アルジュリ前編

アルジュリ前編


ゲヘナ学園


かつては、放校処分となり戻るということは難しかったが、既に、マコト、ヒナをはじめ、ゲヘナの多くの団体は彼女の支配を受けていた。

故に、彼女は気兼ねなく今は学校に出入りすることができるようになっていた。


とはいえ、今回の用事は既に終わっていた。


ホシノが別れ際に自分の力を確認してもらったほうがいい。と、伝えていたのだ。


そして、アルにとって、実力を測るという相手で頼れる相手として浮かんだのはヒナであった。


当初こそ、肉体面での成長に驚いていたものの、そもそも、自分のすべてをアルに捧げていたヒナにとって断るという選択肢はなかった。


その全ての中に、彼女のキヴォトス最上位といっていいほどの力も含まれているのはごく、当然のことであった。


行われた模擬戦

その内容は、素手のみという、おおよそ、キヴォトスではめったに見られないものであった


「……今銃撃つの、ちょっと怖いのよ」


そんな、限定状況であったが、ヒナも別段徒手空拳が苦手というわけではないので同意した


だからこそ、彼女は驚愕した


手は抜いていない

いくら主人が相手であっても、それまでの実力を、ヒナはかなり正確に認識していた


「えっと、痛くはない、わよね?」


だから、リーチの差程度で、自分が何もできないで終わったことに、驚愕を隠せなかった


そんな風に、敗北した後また鍛えなおさなきゃといっていたヒナをよそに、アルは、懐かしの校舎をめぐっていた。


思えば数か月は来ていない。

その内に、いくらか小さく感じるのは。……彼女が大きくなっているからだろう。


「あ、もう、お昼……。ゲヘナの子たちは教室だろうけれど、先に給食部に行ってみようかしら」


そういって、彼女は、成長の影響かやけに空くおなかを抱えながら、軽い足取りで給食部へと向かい……。

その入り口でどん、っと、誰かを弾き飛ばしてしまった。


「あら、ごめんなさい。……大丈夫?」


「は、はい。ごめんなさい。あ、あの。お怪我、とか、は……」


だから、そう。彼女にとっては、それは、この学園にとって初めての経験であったのだ。


牛牧ジュリ

一年生にして、ゲヘナにおいてはトップクラスの長身を誇る彼女が。

同じ学園の生徒を見上げる、という経験は

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