アルバーナ・南東門の戦い
「あの2人はあたしらに任せな!!!行くよMr.4!!!」
「うぅ〜〜〜〜〜ん〜〜〜〜〜」
「必殺…"火炎星"!!!」ビュッ!!
ボウッ!!
「Mr.1っ!!!そっちからも2人抜けたわよう!!!それがビビかも!!」
「コイツら………!!!」
「西門へ入るつもりよっ」
「追うぞ」
「あァン!!?ドゥッ!!!」ドカン!!!
B・W社のオフィサーエージェントであるMr.1ペア・Mr.2・Mr.4ペアに下された厳命…アラバスタ王国王女ビビ及びそれを守護する海賊共の抹殺。当初の予定であればアラバスタの首都・アルバーナに迫る反乱軍を食い止めようとするそいつらを始末するだけの単純な任務であったが、アラバスタ最速の超カルガモを駆る同じマントを羽織った6人の出現によりさしずめ「超カルガモクイズ」を強いられることとなり、南・南西・西の3つの門へ別れた連中のうちどちらかにいる王女ビビ抹殺のため3手に別れざるをえなくなる。
「逃がしゃしなァいわよォ〜〜う!!!」
超カルガモに吹き飛ばされ激昂するオカマ、Mr.2は南西門へ向かう。火炎星による目くらましを食らい西門へ2人抜けることを許してしまったMr.1ペアはそれを追い、反乱軍の真正面である南門へ向かった2人にはいち早くそれを嗅ぎつけたMr.4ペアが追いかける。
────南西門内
「うっふっふっふ!!よくここまでついて来てくれたわね!!」
「アンタ冴えてるね!!私がビビ王女よ!!」
「何ィ!?」
────西門内
「あなた達勘がいいわ。そう!私こそがビビ王女♡」
「!何言ってやが…言ってるの?私が真のビビだわよ!!」
「…………」
────南東門前
「ここまで来りゃいいかしら………♡」
「ん!!」
「さァ正体を見せてあげましょ」ばっ
僅かな時間の鬼ごっこを演じ、3手に散った6人が同時にマントを脱ぎ、「超カルガモクイズ」の答え合わせ。さぁどれが本物のビビ王女か………
なんと全員ニセモノ!これには多くの修羅場を潜り抜けてきた彼らオフィサーエージェントも一杯食わされたと憤りを隠せなかった。
「んあァにィ!!?………!!!それにお前達は…あの時のォオ!!!」
「ゴメ〜〜〜〜〜〜〜ン!!!」
「よぉし!やってやるわよこのまねまねオカマ!!」
おかま道を貫くオカマMr.2の前へ躍り出たのは長鼻が特徴的な狙撃手・ウソップと、赤と白のツートンヘアが眩しい歌姫・ウタ。
「さァゾロやっておしまいっ!!!」
「てめェ黙ってろ!!!」
「…………まいったぜ」
あらゆる任務を遂行せんとする仕事人の雰囲気漂うMr.1と腰を常にくねらせる女ミス・ダブルフィンガーの前へ躍り出たのは三刀流の剣士・ゾロと、それを後ろから超カルガモ達と共に応援?する航海士・ナミ。
「…へへ!!反乱はもう起こらねェぞ」
「何をォ!!?」
どこか反応のノロい大柄な男Mr.4と小柄なオバサンミス・メリークリスマスの前へ躍り出たのは海の一流コック・サンジと、フサフサの体毛に覆われたおよそ人間には見えない船医・チョッパー。
王女ビビによる反乱軍を止める決死の作戦の行く末を巡り、運命的に引き合わされた海賊6人とB・W社のオフィサーエージェント5人による戦いが今…幕を開ける。
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「───ウソップ!!おいウソップ!!ウタちゃん!!起きろ!!!」
「おっすサンジ。ああ…ヤツとの勝負の行方か?おびきよせるところまでは作戦成功。そして…」
『10秒で決着はついた』
「あいつ耳栓してた」
「おれは1秒」
「おま…!ちっとはフンバれよっ!!!」
