アロメルス編

アロメルス編


「私はあなたのものよ。あなたが望むならなんでもしてあげる」

シトリスは男の耳元で優しく囁く

シトリスはいつだって男のためを想い行動してくれる

そんな彼女に男は感謝と愛情を示す

「んっ、ちゅ……」

男が口づけをするとシトリスは喜んでそれを受け入れる

「ふふっ、ありがとう。大好きよ」

シトリスは男を優しく抱き寄せる

男は彼女の柔らかな感触に包まれて、その優しさと愛情に溺れていく

舌と舌は互いをより深く感じ合うためにゆっくりと絡み合う

快楽を貪るためではなくこのひとときを慈しむように丁寧に

「んぅ……好き、大好き」

男はシトリスの豊満な乳房に手を伸ばし始める

シトリスはそれを受け入れるかのように身体を寄せ、男に対して乳房を差し出すように近づける

男は両手で乳房を優しく揉みしだく

「んっ……ふふっ」

シトリスは声を漏らしながらも男を安心させるように頭をそっと撫でてやる

そして男は授乳を求める赤子のように先端を口に含んだ

「いっぱい飲んで」

先端からじとりと溢れる母乳蜜を喉を鳴らして飲み干していく

甘く優しい味に酔いしれるように男はゆっくりと母乳蜜を体内に取り入れていく

「どう?おいしい?」

シトリスの問いに男は大きく頷き乳房から離れようとしない

むしろもっと欲しがるように吸い付いているそんな男の仕草に愛おしさを覚えながらシトリスはそっと頭を撫で続ける 

「じょうずよ」

ただ甘えるだけのその行為にシトリスは微笑み純粋に喜んでくれる

それだけで男の心は途方もない達成感と幸福感で満たされていく

「もっと甘えてもいいのよ」

シトリスは男の頭を撫でながら慈母のような微笑みで男を包み込むように語りかける 

その声はシトリスを恐れて男に媚びる性玩具との間では決して生まれない確かな愛がこもっていた

シトリスに自らのすべてを曝して甘えることは男にとって何物にも代え難い幸福の時間だった

「ねえ、取り込み中悪いんだけど」

男とシトリスの時間を邪魔するように1人の少女が声をかける

「あら?何か用?」

シトリスは乳房に吸い付く男に視線を向けたまま少女に返事をする

シトリスの本体は少女の姿を捉える

艶やかな赤い長髪、露出度の高い黒い衣服からは白い陶磁器のような肌とシトリスほどではないが成熟した形の良い乳房が顔を覗かせている 

可愛らしい顔立ちなれども漂う色香は大人の女性のものでどこか危険な甘い香りが漂っていた

男は少女からただならぬものを感じるとシトリスの乳房から口を離し、彼女の後ろまでさがる

「大丈夫。私が守ってあげるからね」

シトリスは男を安心させるように声をかける 

「あなたアロメルスね?」

「知ってるんだ」

シトリスは自身の縄張りを守るために幾重にも罠を張り巡らせていた

しかしシトリスと同じ蟲惑魔であれば罠に耐性を持つため意味をなさなくなる

「他の蟲惑魔から餌を横取りする子だって聞いているわ」

