アルミアリヤ・ロベスピエール
アルミアリヤ・ロベスピエール
劇団パラノイア第20代団長を務めた男性。人間種。享年32歳。
「革命」に取り憑かれた天才劇作家。彼の手がけた作品はそのほとんどが時の権力への「革命」、あるいは神やそれに準ずる大いなるものへの「反逆」を題材としている。
弱きを助け強きを挫くその作風から「民衆」に寄り添う人情家と知られた彼の本性は、冷徹かつ身勝手な煽動家。彼は密かに劇のセリフや演出に巧妙な細工(心理学、あるいは呪術を基にしたもの)を施し、聴衆を革命思想に「洗脳」し、大規模な革命運動を引き起こすことを企てていた。
複数の連作に渡り細工を施した演劇を用いたその計画は、それを見抜いた当時の副団長──次代の団長となる人物──により半ばで阻止されることとなる。騒動の末、アルミアリヤは死亡。その最期は、表向きは「不慮の事故」と発表された。
以後彼の作品は、細工に該当する箇所を削除・改変することにより問題なく上演されている。
現代における彼の評価は「非業の死を遂げた、”革命的”劇作家」。これは、当時の劇団にて彼の所業を内々に処理した結果として、その名誉は名誉のまま公表しておくことが決定されたため。
彼らはアルミアリヤの真実が決して明るみに出ることが無いようにと、ただ虚飾にだけスポットライトを当てることにしたのだ。
代表作は『愛を胸に剣を天に』、『眠れる者たちよ、剣を取れ』、『冷たき刃のパレード』、『神無き世界』、『”簒奪者オーレウス”シリーズ』 など。
『”何故革命を起こしたか”?見てみたかったからさ。この眼で、”本物の革命”が成就する様を』
『そうさ。そこに大義も、切望もない。純粋な興味本位だとも』
『”何故劇団を巻き込んだか”?知れたこと。私には劇作の才能があり、ここはそれを披露する舞台も整っていた』
『そうさ。私にとって演劇など、”劇団パラノイア”など、都合の良い道具に過ぎない』
……自身を追い詰めた劇団員たちに、アルミアリヤはそう語った。
そして彼の悲願は、皮肉にも「”自身に対する革命”の成就」という形で達成されることとなる。
”ギロチン”により落とされたその首は、「狂喜の笑み」に染まっていたという。
アルミアリヤが遺した作品のうち、ひとつだけ「革命」を題材としないものがある。
ただ『空』とだけ題されたそれは、彼が生まれて初めて紡いだ”夢物語”だ。