僅か10秒での決着、それもそのはず。当初の作戦ではウタがその能力で歌を歌い相手を眠らせウソップがそれを拘束する…たったのそれだけだったのだが、敵はウタの能力について把握していたようで、耳栓により歌が無効化され動揺したウタが抵抗虚しくB・W社きっての武闘派であるMr.2の攻撃により頭にたんこぶ1つつけられダウンし、その勢いのまま1秒の間にボコボコにされたウソップがダウンすることで南西門の戦いは終わりを見せた。
「でもサンジお前が何でここに?」
「おめェらのカルガモが助けを呼びに来たんだよ!!」
あまりに早い決着に彼らを乗せた超カルガモ達がサンジの元へ救援を呼んでいたようだ。おかげで貴重な2人の戦力を叩き起こすことに成功したサンジであったが、今気がかりなのは彼らが逃がしてしまった件のオカマの方であった。
「とにかく…Mr.2を逃がしたんだな?やべェぞ…ビビちゃんが危ねェ…!!!」
Mr.2の"マネマネの実"の能力は一度触れた相手に姿・声を完璧に擬態出来るもの。過去に一度ひょんなことからビビ・サンジを除く麦わらの一味はMr.2に触れられており、それを利用し仲間の姿に擬態しビビに近づかれてしまえばビビの身が危険に晒されることは必至であった。
「…ッチ!ウソップ、ウタちゃん!2人はチョッパーを助けろ!!」
「チョッパー?」
「南東ゲートへ行け!!」
「う、うん!分かった!!」
「ビビちゃん…持ちこたえろよ…!おれが行くまで…!!」
───────アルバーナ 南東ゲート
「チョッパー……!!おいチョッパーしっかりしろよっ!!!」
「敵は!?Mr.4のペアはどこ!?加勢に来たよ!!!」
サンジによる応援要請を受け南東ゲートにいるチョッパーの元へ駆けつけたウソップとウタ。そこにいたのはまるで爆撃でも受けたかのように煙を纏わせていたチョッパーであった。
「ウソップ…ウタ……良かった無事だったのかァ…!!」
「バカ言ってんじゃねェ!!おめェが大丈夫かよ!!!」
「ねぇチョッパー!ここで何があったの!?あいつらはどこ?」
「まだいるよ………!!!その辺りに……気をつけて…………!!!」
そう言いチョッパーが目線を向けた先の遺跡と思われる造形物がガララ…!と音を立てて崩れていく。何かが潜んでいることは明らかだった。
「何だ……!!?一体……!!!誰もいねェぞ……!?」
「地面の下にいるんだ…!!!ミス・メリークリスマスは"モグモグの実"のモグラ人間。もう一人のMr.4は"4番バッター"で犬と一緒なんだ!!」
「は!!?さっぱり意味がわかんねェぞどういうことだ!!!」
モグラ人間はともかく、犬と一緒の"4番バッター"という要領を得ない説明にウソップは食ってかかるが「バウン!!!」という大きな音がそれをかき消した。
「よけて!!!」
「うお!!?」
「なに!?」
音とともに飛来してきたボールのような"何か"を避ける3人。だがその"何か"の飛ぶ先にはバットを構えた大男が1人。そして…
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「大丈夫か!?ウソップ!ウタ!!」
「……ハァ……ハァ………ああ危ねェ…助かったありがとう」
「全くもう…!今のは一体何なの…!!」
「だから…Mr.4は……!!4番バッターで…犬と一緒なんだよっ!!」
「だからその意味がわかんねェっつってんだっ!!」
相変わらず要領の得ないチョッパーの説明に憤りを露わにするウソップであったが、そんな彼らの前に一匹?の犬?が現れる。
「あ!あいつだよっ!!」
「ん!?」
そこにいたのは犬のような…いやしかし銃のようにも見えるなんとも言えない不思議な存在が鎮座していた。犬?銃?犬銃??珍妙なその姿に3人とも息を呑まれていたその瞬間、風邪気味と思われる犬銃がくしゃみと共に"何か"を放つ。
「イッキシ!!!」ボゥン!!
「何ィ!!」
「来るぞっ!!!」
「またっ……!!!」
「フォーー!!」さっ!!
