アルカヨ
「~~~~♪」
社長が鼻歌を歌いながら仕事をしている
三日ぶりの中だしはよほど気持ちよかったのだろう
アルの射精については、記憶している
ここ数日はムツキの負担を考慮して、抑えていたらしいけれど
昨日、ついにハルカに手を出してしまった
本人は隠してるつもりかもしれないけれど、同じオフィスの同じ部屋。
仕切りだって碌な壁じゃないんだから、二人のまじりあう声は、私とムツキ、二人の耳に十分届いた。
いや、その前で言えば、ムツキの時もだ。
私は、三人がエッチしている間、ずっと……。
いい加減、言わないといけない。
そう、これは、便利屋内の風紀の問題だ、しっかりと注意して……辞めさせないと。
そう思いながら、私は、アルの方に詰め寄る。
「?どうしたの?カヨコ」
そんな、私の考えなど知らないアルは見上げてくる。
私は、机をバン、と叩いて、抗議の言葉を言い放つ。
せめて、するならホテルか別の廃墟を使うように……。
「私はいつになったら抱くの!!」
……いや、……。
いやいや。私は何を口走っているの。
確かに、溜まっていなかったって言えばウソだ。
アルのふたなりの臭いは私たちの頭の中まで響くくらいアレだし、隣に誰かがいるからそういうこともできなかったけれど。
「うわー、カヨコちゃんもだいたーん♡」
「か、カヨコ室長も、ムラムラしていたんでしょうか」
「……うるさい」
あぁ、もう、顔が熱くなる。
こんなことを言うつもりじゃなかったからみんなもいる前だし。
「……ごめんなさい。カヨコ。私も、あなたの気持ちに気が付けなかったわ」
あ、やばい。
アルは、もう、立ち上がって、机をよけて、私の前にいる。
ヒールも混みで、私よりも目線一つ分上の背丈のアルは、私の頬に手を添えて上を見上げさせている。
体が、固まって動かない。
お腹の下の方がきゅんっとして、下着が濡れている。
アルの唇が、私の唇に重なる。
「~~~~~~」
たったそれだけ。
二人にしたことに比べたら、まだ入り口にもたっていないような。微かな、触れるような、壊れ物でも扱うような優しいキス。
たった、それだけの接触に、私は、腰を抜かしてしまった。
体は理解している。人間としてのモノではない。ただ、それは、動物としてのものだ。
嬉しいと。ただの口づけで、目の前のアルを自分の番だと認識した。
離すなと。自分の体が、アルのすべてを受け入れようとしているのだ。
「……ねぇ。カヨコ?」
「っ、な、なにっ」
そんな受け入れ態勢を整えようとしている体を、理性(わたし)は必死になって、取り繕おうとする。
ムツキは、面白いものを見るように、にやにやしている。早く、一緒になろうよ。というような笑みだ。
ハルカさえも、ほほえましいものを見るように、私を見ている。あれは、怯えているかわいらしい後輩を見ている。そんな目だ。
そんなだから、私は、顔も上げられない。
今の、自分の顔を見たら、きっと、彼女に笑われる。
けれど、そんな私の気持ちなど、気にも留めずに、アルは私の顔を上向きにして、私の表情を覗き込む。
「ふふ、かわいい顔」
「ーーーーーーーぁ、ぁあ~~~~~~~もう!!!」
見られた。見られた。見られた。
間抜けなくらいに、頬の緩んでしまった、私の顔。
恥ずかしすぎて、アルの胸元を、何度もたたく。
力は全く入ってない。照れ隠しだ。
「ムツキ、ハルカ。ちょっと出かけてくるわ」
「はーい♡後で感想きかせてねー?」
「いってらっしゃいませ、アル様」
そんなことをしているうちに、私は、アルに軽々と抱え上げられる。
……こんなに力、強かったかな。
あぁ、でも、これだけで、安心してしまう。
「ほら、行きましょう?二人に聞かれるの、恥ずかしいんでしょ?」
そういって、アルは私を抱えたまま、外へと飛び出した。
そんなアルの振る舞いに、私は、もう、何にも言えなくなっていた。