アメリア-夜1-5
家族との絆の証。
「少女のようだ」と見た目で注目されることは幾度もあった。
でも、理由まで訊かれること、語れることはなかなかない。
ましてや、その理由をこそ褒めてもらえるなんて。
つい嬉しくなって。
右手を彼女の肌から離して、金髪をやさしく手繰り寄せる。
「ミコトくん、何してるの?」
「思ったんです。
髪が長いことはボクとアメリアさんの共通点じゃないですか。」
自身の黒の長髪を一房親指で掬い、手のひらで黄金色の一房とを絡ませる。
もしかすると、この共通点が、ふたりの縁、仲良しのきっかけになったんじゃないか。
そんな考えが浮かんだので、ちょっと場を和まそうと。
「アメリアさんとボクの縁結び…ですね……なんて」
…………
……
ボクがやるには、ちょっと気取り過ぎだったようです。
「ミコトくん」
何か、重大な気配がして。
瞑ってられず薄目を開くと。
周囲にふりまく慈愛の微笑みとも
今日何度も目にしたいたずらっぽい少女のような朗らかな笑みとも異なる
妖艶、そんな言葉がぴったりきそうな魔性の笑み。
覆いかぶさった形の顔には光が当たらないはずなのに。
瞳の奥に炎が揺れて。
「ァ───んっ?!」
名前を呼び返そうとする一瞬も待たず、
アメリアさんの唇が、その声を奪った。
「んんっ……んっ♡ ふっ……ちゅ♡ ちゅむ♡」
触れた唇が信じられないくらい熱い。
唇のかたち、張りを感じたのは一瞬だけ。スタンプするような深い口付け。
圧を込め、角度を変えて、隙間を埋めるべく蠢動する。
熱を移そうと縦横無尽に蹂躙する。
「む♡ ちゅっ♡」
「ぅ……ぁ………、………、
………………………ぁ! んむっ?!」
「はむ♡ れろっ♡ れろっ♡」
逃して貰えない! 動くことを許してくれない!
抱きしめる細腕からは信じられない力で抱きすくめられる。
熱で癒着したのかアメリアさんの唇は離れず。
這うようにこちらの唇の輪郭をなぞる。
息継ぎをしようと開いた瞬間、上唇を挟み込み、舌で舐める。
キスは、キスって。
唇を合わせる、そんな知識とまったく一致しない。
「ちゅぷ♡ ちゅぷ♡ ぷちゅ♡ はぁ…はぁ……んっ♡」
「──、───」
いつからか、キスに水気が混じってる。
湿気を帯びた唇でのキスは、より淫卑な音を響かせて。
さらに別種の悦楽を与えてくる。
キスを重ねる度に、アメリアさんの肢体がより密着して。身体を擦って。
こみ上げてくるもの。耐えられないものが、なにか──!
「……」
「ぷはっ! ご、ごめんなさい。ミコトくん、大丈夫……?」
アメリアさんが唇を離す。
ギリギリで、本当にギリギリでしたよ。
「あはは、ミコトくんがあんまりにも可愛いこと言うから。」
「いえ、その、不甲斐なくてすみません……」
「そんなことない。そんなことないですよ。
勇気出して、頑張ってくれてるもの♡」
両手で頬を挟まれて。
つっ、と。今度は触れるようなキス。
それがトドメ。
「さぁミコトくん……あれ、ミコトくん?」
「す、すみません! すみません!
お風呂入ってませんでした!
出直してきます!!!」
呆気に取られるアメリアさんを丁寧に、丁寧に離して脱兎。
今日は、もう彼女に合わせる顔がありません!