アンサーソング
ブラウニー三等兵の中の人ブラウニーは、よもやこの隊で料理以外の特技が役に立つ日が来るとは思わなかった。その特技とは、生き物の寝かしつけである。
故郷の村の赤ちゃん寝かしつけ大会では、6歳からの初出場以降、毎年優勝をかっさらっていたほど。まあ、今やそのすべては瓦礫の下にあるのだが。
「そうれすね!グライダー先輩が安心できる場所になれるとよいのれすが!」
自分はめったに眠らないものの、周りを寝かしつける腕は確かだ。
誰かを元気づけたり熱狂させるようなものではないが、ほんの少し気持ちを落ち着かせるくらいにはなるだろう。海兵になりたての頃、話していた上官が眠ってしまった時は焦った。ので、それ以来大きな声で元気よく喋るように気を付けている。
「絵本をいっぱい借りてきたんれすよ!どれがいいれすか?」
グライダー先輩が、他の人に優しくするくらい自分自身にも優しくなれますように。
息をするのと同じくらい簡単に、自分自身を労わることができるように。
「聖歌もなんだし、太陽のお歌がいいかな、それとも星の歌がいいかな……」
誰も誰かを庇って死ぬことがありませんように。
たとえいつか誰かの盾になっても、必ず生きて帰る。
みんながそう約束してくれますように。
「起きたらガーデニングにさそってみようかな?植物もお歌がすきだし、きっとグライダー先輩のこともすきだと思うし」
歌声に揺れていた花を撫でる。
寝息を確認はしたものの、歌は歌い、絶やさない。
ほんのちょっとだけでいい。
ほんのちょっとだけでいいから、誰かを癒したい、優しさを渡したい。
慈しみたいし、愛で包みたい。喜びを増やし、苦しみや悲しみを減らしたい。
誰もが一瞬でも、誰かを傷つけるのを躊躇うように。
「いまは、みんながおいしくごはんを食べてくれればいいや……」
いつか、こどもはこうして安心して眠れるように。
戦いなんてしなくていいように。引鉄なんて引かなくていいように。