アナタト
「リバティちゃん!!このチョコレート美味しいですね!!」
「市販のものですけど、気に入ってくれたなら良かったです。吟味した甲斐がありました」
「口に残る、優しい甘さが嬉しいですね!まるでアースを思うリバティちゃんの様で…」
「そうですね、そう言う意味合いがないわけではありません」
「……はい?」
「…自分で言って呆気に取られないでくださいよ」
「…そこは調子に乗らないでくださいっていつもの文句とか、リバティちゃん不機嫌キックが飛んでくるものだと…」
「よっぽど機嫌が悪くないと蹴り飛ばしませんよ…後いつもの文句って言うなら、普段の言動を見直してください」
「……蹴り飛ばしはするんですか」
「機嫌が悪ければ、ですね。少し脱線してしまいましたけど、一応特別な意味合いの贈り物だと言うことは伝えておきます」
「え?え?まさかのヤンキーローズお母さんに謝る様な展開ですか?」
「なりません」
「ンアーッ!リバティちゃんが意味を察せるようになってしまいました!お母さーん!アースのじゃなくて!」
「騒がしい人ですね…まあ、率直に言えば…お詫びの品ですね」
「はい?お詫び?」
「…これから私が貴女にプレゼント出来るのは、苦い敗北の味だけなので」
「……ああ、そう言う。…気にしなくても良いのに」
「貴女さえ居なければ、って何度も思わせますよ。私を選んでくれた人たちの為にも…私自身の為にも、もう負けたくないんです」
「…優しいですね、リバティちゃんは」
「次のレース…一部ではドゥラメンテ一族でわざわざ争う必要がない、悲しい、なんて言われますけど。どんな道を選んでも…結局誰かが喜んで、誰かが泣くんです。むしろ…泣くことの方がずっと多い」
「昨日まで一緒に走っていた人が、急に側から居なくなる世界でもありますからね」
「…そのことを身をもって知ってる先輩に言うのも、今更な気はしますけど」
「こればかりは、どうにもなりませんからね。まあどんな事情にせよ、遅かれ早かれアースとリバティちゃんは潰し合っていたと思いますよ。…リバティちゃん…また背が伸びましたよね」
「……こうして成長しなかったら、お母さんみたいな路線も考えなくもなかったですけどね」
「……リバティちゃんの相手はアースが…皆がしてあげますよ。そして同じ言葉を…貴女に返します。私たちはどこにいたって変わらない…ライバルです。私が貴女を嫌う時が来るとしたら…それは、そう言ってくれなくなった時だと思います」
「その心配は要りません。先輩も皆さんも、手加減出来る程甘い相手じゃないって、よく知ってますから」
「…リバティちゃんは、一人になんてなりませんよ。アースが居ますから。……アースが居なくなっても、リバティちゃんを尊敬して、挑んでくる子はきっと出てきます。だから、大丈夫です」
「……はい。これからも…宜しくお願いします、…"お姉ちゃん"」
「…散々ライバルだなんだって言っておいて、ここでそう来られると何だかむず痒いですねえ…」
「……ふふっ」
「んあ…可愛いですねえ、私の"妹"は」
出来ることなら、"貴女"とずっと一緒に走りたい。
"貴女"の優しさに甘えて、そう願ってしまうのです。