アーパダー=カラミティ 2

アーパダー=カラミティ 2


レイシフトした先で瞼を開けると、目の前に大きな西洋風の館が存在していた。

「少し大きめの館だなー?」

「マスター君、カルデアとの通信は繋がりますか?」

「ちょっと、待ってね。………うーん。繋がらないみたい………。」

「軽く周りを見てきたが、この館の周りは鬱蒼とした森があるだけで道が未整備だ。」

(寧ろ我には森の先が何も無いように見えたのだが、ハタヨーダナにはそう見えなかったのか………?)

「と、いうことは。この館の中に入るしか選択肢がないわね。」

太歳星君が腰と額に手を当てて背中を反らしながら不思議そうに言葉を呟きながらも館を見上げていた。XXは彼が背を反りすぎて倒れないようにさり気なく手で支えながらも此方の顔を覗き込んでくる。

カルデアとの通信を試しに行おうとするものの、映像は繋がらずノイズ走ったものしか映らない。良くある事なので特に気にすること無くキョロキョロと周りを見渡して見ると、いつの間にか散策していたのかハタヨーダナがガルダと共に館の周りにあった森からすーっと戻ってくる。彼の話を聞いたバーヌマティーは目の前にある館を見据えながらも、顎に手を当てて難しい顔をしていた。

「罠があったとしても、入るしか無いのかー。」

「取りあえず。私が先人を切りますので、マスター君はその後に続いて下さいね。」

「当機構が殿を務めよう。バーヌマティー、太歳星君、マスターの隣で周りを警戒してくれないか。ガルダもマスターの傍に。」

「何が起こるか分からないものね。充分注意して進みましょう。」

ムーンとでも言うような表情をしながらも反らした体制から戻り、不安そうに言葉を漏らす太歳星君から離れてXXは館の扉の前へと立つ。

ハタヨーダナは藤丸の後ろを守るようにして背後に陣取り、考え込んでいるのか動かない残っている2人と彼の肩に停まったガルダに声を掛ける。その言葉を聞き、バーヌマティーと太歳星君が左右に陣取り、ガルダは頷き羽ばたいて藤丸の肩へと乗った。

「それじゃあ、開けますよ」

「大きな階段だけど、何か膜のようなものが無いかー?」

(見たことのない様式の結界だな。何が張ったんだ………。)

XXの身長の倍程ありそうな大きな扉を開けると目の前には館の中央に上へと昇るための大きな螺旋階段が存在していた。だが、太歳星君が言うように膜ー恐らく魔術による結界ーが存在しており、上へと登れそうも無さそうだった。

肩に乗ったガルダは動かずに無言でじっと階段を見据えている。

「それぞれ両脇に部屋が有るけど、扉は開かなそうね。」

「こちらも無理だ。試しに切りかかってみたが傷もつかない。入れる場所が限られているのかもしれないな。」

「取りあえず、右から順番に扉があるか見てみようか?」

バーヌマティーが周りを警戒しながらも左に存在していた扉に近づきガタガタ触れてみるが、全く動く様子がない。同じように右の扉に近づき試しに攻撃をしたのか全く手応えを感じられなかったようで武器をフワフワ浮かせながらも不満そうな顔をしながらもハタヨーダナが戻ってくる。

その様子を見て藤丸はとりあえずどこかに入れない場所がないかを探すため右方向へと指を指し示し、ゆっくりと全員で移動していく。暫くすると、右側の壁に先程の扉よりも豪華そうな装飾の付いた扉が存在していた。

「恐らく、先程ハタヨーダナが攻撃した扉と同じ部屋に繋がってる扉だとは思いますが………」

「物凄くあからさまでは無いかー?吾輩、誘われているようにしか見えないぞー?」

「………何だが、炎の形のように見えるような装飾だな。」

「………なら、私が先行しましょう。水による攻撃ができるもの。何かあったとしても直ぐに対処が出来ると思うわ。」

XXが壁と扉を眺めながらも言葉を呟くのを聞いて太歳星君がぎゅうと此方に体を寄せながらも不安そうに言葉を漏らす。

まじまじと扉の装飾を見たハタヨーダナが呟いた言葉に対して、バーヌマティーが大きめの水鉄砲のように見える武器を取り出して構え扉の前へと立つ。

「バーヌマティー、無理はしないでね!皆は何があっても良いように、戦闘体制!」

「当機構が扉を開けよう。………では、行くぞ!!」

号令を受けてハタヨーダナが扉に触れるとあっさりと動きその部屋の中へと入ることが出来た。だが、そこはー………

「マスター!!熱すぎるぞ、この部屋ー!!」

「………。というか、部屋じゃないですよね!?炎があちこちから吹き出てるだだっ広い荒野にしか見えないのですが!?」

(何なんだ、この異様な気配は………?)

