アーパダー=カラミティ 3-1

アーパダー=カラミティ 3-1


〜北西の部屋の扉前〜

「今度は渦のように見えるデザインだね。」

カルナ・リリィの助言通りに螺旋階段に沿うようにして左周りに館の中を歩き、北西の扉の前に立つ。すると今度は扉に渦が巻いているようなデザインが刻まれているのが分かった。

「渦、というと水か風のイメージが有りますけど、どちらなんでしょうね?」

「私には風のように見えるわ。」

「当機構もそれに同意しよう。」

「先程の部屋の仕組みと同じなら、風を扱う敵が居る可能性があるな。」

「風に有効なのって土のイメージが有るけど………」

「このメンバーの中で一番土のイメージが有るのって太歳星君ですかね?」

XXも藤丸と同じように扉をマジマジ見つめながら話すのを聞いて水着のバーヌマティーは彼女がどう感じたのかを答え、ハタヨーダナもそれに同意する。

肩に乗ったガルダは先程のスルトのような見た目の敵性体を思い浮かべたのか難しそうな顔をしながらも言葉を呟く。藤丸はついつい良くあるゲームの特性を思い出してしまったため、一番話が通じそうなXXを見つめるとその視線に気がついたのか此方に顔を向けてから、首を傾げながらもちらりと太歳星君に視線を向けた。

「吾輩の活躍チャンス!というやつだな。任せろ、マスマスー!」

「油断はしないことだ。」

「今の所、どの時空のカルナも言葉が足りないわよね。もう少し、言葉を増やした方がいいと思うわよ?」

ドンと胸元を叩きながら自信たっぷりに太歳星君が話す言葉を聞き、カルナ・リリィは静かに言葉を発する。水着のバーヌマティーは首を傾げた彼を見ながらも苦笑しながらも言葉を伝えた。

「………善処しよう。」

「さて、今度は私が扉を開けましょうか。」

カルナ・リリィがこくんと頷いたのを見てから、XXが扉の前へと立つ。

彼女は開けても大丈夫かを此方に目線で問いかけてきたため、頷きながらも足に力をいれる。そうして開け放たれた扉の内側に入り込んだ瞬間ー。

「とーばーさーれーるー!!!」

「マスマス!大丈夫かー!」

「何なの、この風の勢い!?竜巻が発生してたりするの!?これじゃあ、最初の部屋の様に何処かで戦闘があったとしても分からないじゃない!!」

轟轟と音を点てながら容赦なく風が吹き荒れ、足をなかなか先に進ませる事が出来ない。それどころか、入ってきた扉に押し戻されそうな勢いだった。

体重が軽そうに見える太歳星君とカルナ・リリィの方へと目線を何とか向けると、何故か風の勢いに押される事なくしっかりと立ち上がり続けることが出来ていた。

後ろに目線を向けると、床ー砂のようになっている地面ーに突き立てるようにして棍棒を手に持ち、風の勢いに押されないようにして立っている水着のバーヌマティーが忌々しげに言葉を吐き捨てている。

「マスター君、あちらから何かが来ます!」

「ヴァーユの使いだ。」

「はぁ!?………確かに、何か近づいて来るわね。マスター!神性は感じないけど、ぶっと飛ばしてもいい!?」

「駄目だからね!………あれは、船………?」

「…………格好よいな………。(小声)」

XXが暴風で見通しが出来ない向こう側を指差し、カルナ・リリィは何が来るのかを知っているのうな口調で言葉を呟く。インドの神の名前を聞き取った水着のバーヌマティーが風で飛ばされないようにするためか、足を地面にめり込ませるようにして体制を変え棍棒を構えながらXXの指した方角へ敵意を向ける。慌てて静止しながらも暴風の向こう側へと目を向けると、帆船のようなものが見える。風に全く動じずに立ち続けているハタヨーダナが何かを小声で呟いたがそれは風の勢いにより誰にも聞き取ることが出来なかった。

不思議な形の小型船のようなものは風の膜を纏いながら暴風の勢いに負けること無く一定のスピードで此方に近づいてきて、そうして目の前にズザーと音を立てて停まった。船の周りにある風の膜は藤丸達を傷つけることなく透過し、外の暴風を隔てるような役割を果たしている。