チッチッチッ…
カッ…
キィン!!
景気よく弾かれた"何か"はウソップ目がけて飛んでいく。
「遠くへ逃げなきゃダメだウソップ!!!」
チッチッ…
ボォン!!
チョッパーの警告虚しく、その場でしゃがむことしか出来なかったウソップの頭上で"何か"は大爆発を起こし派手な爆音と共にウソップを吹き飛ばしてしまう。吹き飛ばされたウソップをウタがなんとか捕まえるが息も絶え絶えだ。
「ウソップ!!大丈夫!?しっかり!!」
「ガへ…!!!ゲホ」
「"時限爆弾"なんだよ!!当たらなくても爆発するんだっ!!あいつらその時間まで計算して打ってくるんだ!!!」
既にいくらか戦闘を交えていたチョッパーが犬と一緒の4番バッター、Mr.4の戦い方について解説する。犬銃から放たれるものは"時限爆弾"式のボールであること。ボールを止めて投げ返そうにも鉄球みたいに重く止めれるようなものではないこと。そしてそんなボールをとんでもないスピードで打ち返すMr.4の腕力が異常であること…
そんなチョッパーの解説をよそに少し疲れたのかMr.4はバットを置き一息つき始める。だが石造りの崩れた壁に置かれたバットはその壁を完全崩壊させながら倒れてしまう。
「……………………!!!はい?一体何tのバットを振り回してんだあいつは………!!!…………怪物か…!!?」
そんな驚愕するウソップを気にも留めずMr.4は「ラぁ〜〜〜〜スぅ〜〜〜〜…」と、犬銃の名前らしきものを呼んでいる。だがその後ろから何やらMr.4と連呼しながら出てくる人?が現れた。
「この"ノロマ野郎"が!!!"ノッ"が!!!」
「えぇ?」
「おめー何サボってやがんだよ!!!」
「よぉ〜〜〜〜〜〜〜〜〜「さっさと殺しちまわねェかよ!!それ殺しな!!やれ殺しな!!」んん〜〜〜〜〜〜〜〜〜「"バッ"!!この"バッ"!!!」だぁ〜〜〜〜〜〜?」
あまりにもマイペースな大男と捲し立てるかのように話す小柄なオバサンの会話はまるで噛み合っていなかった。
「わ!モグラだ!!!」
「出た!!!モグラ人間!!!」
「まだ変身してねーよ!!!"バッ"!!!この"バッ"!!」
「ウタ、チョッパー…後はお前らに任せる…おれの死体は海へ流してくれないか…」
「加勢しに来たって言ったばかりだぞ!!?」
「だいたいな!!!あの犬みてェなのは何だよ!!!あんなわけわかんねェ謎の生命体達と戦えるかァ!!おれァ人間なんだよ!!わかるか!?」
「おれだって人間だ!!!」
「バカおめェは化け物さ」
「お前だって鼻長いじゃんか!!」
「あの!しつもんしつもーん!!その犬みたいな銃って何!?新種の珍獣かなんか!?」
喧嘩するウソップとチョッパー、そしてそれをよそに敵に対して好奇心のままに質問してくるウタに「自由かお前らこの"バッ"!!」と悪態をつくミス・メリークリスマスであったが、ウタの質問に対して丁寧に答えてくれた。
犬銃の名前が「ラッスー」で"イヌイヌの実"モデル「ダックスフント」を食べた銃であり、それが"偉大なる航路"の新技術であることを。そして何よりも自分たちの縄張に入った3人はもう逃げられないということを。
「楽しんでいきな縄張の名は"モグラ塚4番街"!!!」
「モ………!!モグラ人間になっていく…………!!!」
「なにあれ」
「ペンギン?」
「モグラだっつってんだろうがっ!!!"バッ"!!!」
ウタとウソップの言い草にまたも"バッ"!!!が出てしまうミス・メリークリスマスであったが、Mr.4・犬銃ラッスー共々地面の中に潜り込んでいく。辺りを見渡せば穴ぼこだらけ。"モグラ塚4番街"第2ラウンド開幕かと思われた矢先…
「よし、今の内に」
『待てーっ!!!』
ウソップの逃げ足の速さに思わずツッコミが被ってしまうウタとチョッパー。そしてそんな2人をよそに数ある穴ぼこの中からラッスーがひょこっと顔を出しウソップ目がけ「BOW!!」と豪速球のボールを吐き出す。あわや直撃かと思われたボールであったがウソップの目の前で急激なカーブを見せ、その先に現れたMr.4がそのカーブボールを打ち返す。
キィン!!