「………マスター!あちらから、戦闘音のようなものが聞こえているが、どうする!?」

「もしかしたら、先にレイシフトしたメンバーが何かと戦っているかもしれないから、案内して!!」

部屋に入ったのにも関わらず、まるで何処かの外の景色のような場所が目の前に広がっていた。

下の床ー地面のように見えるものーは乾燥したかのようにひび割れ、所々から火の柱が吹き上がりこの場所の気温を上げ続けている。草木は1本も無く、何かが存在しているような気配を感じ取る事が出来ない。

バーヌマティーは驚きつつも気を取り直して武器を構えたまま無言で周囲を警戒するが、あり得ない現象に驚いたのか太歳星君とXXが驚いたように声を上げる。ガルダは肩の上でバサリと羽を広げ、まるで攻撃をする前動作のように前屈みの体制を取っていた。

警戒しながらも耳をそばだてていたのか、ハタヨーダナがここからは何も見えない場所を指差しながらも此方に問いかけてくる。ダ・ヴィンチちゃんが言っていた無断でレイシフトしたサーヴァントかもしれないと思い至り、ハタヨーダナに指示を出し案内してもらう。

 

 ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー


バタバタとその不思議な空間を走り続けると、確かにハタヨーダナが言った通りの戦闘音のようなものが聞こえてくる。その先を見つめてると、カルデアに居るとある人物に少しだけ似たような風貌の1人のサーヴァントが北欧異聞帯に居たスルトのように見える敵性体に武器を振るっているのが見える。

「行って!バーヌマティー!」

「助太刀するわ!」

苦戦しているように見える様子だったので、バーヌマティーに先に行ってその人物の手助けをするように頼む。その人物を見てやきもきしたような顔をしてたバーヌマティーは此方の指示を聞いて申し訳無さそうな顔をしながらも、傍から離れて瞬時にそのサーヴァントの下へと駆け寄った。

「………不要だ。」

「吾輩達も戦士のようなものだぞー!」

「私も賞金や武勇は独り占めしたい派ではありますが、一人で難しいのなら力を借りるべきだと思いますよ!」

「当機構は君とは余り関わりあいが深くは無いが、それでも分かることはあるぞ。君は言葉の足らぬ、と。」

バーヌマティーが戦闘に介入したことで余裕が生まれたのか、赤い髪の太歳星君よりも少し年上のように見える少年がスルトのように見える敵性体と距離を取り、此方にちらりと目線を向けてくる。

言葉をそのまま受け取った太歳星君が不満そう言葉を投げかけ、XXも助言をその少年に掛ける。ハタヨーダナが呆れたように言葉を連ねたことで少年はほんの少し眉根を下げた。

「だが………」

「………別時空のカルナ。あなたが何と言おうと、私が後悔しないために勝手に助太刀するわ!」

「…………。了解した。行くぞ!」

何か言いたげな少年の言葉を遮るようにバーヌマティーが話しかけると、ほんの少し驚いたように目を見開きながらも頷き、手に持った武器を握りしめその言葉に頷いてみせた。


 FINAL BATTLE 1/1 

エネミー名がバグって見えないがグラフィックがスルト姿の敵と戦闘。

戦闘スタイルも異聞帯のスルトそのもの。

赤髪の少年と戦っていたせいか異聞帯スルトより若干HPが低め。


「………おわっ……たの………?」

「!!マスター君!!」

「うわ!?XX!?」

「景色が………?」

(これは、まるで塗り替えられて………?)

スルトのように見える敵性体がザラザラとその体を崩壊させていく。困惑したように言葉を呟くバーヌマティーを見ていたら急に体が思いっきり引っ張られる。急なことだったため抵抗することが出来ずにXXに抱え込まれ暗闇に包まれ周りが一切見えなくなる。

ゴウゴウと何かが燃え上がり続けるような音と共にハタヨーダナの驚くような声とこの不思議な空間を走って居る時から隣を飛び続けているバサバサというガルダの羽ばたきが暗闇の中で聞こえてくる。

