?なぜ、ここに!?」

「俺もいるぜ、スヨーダナ。ビーマだ。覚えているよな?」

「…………ビーマ?…………ああ、野生児ビーマか。今日は枝や葉っぱが突き刺さって居ないのだな………ではなく。………お前もそうだが、そこの初対面の白髪の男を含めて何故ここに居る。」

「ヴィヤーサの試練とヴァーユの誘導の結果だな。」

「………。取り敢えず、マスター。状況把握をしたい。お前達がここにいることを含め、1から説明してくれんか。」

 周囲を見渡しながらも、見たことが無い建物だったのかスヨーダナ・オルタは不思議そうに言葉を漏らす。藤丸が心配そうに問いかけると彼自身の掌を見つめながらもポツリと言葉を漏らす。

ユユツが心から安心したように声を掛けるとスヨーダナ・オルタはまじまじと彼を見つめ、あり得ないものを見たとでも言うように驚愕したかのように言葉を吐き出す。ユユツの近くに居たビーマがズイッと近づくとしばらく無言で考え込んでしまった。ようやく何とか思い出したのかビーマの姿をじろじろ見つめながらもカルナ・リリイへと視線を移した。

視線を向けられたカルナ・リリイが発した言葉を聞き埒が明かないと判断したのかスヨーダナ・オルタはこちらへと目線を向けてきた。

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

「・・・・つまり………私がここに居るのはインドの神々が原因ということなのか?………なら、あの立て看板も何か意味があるのではないか?」

「あそこに看板なんて、置いてあったかー?」

説明を聞き終わったスヨーダナ・オルタは頭が痛いとでも言うように深いため息を吐きながらも床から立ち上がり、螺旋階段の結界の外側に立っていた木製の看板を指差す。

不思議そうにしながらも首を傾げる太歳星君の言葉を気にせずに彼はその看板に躊躇う事なく近づいていく。

「何が起こるか分からないので、一人で動くのは不用心ですよ。」

「何て書いてあるの?」

「……『脆弱なるヒトの子よ。そこに我らにとっての欠片を送り込んだ。減っても害はないものだが、ソナタ等にとって褒美となろう。我らを崇めるがいい。』だそうだ。」

「…………ふぅん。そう見えるのだな。」

「マスター、すまない。我らの同胞が、本当に、すまない…………。」

XXが慌ててスヨーダナ・オルタの後を追う。バーヌマティーが近づき看板をみつめるが、意味の分からないので羅列にしか見えなかった。だが、その文字が一瞬ぶれると読めるような文字に変化したので看板の文字をハタヨーダナが読み上げる。

スヨーダナ・オルタが小声でつまらなそうに言葉を漏らすと、ガルダが直ぐ様此方へと心底申し訳無さそうに体を縮めながらも言葉を呟く。

「ええと、つまり………?」

「何度かあったレイド戦、というやつではないかー?」

「へぇ、そう。………欠片だろうと容赦はしないわ。マスター、アイツらが困るぐらい狩り尽くして、痛めつけてやりましょう!」

「知ってますよ!素材狩り、若しくは採集決戦というやつですね!!」

「………残当、というやつか。」

「えーと、うん・・・。みんな、頑張ろっか。」

一応確認をするために言葉をかけると、太歳星君が答えを返す。バーヌマティーは殺意に満ちた色を瞳に宿しながら武器を構え、XXが茶化すように言葉を発し、眉をハの字に下げながらカルナ・リリィが呟いた。

バタンと複数の場所で扉が勢いよく開いたような音が聞こえてくる。やれることがそれしかないため、彼らの掌の上でしかないのは理解しつつも、貴重な素材を採集できることを考えれば、参加する以外の思考は存在しなかった。

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