アビドス編後編
「……、ということで、私がもってきた商談は以上よ。大丈夫かしら」
「……うん♡」
アルの竿についた汚れをなめとりながら、私は頷く。
彼女の持ってきた商談。
それは、彼女が借金を肩代わりするというものだった。
勿論、ただではない
……アビドスは、実質的な彼女の、彼女のハーレムのための避難所になる
改めて聞いたハーレムの規模は、凄まじいもので、ゲヘナ、トリニティの支配者。というのも頷ける。
けれど、その規模。
それこそが問題になっていた。
当然、その子たちにも生活はあるわけだし、何より元の学区という縛りもある。
勿論、アルちゃんのハーレム内でも私有地を持っている子は珍しくない。
特にトリニティの子たちなどは、一万円の茶葉を安物というだけあって。
しかし、自由にできる範囲は少ないし、まばらだ。
だからこそ、彼女は、ある程度の面積があるこの学区に手を伸ばした。
ということらしい。
「アビドスは廃校になってないから学籍を貧乏だからなくしたって子たちもいるし、そういう子たちには、学生として働いてもらいながらアビドスにお金を……」
その上、その生徒たちの目的はアルだ。
アビドスそのものではない。つまり、アビドスの状況がこれ以上に悪化をたどっていったとしても彼女に会えるというその一点だけで彼女たちは、ここに留まる。
それに、学生が増えれば、整備もできるし、誘致もできる。
「ある程度のめどはついてるわ。後は、貴方のサインだけ」
トロトロに蕩けた頭で、文面をすべてチェックしていく。
大人たちのずるい契約みたいな穴は、ない。
いや、あったとしても、もう、私には、サイン以外の選択肢はないのだ。
皆が、アルからの愛情をたっぷり注いでもらって、抑えきれなかったものをその太ももに垂らしながら。
「うわぁ……本当に人が来てる」
あれから数日。
アルが提供したお金によって借金から解放された私たちの学区には、大勢の人が入ってきた。
ミレニアム、ゲヘナ、トリニティ。
中には、自分でも知っているような学区外の有名人も混じっていて。
手渡された受理された入学届は、数十にも及ぶ。
「学籍がないって本当に大変だもんね」
いろいろあって流れ着いた子たちも大勢いるだろうけれど、ここでは悪さはしようがない。
だって、ここに来た目的はおそらくたった一つなのだから。
アルに愛されたい。きっと、ここの大勢がその気持ちなのだろう。
「……本当によかったの?ホシノ先輩」
そんな私に、シロコちゃんは尋ねる。
「……うん、ノノミちゃんの時は断ったけれどね……。だって、もう私たちは私たちのモノじゃないんだから」
「ん、それでいいなら、いい。そろそろ時間。新しいアビドスの挨拶をしないと」
「うん、じゃあ、行こっか」
頷いた私は、一日で綺麗にした体育館へと足を運ぶ。
アビドス高等学校……
これから、私の陸八魔のハーレムの地として栄えていくはずの都市の主人の一人としての生活が始まる