蟲惑魔は蟲惑魔を捕食しない

しかし、食に対して貪欲な蟲惑魔は他者から人間を横取りしてでも捕食しようとするものもいる

「違うよ。アタシはそういうことが起きないように守ってるの。『お礼』を貰ってね」

蟲惑魔は社会性があり、中には協力して獲物を獲得したり縄張りを共有する個体もいる

だが必ずしもそれが対等な関係であるとは限らない

「最近集団で餌を横取りする悪い蟲惑魔がいるんだよね。シトリスって結構『保存食』を貯めるタイプでしょ。だから助けてあげようかなって」

「それをやっているのはあなたの取り巻きでしょう?」

アロメルスは行く先々で他の蟲惑魔にみかじめを要求し、従わないものには力ですべてを奪ってきた

「わかってるなら話が早いよ。じゃあアタシに頂戴よ。シトリスのお気に入りをさあ。それが嫌なら適当なの10人ぐらいでもいいから」

アロメルスは舌なめずりをしながら男に視線を向ける

アロメルスに怯える男にシトリスはそっと頭を撫でる

「それはダメよ」

シトリスは男を庇うように立ちアロメルスの前に立ち塞がる

「あの子は誰よりも幸せになって終わらないといけない。あの子幸せが今の私のすべてなのよ」

アロメルスは蟲惑魔な中でも特に残虐な個体で獲物の四肢を齧りとって磔にして捕えた後に10時間にも渡って生きたまま解体した後に捕食する

過剰なまでに苦しめて痛みを与える姿はシトリスの対極と言える

「それに他の子だってあの子を幸せにするために必要なの。だからここにはあなたにあげられるものはなにもないのよ」

「どうせ最後は喰われて死ぬんだから幸せがどうとか関係なくない?頭イカれてんの?死にたくなるような苦痛を与えてから食べるのが一番でしょ」

シトリスとアロメルス、双方の主張に正義はない

あるのは捕食者としての秩序と誇りのぶつかり合いだけだ

「折角こっちが譲歩してあげたのに断るんだ。じゃあ貰ってくよ。シトリスのお気に入りも他の保存食も全部ね。行くよ。セラ、ランカ」

アロメルスの号令に合せて巨大な蟷螂と複数の毛が生えた植物が現れる

セラとランカはアロメルスとの共生関係にあり、アロメルスは生存競争に打ち勝つことで多くの蟲惑魔を従えてきた

そしてアロメルスもまた本体である巨大な蟻としての姿を見せる

「見ちゃダメよ。いまからとてま恐ろしいことになるから」

シトリスは男に目隠しをするとそっと抱きしめる

男は恐怖と緊張から身体が動かなかったがシトリスは安心させようと背中を擦る

「大丈夫。私を信じて」

 「ふぅん、余裕だね。アンタが餌とおままごとしてる間にアタシは蟲惑魔を支配し女王として君臨してきた。負けるはずがない。ていうか保存食たちはアンタに味方しないの?まあ嫌われてそうだし無理か」

「嫌われてることは否定しないけれどそれは私がそう言う含めてるからよ。だって万が一怪我をさせてしまったらあの子はとっても悲しむから。それにそうさせる必要がないもの」