「ほわー…………。調理場みたいな部屋になったぞー?どういう仕組みなんだ、これー?」

「ねえ、XX?離して欲しいんだけど………。」

「………すみません、マスター君。見たら酔ってしまうのではないかと思って目隠ししてしまいました。」

ビックリしたように呟く太歳星君の言葉を聞き、周りの様子を確認したかったためXXの背中をペシペシ叩く。暫くすると腕の力が緩みXXの体が離れて行く。

彼女の言葉を聞きながらもキョロキョロ見回して見ると、太歳星君が言った通りキッチン道具が揃っている広い屋敷に備え付けられたような調理場のような部屋が広がっていた。

「マスター、体調に変化はないか?」

「何とも無いけど…………。そんなに変な事が起こったの?」

「変、というか………。どこからか炎がブワーって広がって周りが見えなくなったから、私にも何が起こったのか分からないのよね。」

「…………。助力感謝する。…………次は北西の部屋だ。」

「………君はカルナのように見えるが、どうしてここに居る?」

藤丸の肩へと戻ったガルダの心配そうな声を聞きながらも景色が百八十度変わった事に驚きながらも特に自分自身の不調は感じられなかったため問いかけると、バーヌマティーが首を捻りながらも返事を返してくれる。

赤髪のカルナのように見える少年は言葉を発した後、扉の方ー炎の装飾がされているので恐らく自分たちが入ってきた物ーへと踵を返す。何処かに行ってしまいそうな彼を引き止める為にハタヨーダナが問いかけると足を止め、くるりと此方に振り返ってみせた。

「俺はキャスターのカルナ・リリィ。異変を正すため、ここに居る。」

「吾輩達も、其の為にここに居るから協力するぞー。1人より2人。2人より3人なのだー。実際吾輩達も、それでいっぱい助けられたぞー。」

「もしかしたら貴方にとって初対面かもしれないけれど、私は貴方の友なのよ。一緒に行動させてくれないかしら。」

「…………。好きにしろ。」

「うん。有難う!俺の名前は藤丸。これから、宜しくね!」

此方を見定めるようにして見つめてくるカルナ・リリィに躊躇うことなく太歳星君は近づき、彼の縁深い特異点を思い出しているのかぴょこぴょこ周囲を跳ね回りながら元気に話し掛ける。

バーヌマティーもカルナ・リリィへと近づき声を掛けると彼は言葉少なく肯定する。その様子をみて、ほっと息を吐きながらも言葉を掛けると言葉カルナは無言で頷いてくれた。

「ここから、北西の部屋に行けばー…………。あれ?何か足に当たったみたい………。」

これからの方針を確認するためカルナ・リリィに話し掛けるため足を一歩前に踏み出すと何かが足に当たったため、床を見てそれを拾ってみる。

「古い紙と何かの破片のようだな…?」

「この紙は………。」

「………何も書いて無いように見えるけど、この紙の事知ってるの?」

「………。マスター君、重要なものかもしれませんし、持って行きましょう!」

「他には何も落ちてない床に落ちてたんだもの。何か意味があるかもしれないわ。」

隣に近づいてきたハタヨーダナが手の中の物を覗き込む。見やすくするためかハタヨーダナの肩へ移動したガルダがじっと紙を見つめながら視線を滑らせるのを見て何も書かれていない古い紙切れをひっくり返してみる。

XXは暫くガルダの様子と紙を見比べていたがにっこりと此方に笑いかけながら話しかけてくる。カルナ・リリィの隣に居たまま周囲を見渡したのかバーヌマティーも同意してきた。

「………急ぐぞ。」

「わわ。待って、待って。置いてかないでよ。」

カルナ・リリィはそう言って扉へと足を進めるため慌ててポケットに拾った物を入れて彼の背を追いかける。そうして全員で扉をくぐり抜けた。


誰も居なくなった部屋の中央にはいつの間にか現れたインドの神性が感じ取れるような不思議なオブジェだけがポツンと残されていた。


~設定~

〇謎の特異点と謎の大きな西洋風の館と周囲を取り囲む先が見えない鬱蒼とした森。

どうやら、見る者によって受ける印象が違うようだが・・・?

殆どの同行者は藤丸が付けたサングラスの恩恵を受けているのか、彼と同じような印象しか受けない。


〇カルナ・リリィ:赤髪のショタカルナ(イメージは没カルナが幼くなった姿)。

         現時点では14歳くらいの見目を想定。

館の南東に位置する部屋でスルトのように見える敵と戦っていたサーヴァント。

プリヨダナの助言があるものの言葉足らずが原因で「カルナだから恐らく味方なんだろうけど、味方なのか???(今までの特異点でその時空のドゥリーヨダナの味方をするためカルデアに敵対してきた現地のカルナを思い浮かべてしまう)」ってついつい考え込んでしまうような謎のサーヴァント。

手伝ってくれるもののマスターと仮契約をしないため、その疑惑に拍車をかけている。キャスタークラスとして自己紹介してくれるが、逆に言うとそれしか分からない。


〇謎のオブジェ

まるで何かを封じるようにしてそこに現れた。

近づくと春の太陽のような温かさを感じることが出来る。

Report Page