アメリア 2-1

アメリア 2-1



「あ、待って、ミコトくん!」


アメリアさんに呼び止められ振り返る。


正直なところ、早くこの場から立ち去らなければならない理由がある。

いくら気を失っているとはいえ、先程の戦闘から1ブロックしか離れていない。

今、もし仮にあの執念深いサキュバスが目を覚ましたのなら……。


そんな理屈を伝えようとした唇を指で止められる。


「頬。」

「頬?」


気を取られた一瞬で、アメリアさんは一歩踏み込んで。

顎に指を添えて頬に口づけをした。

口づけを。キスを。何度も何度も。


「ちゅぅ♡ んっ♡ ……んんっ♡」

「あのっ」


アメリアさんなりの勝利祝いということなんだろうか。

昨晩の唇へのキスの感触を思い出してしまい、どうしても落ち着かない。

いっそ。いっそ振り向いて自分から……。



「ミコトくん」

「はいっ!」


邪な考えを見抜かれたかと。

一瞬緊張が走るが、どうもそういうことではないようだ。

彼女はなんというか、几帳面に(言い方は悪いがちょっと偏執的に?)頬に細かくキスをしながら。


「あの魔物、強かったね。ちゅっ♡

 近づかせすぎ。んっ♡ きっと、吐息がかかっていたのね。んんっ♡

 ……こんなとこまで。あの子の匂いがする。ふーっ♡

 もしかして、本当はああいう子が好きなタイプ、なの?」



勝利の祝福という訳では無かったようです。

実はさっきの戦闘よりもずっとずっと危険地帯なのでは。


「ち、違います! ふぁっ?! や、僕は!!」

「うんうん、そう。知ってる。

『あかるくて、静けさも似合って。

 あたたかくて、でもとてもさわやかで。

 輝いているヒト』が好きなんだよね?

 もちろん覚えてますとも。ちゅっ♡

 とっても優しいミコトくん、今日もありがとう。ちゅっ♡」

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