蟲惑魔に蟲惑魔が得意とする罠は通用しない

故にその戦いはシンプルにどちらがより強いかという戦いになる

男はシトリスの勝利を信じて目を瞑り耳を塞ぐ

ここが一番安全だからと自身を包みこんでくれるシトリスの柔らかな感触は彼女を信じるには十分すぎた

「じゃあ、そろそろ始めようか」

アロメルスが自身の巨大な蟻の顎を擦り合わせながら頭を上げて威嚇するとシトリスは受けて立つように構える

「ぐはっ」

「もう目を開けていいわよ」

男は目を開けるとアロメルス等の本体はシトリスによって捕らえられていた

「まさかシトリスがここまで強いとは……」

「だってあの子が好きになってくれそうな女の子を捕まえるのに妥協したくはないもの」

アロメルスは蟲惑魔を支配するために罠に依存しない強さを身に着けた

しかしシトリスが男を甘やかし、幸福に導くために培った知識や技術はそれを凌駕した

「同族のよしみだから殺しはしないわ」

シトリスはセラとランカを解放する

「でもアロメルスに関してはちょっと考える必要があるわね。お礼参りなんてされたら困ってしまうもの」

「いやだな〜冗談だよ。そんな怖い顔しないでよ。」

アロメルスはへらへらと笑いながらシトリスを宥めるように敵意がないことを示す

「あら?」

アロメルスの処遇を考えていたシトリスであったが男の様子が先ほどと違っているのに気付く

「あれ?これって……」

シトリスは男の下半身を凝視する

男の象徴は痛々しいほどに腫れ上がり、どくどくと脈動していた

アロメルスという脅威が無力化されたことで男はシトリスとの行為の途中であることを思い出していたのだ

「ごめんなさいね。私ったらすっかり忘れていたわ」

シトリスは謝罪をしながらも妖艶な笑みを浮かべる

その様子を見てアロメルスはほくそ笑む

「わぁーすご〜い、おっきい。こんな可愛くておちんちんも立派な子とエッチなことできるなんてシトリスが羨ましいなあ」

アロメルスは上目遣いで男を見つめながら感嘆の声をあげる

「ねえ、こっちきて。アナタの素敵なものみせて」

熱を帯びた甘い吐息は男を誘惑する

男は抗えない

既にシトリスによってたとえ自身の末路が捕食であろうと最後のひとときまで甘やかされることが幸福であると心に刻みこまれている

故にシトリスと同等の美貌を持つアロメルスからの誘惑に抗うことはできない

男はふらふらと近づきアロメルスの誘惑を受け入れるように彼女に口づけをする

「ん、ちゅっ、んん……ぷはっ」

激しく舌を絡ませる濃厚なキスは男の欲望を昂らせていく

男は思わずアロメルスの誘惑に答えてしまったがシトリスが受け入れてくれるのか不安になり彼女を見つめる

「いいのよ。アロメルスが気になっているのね?それなら仕方ないわ。あなたの好きなようにしていいのよ」

シトリスは男の優しく微笑みながら答える

「もしアロメルスが変なことをしそうになったら助けてあげるからあなたは気持ちよくなることだけを考えたらいいわ。だから今はアロメルスといっぱい幸せになってね」

アロメルスはこの状況を好機と考えていた

力ではシトリスに敗北したアロメルスであるが蟲惑魔の本質はその美しさをもって人間の心を惹きつけ惑わせることにある

そのため今目の前にいるこの男を骨抜きにして自身こそがシトリス以上に男にとっての愛すべき存在になればいいと画策していた

自身こそが蟲惑魔の頂点であると証明するために 

「許可ももらったことだし可愛がってあげる」

アロメルスの言葉に男はゾクリと背筋に悦びと緊張感が走る

アロメルスは男の耳元で囁く

「ねぇ、シトリスのこと忘れてアタシだけを見て」

今度はアロメルスが強引に男の唇を奪う

アロメルスはまるで自分ものだと言わんばかりに押しつけた唇から舌をちろりと伸ばして男の口内を蹂躙する

「うっ、んんっ」

まるで骨の髄までしゃぶるような舌の動きに男はたちまち骨抜きにされる

「どう?アタシの舌気持ちいい?」

アロメルスは再び男の耳元で甘く囁くと今度は耳を甘噛みする

そのあまりの快楽に男の口からは嬌声が漏れてしまう その様子を見た

アロメルスは満足げな表情で舌舐めずりをすると再び男の唇を奪う

「んんっ、んくっ……ちゅっ……」

口内を犯されることで溢れる唾液が混ざり合い、お互いの口端から流れ落ちていく

流し込まれたアロメルスの唾液は甘露のような味わいがして男は思わず喉を鳴らして飲んでしまう

「んちゅ…はあ、びっくりした?」

甘い唾液を飲み込んでいた男であるが突如舌先が痺れるような感覚がした

だがそれは男にとって決して不快なものではなかった

「ふふ、アタシのは甘いだけじゃないのよ」

アロメルスは妖艶な笑みを浮かべると男の首筋から胸を指先でなぞりあげる

たったそれだけで男の口からは吐息が漏れる

神経毒のように身体中が心地よく痺れてその快感に打ち震えているようだ

「シトリスよりもアタシの方がアナタのことを気持ちよくしてあげられるわ。だからいっぱい愛してあげる。さあアタシに身を委ねて」

アロメルスは男の手を上から掴み手繰り寄せて、確かな質感のある乳房へと導く男の手は柔らかく形を変える乳房に触れると、その弾力から指を離すことができない

「あんっ……ふふ、もっと強くしていいよ」

アロメルスは優しく微笑むと男は彼女の大きな胸を揉みしだく

吸いつくような瑞々しい肌に指が沈んでいき、程よく張り詰めた乳房は掌の中で形を変えて指を受け入れているかのようだ そのまま人差し指で先端を転がすと乳首はすぐに硬さを帯びていく