「人が居るのに気がついたので近づいたのですが、問題ありませんか!?」

「あれって、もしかして………」

「ビーマ!」

「おう!任せろ!」

ぴょこっと何処か見覚えのあるような人物が船から顔を出して問いかけてくる。思わず全員で目線を合わせると、彼は船の中へと聞き覚えのある名前を呼びかけた。そうして、船から縄梯子と共にカルナよりも年下に見えるユユツとビーマに似たような子供達が降りてくる。

「貴方達は………」

「もしかしたらご存知かもしれませんが、初めまして。ユユツといいます。そして、此方が」

「ビーマだ。あの時以来だな、カルデアのマスター。」

「何処かで会ったことがあるー」

「スヨーダナじゃねぇか!よかっー…だだだだだだだ………。痛ぇよ、ユユツ………。」

「ちゃんと視て。私達が知ってるスヨーダナではないだろう(小声)。ビーマがすまなかったね。………ねぇ。君の名前を、聞いてもいいかな?」

バーヌマティーが問いかけるようにして話しかけると幼い姿のユユツはにこりと笑顔を浮かべ自己紹介をし、幼い姿のビーマも彼に続いて挨拶をした。

まるで、どこか出会っているかのようなビーマの言葉にハタヨーダナが藤丸に顔を向けて話しかけた声を聞いて、勢い良くビーマとユユツが彼に目線を向ける。彼の顔を見たビーマがぱぁっと満面の笑みを浮かべて腕を広げ、ハタヨーダナに近づこうとする。だが、ユユツがビーマの耳をぎゅうと容赦なく引っ張ったことでそれは途中で留められた。

不満そうに呟くビーマに対して半眼になりながらもユユツはその言葉を小声でバッサリと切り捨てた。そして視線を戻し、コテリと首を傾げながらもハタヨーダナに伺うようにして問いかけてきた。

「当機構の名はハタヨーダナという。」

「………そうかい。宜しく、ハタヨーダナ。良い、名前だね。」

「吾輩達も自己紹介した方がいいかー?」

「・・・・おう。ありがとうな!」

ハタヨーダナの名乗りを聞いて、愛おしそうな目線を向けながらもユユツはゆっくりと微笑みかける。彼らに近づいていた太歳星君が元気に手を上げながら発した問いかけに耳を摩っていた手を下ろし、ビーマがニッカリと笑って返事をする。

「吾輩は太歳星君!」

「私は銀河警察の期待のエース、謎のヒロインXXです!」

「カルナ・リリィだ。」

「知ってるかもしれないけど、バーヌマティーよ。」

「俺は藤丸。………えぇと、ごめんビーマ。インドの特異点が沢山あって、何処で会ったビーマなのかが分からないんだけど、教えて貰っていいかな?」

「………もしかして、サーヴァントとして成立した他の俺が何人も居るのか?凄いな、カルデア………。教団からスヨーダナを取り返すために時々同行していたビーマだ。覚えてないか?」

「………あぁ!あの時の!!君もサーヴァントになれたんだね。」

「残念ながら、私達はサーヴァントではありませんよ。……立ち続けて話を続けるのもなんですし、良ければ私達の船に乗りませんか?」

「それぞれ持ってる情報があるのなら、すり合わせた方がいいだろうからな。この船は俺達の世界の聖仙ヴィヤーサが作ったやつだから、安全性は保証するぜ。」

「マスター君、どうします?」

「取り敢えず、お邪魔させて貰おうかな。」

「案内しますよ、私達の船に」

太歳星君から順に名乗り、最後に藤丸が自己紹介しつつ、何処で会ったビーマなのかを確認する。驚いたように目を開いきながらもビーマは解答した。

今回攫われているスヨーダナ・オルタがサーヴァントとなる切っ掛けである特異点で協力し合ったビーマであることが判明し、また協力を得られるのではないかと思ってサーヴァントなのかを確認すると、否定されてしまった。

ユユツは風の幕の外側で暴風が吹き荒れる景色を眺めながらも提案をしてきて、ビーマも同意するようにして船を指差す。

XXが確認するように問いかけてきたため、ヴィヤーサが作ったのなら問題無いだろうと判断し、その提案に乗った。ユユツとビーマが先導するようにして、縄梯子を登るのを見ながらも彼らの後を付いて行った。

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