「わ!!!」
「上だよ!!ウソップ!!!」
「え!?………」
「フライだ!!!」
「何だ何だ!!4番バッターもやっぱ、打率10割とはいかねェか……ハハッ!こんなもん目ェつぶっても避けられるぜ!!」
ギュルルル…
「ん…?何この音?」
ギュルルル!
「まさか…スピン!!?ウソップ後ろ見て!!!」
「ただの4番じゃMr.4は名乗れねェやね」
Mr.4がフライに打ち取られたかに思われた打球は落下直後、急激な回転を見せウソップの背中へ猛追するもチョッパーが間一髪のところで救出する。だが"モグラ塚4番街"はこの程度では終わらない。「BOW!!BOW!!BOW!!!」と銃兼ピッチャーのラッスーにより更なる投球がなされる。
「わわ!!次が来たよ!!!」
「ウソップ、ウタ!!直撃して動きを止めたら終わりだと思った方がいいよ!!」
「なるほど止まったら何十発も追加されちまうわけか!!くっ…」
止まないボールの嵐。だがこれを打つバッターさえいなくなればただ早いだけの鉄球になると、チョッパーは4番バッターMr.4へ向かっていく。
「お前さえ吹き飛ばせれば…!!!〈がしっ!!!〉え!?」
「待ちな!!バッターがいなきゃゲームが盛り上がらねーじゃねェか」
「フォー」
カキン!!
「うわああああああ」
『チョッパーーーー!!!』
ボゥン!!
「ああこの手があった」シュルル
ミス・メリークリスマスに足を掴まれ万事休すかと思われたチョッパーであったが咄嗟に機転を利かせ、馴染み深いチビ姿に変形することで難を逃れる。
「こんにゃろモグラ!!!」
「おっと!!!」
「こんにゃろう!!!ダルマ!!!」
「フォ」
即座に反撃に転じるもすぐに穴に逃げられてしまい思うように攻撃が届かない。このままでは伝家の宝刀"ランブルボール"を使ってもすぐ時間切れになってしまう。そんな思考を巡らせるチョッパーであったがMr.4ペアの出現によりそれは遮られる。
「フォーー」
「ぬんっ!!?あいつら一体どこへ消えたんだ!!?あの長っ鼻にツートンヘアはァ!!!」
長っ鼻とツートンヘア。それはまず間違いなくウソップとウタのことを指しているのだが、確かに2人の姿が見えない。一体どこへ……?"モグラ塚4番街"の住人全員をそんな思考へ誘ったその瞬間、チョッパーにとって聞き覚えのある声が2つ響く。
「言っとくがなこの地下トンネル!!」
「移動できるのは何もアンタ達だけじゃないのよ!!?"重々しい"(グラーヴェ)…」
「───コイツら!!!穴の中いたのか!!!」
「ウソップ…」
「フォ」
「オ〜〜!!!」
「"受難曲"(パッション)!!!」ガキン!!
「"粉砕"(パウンド)!!!!」ゴッ!!!
「グギギ…!!Mr.4!!!!ご!!5tのハンマー!!!あのガキのどこにそんな力が…!!?」
ウタの渾身の振り下ろしはミス・メリークリスマスのモグラの爪によりすんでのところで防がれてしまったが、反応のノロいMr.4の頭にはウソップの5tと書かれた巨大ハンマーが直撃する。
「───沈めた戦艦は数知れず…人は…おれをこう呼ぶよ "破壊の王"」
「て…………て…てめェは一体……!!!?」
「5t…」
「おれの名は────」
「スゲェ!!!!」
「……まーたやってる…」