「んっ、そんなにされると感じちゃう」

男は乳首の先端を優しく撫で回すとアロメルスは鼻にかかったような声を上げる

「おっぱいがほしいの?」

男は乳首を口に含むとちゅうちゅうと吸い始める

「あっ、そこっ……んん、気持ちいいよ」

男はさらに胸を吸い上げながらもう一方の手でもう片方の乳房を揉みしだく

柔らかく張りのある胸は強く握ると指の間から柔肌がはみ出るほどだった 男は一心不乱に乳房の感触を楽しむように執拗に責め立てる

「ふふっそんなに必死になって可愛いね。でもそろそろこっちも触ってほしいでしょ?」

アロメルスはそう言うと男の肉棒を指でなぞる

「これがおちんちん?生きてる状態で触るのははじめてよ」

アロメルスの言葉は嘘ではないが決して無知なわけではない

蟲惑魔はいつだって人間の心につけ入るために多くを知り、学習している

ある意味で蟲惑魔は人間に最も寄り添える生物と言えるのかもしれない

「ビクビクしてる。アタシに触られて喜んでるのかな?」

アロメルスは男の肉棒を優しく握ると上下に擦り始める

決して激しくすることなく丁寧にゆっくりと扱きあげていく

その焦らすような刺激に男は思わず情けない声をあげてしまうがアロメルスはそれを愉しむように微笑む

「はじめてということは伸びしろがあるってことだよ」

先端を優しくなぞったかと思えば根本をぎゅっと掴んで激しい愛撫になる

焦らしたか思えば一気に弱点を責めたして男を手玉に取っていく

「ねえ、出したい?」

アロメルスは男の耳元で甘く囁くと男は無我夢中で首を縦に振る

「じゃあアタシにおねだりしてみて」

男は既にその快楽の虜となっており思考はアロメルスのことのみで頭がいっぱいであった

恥も外聞もなくへこへこと腰を動かして

「じゃあ裏切りのお漏らししてみようか。シトリスよりもアロメルスのほうが好きですって可愛くお願いしてくれたら

いいよ」

アロメルスはそういうと肉棒を強く握る

「ほら、早く言わないとシトリスのところに帰っちゃうかもよ?」

アロメルスが手を離すと男は切なげな声をあげる

そしてついに耐えきれなくなったのか懇願するように口を開いた

「もしかしてシトリスが怖くなっちゃった?だったらおっぱい甘えてよ。そうすればシトリスの顔見ずにいられるから」

男はその言葉に誘われるようにアロメルスの胸に顔を埋める

「よしよし。それじゃあシトリスよりもアタシを好きって言ってくれたご褒美に気持ちよくしてあげる」

アロメルスは射精を促すように激しく肉棒を扱く

先走りが溢れる鈴口からは液がダラダラと垂れ落ち床を濡らしていく

男は限界に達していた

「もうイッちゃいそうなんでしょ?いいよ。たくさん出してアタシに見せて?」

アロメルスがラストスパートをかけるように一気に手を動かすと男は身体を大きく跳ねさせ精を放った

「あぁ〜すごい!いっぱ〜い」

アロメルスは手についた白濁液を美味しそうに舐め取る

「やっぱりアタシを選んで正解でしょ?ねえ、アタシのココに入れて?」

アロメルスは自身の秘部を指で広げると

男が挿入できるように腰を落とした 

「アタシのおまんこ今作ったの。だからシトリスのと違って新品。ねぇ挿れたいよね?挿れたいよね?」

アロメルスは挑発的な笑みを浮かべながら自身の膣内を見せつける 

「じゃあもう一回さっきの言ってよ。シトリスよりアタシが好きって」

男の背後からシトリスの視線を感じる

シトリスはなにも言わずいつも通りにこにこと笑っていた

これまで男はシトリスから与えられた多くの女性と交わってきた

しかし、シトリスの支配下にある性玩具と違いアロメルスは彼女に取って代わろうとするかのような言動を見せているため男の中で罪悪感が湧いてくる

かと言ってアロメルスの誘惑を跳ね除けるほどの自制心は男には残っておらず困ったようにおろおろとすることしかできなかった

「ごめんね。ちょっと意地悪だった?じゃあアタシが言わせてあげる。アタシが挿れてあげる。君は単にこわ〜い蟲惑魔に襲われた被害者。これでいいでしょ?」

あまりに男に都合のいい甘味な堕落の言葉

男は心の中で白旗を揚げた

蟲惑魔には決して勝てないと

男は言われるままに寝そべる

「じゃあ行くよ?『君はアタシが好き』」

男はアロメルスの言葉を復唱すると

アロメルスは上から跨り、ゆっくりと腰を落としていく 男の肉棒は彼女の膣を掻き分けるように入っていく

「あはっ……全部入っちゃった。ほら見てよ、こんなに奥まで届いてる」

アロメルスは下腹部を愛おしそうに撫でるとゆっくりと腰を動かし始める

「まだまだ行くよ。『シトリスよりアタシが好き』」

男が復唱すれば与えられる刺激は強くなる

「『どんなお気に入りのおもちゃよりもアタシが好き』」

生殖を目的とせず快楽を与えることだけを目的にしたアロメルスの秘部は人間ではなしえないようなしめつけで蠢く

「『君は一生アタシのもの』」

アロメルスはこの短期間で男の弱点を知り尽くしており、裏切りの誓いを復唱するごとに弱点を突くような激しい動きで責め立てる

男はもはや快楽に抗えることなく、ただ一方的に与えられるものを享受するしかなかった

「よく言えました。いいこ、いいこ。いいよ。好きなだけ気持ちよくなっても」アロメルスは男を褒めるように頭を撫でると一層腰の動きを早めていく

人外の悦楽を与えるアロメルスの膣内は男のすべてを貪り尽くすように激しく蠢く

「ほら、気持ちいいでしょ?いいよ。出して」

その言葉とともにアロメルスの膣内はきゅうっと収縮し男の射精を促す

男はもはや限界でありその本能に逆らうことなく精を放った

「んっ……あはっ、いっぱい出てる。気持ちよかった?」

男はうんうんと頷きアロメルスに身体を預ける

「ありがとう。アタシも楽しかったよ」

男はしばらくアロメルスの膝の上で休息をとった後にアロメルスは男に尋ねる

「ねえ、シトリスのところじゃなくてアタシと一緒にならない?シトリスみたいな保存食はないけど、アタシだけじゃなくて他の蟲惑魔もいっぱい甘やかしてくれるよ?」

アロメルスは甘い言葉で男を誘う

アロメルスは単にみかじめや糧としての感情以上のものを男に抱いてた

だからこそ心の底から見たいと思っていた

シトリスに勝利した栄光に浸りながら自身が至上とする残酷で苦痛に満ちた最期を男に与えることを

しかし男は申し訳なさそうに首を振るとシトリスの元へと戻ってしまった

「なっ!?」

アロメルスは驚愕する

「どうして?またアタシとエッチできるだよ。それに他の蟲惑魔だって気になるでしょ?」

男は首を横に振った

「アロメルス、あなたのやり方は間違っていないわ。でもそれだけじゃ全てを満たせないの」

「アタシとアンタのなにが違うって言うのよ!」

アロメルスは怒りに震える

「あの子はあなたと過ごした時間はとっても幸せだったと思うわ。あなたについて行ってもいいと思うほどに。でもね……」

シトリスは男を優しく撫でるとアロメルスに向き合う

「あの子にはここでの大切な思い出があって。好きな子だっている。それが差なのだと思うわ」

「じゃあ最初に出会ったのがアタシだったら勝ってたと……」

「そうなるのかしらね」

シトリスは困ったように笑う

「まあいいわ。アタシが敗けたんだから煮るなり焼くなり好きにして」

「アロメルスは気づいたはずよ。奪うだけじゃなくて与える幸福を」

「………」

アロメルスはセラとランカと同様に本体共々解放された

それからしばらくの時が流れアロメルスはシトリスの縄張りに立ち入ることはなくなった

「今日はあなたの最期よ。アタシとゆっくり楽しもうね」

アロメルスは慈しみの孕んだ表情で男を抱きしめる

男はそんなアロメルスに微笑み返す

だが次の瞬間に男は瞬きする暇もなく意識を失う

「目が覚めた?」

男の目の前にいたのは巨大な蟻であった

男の表情は絶望に染まる

アロメルスの本体が恐ろしいのではない

自身の四肢が食いちぎられて磔にされているからだ

「大丈夫。気絶しないように痛み止めはしてあげたから」

アロメルスは男に妖しく微笑む

アロメルスはシトリスとの出会いで2つの喜びを得た

1つは深い愛情を注いで信頼を得ること

もう1つは最愛の存在が苦しむ姿を見ながら全てを齧り尽くすこと

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