アザレアの花も枯れ堕ちて
「父上、ついに敵方の閃刀姫を捕獲することに成功しましたね」
「当然の結果よ。我が国が誇る最先端技術の粋を集めた閃刀姫を二体も投入したのだからな」
列強国某所にある基地施設内の一角、とある高官の執務室に二人の男の姿があった。
彼らこそロゼの廃棄処分を保留とし、現在別邸の一つに幽閉し続けている親子である。
実際にロゼの廃棄処分に待ったをかけたのは父親の方だが、息子共々軍服の上からでも分かるほど屈強な身体つきをしていて、決して現在の地位に溺れているわけではないことを窺わせた。
「これで閃刀姫を用いてまで排除すべき障害はなくなった……そういう認識でいいのでしょうか?」
「あくまで閃刀姫という過ぎたる個人の武に対抗するため、我が国にも同等の存在が必要だっただけに過ぎない。それが消えた現在となっては、その存在は最早我らが寝首を掻かれるリスクにしかならぬ」
高官は目の前に並べてある閃刀姫たちの写真に目を下ろす。
敵方の閃刀姫、レイ。列強国の閃刀姫、ロゼ。そして彼女のクローン、アザレアとカメリアである。
「無論この見立てに反対する意見も少なくないが、歴史を紐解けば一目瞭然よ。いかなる劣勢をも覆す一騎当千の猛者は現れ得る。
それを英雄と民衆は呼ぶのだ」
「父上、それではまるで我が国が悪であるかのように聞こえますが」
高官は息子の指摘を聞いて愉快そうに声をあげて笑う。
「少しは立派になったかと思ったが、貴様もまだまだ青いな」
「……申し訳ありません、父上」
青年は父親の指摘で不用意な発言していたことに気づき、慌てて頭を下げた。
「よい。肝要なのは我が説明が理解され、閃刀姫たちの処分を信任してもらえた点よ」
「で、では……っ!」
彼が言いかけたそのとき、部屋の扉が規則的に数度ノックされた。
青年は驚きのあまりビクッと身体を震わせたが、高官は来訪者が現れるのを分かっていたようで入室するように促した。
そして、入って来たのは軍服を着たポニーテールの少女――閃刀姫の一人、アザレアである。
「ボクに次の秘密作戦の話があると聞いて来たんだけど?」
「貴様、何という口の利き方を――っ!」
「よい。それよりも我が息子よ、お前はそろそろ次の軍議が控えておろう。ここは父に任せて行くがいい」
高官は息子を宥めるが、彼は納得がいっていないようだった。
「で、ですが……父上っ」
「案ずるな、母もお前の帰りを楽しみに待ち侘びておろうよ」
青年はハッとした表情を浮かべ、失礼しますと父親に頭を下げて足早に退室した。
「ふぅん、彼……母親がいるんだ?」
「つい最近出来たのだ。そして、お前もその一員になるのだ――アザレアよ」
列強国は戦争において有利な地位にい続けていたが、いくら優位であっても戦闘が長引けば肉親を失う軍人の数は必然的に増す。
クローンであるアザレアはそれを皮肉ったつもりだったのだが、あまりにも予想外の返答が飛んできて閉口してしまう。
「聞こえなかったか、アザレア。我らがママ、ロゼのクローンよ。
お前もママになり、兵士たちを慰撫する務めにつくのだ」
正直何を言っているのか分からなかったが、アザレアは身に危険が迫っていることだけは確かだと直感する。
目の前の高官を切り伏せるべくエンゲージを図ろうとして――、彼女の身に激痛が走った。
「グアアアアアアアアアアアッッッ!!!!!」
アザレアは敵前であるにも関わらず大きな悲鳴をあげ、のたうち回る。
激痛に悶えながら涙を流す彼女を見て、高官は楽しそうにニヤニヤと笑みを浮かべた。
「愚か者が。貴様らクローンを生み出す際に、反乱のための対策を施さないほど我らが無能だと思ったか?
間違いに対して罰を与える、規律を仕込むうえで一番簡単な方法はこれよ。
アザレア、貴様が言うことを聞かない限りはその痛みはずっと続くぞ?」
一瞬でも痛みから早く逃れることしか考えられず、アザレアは必死に首を縦に振った。
間もなく走り回るような激痛は次第に収まり、彼女は息を整えようと必死に呼吸を繰り返す。
「貴様の身体には設計段階から兵士たちを慰撫するための調整も密かに施されており、そのための知識も仕込み済みよ。
もしあまりにも反抗的なようだったら、次は自由意志さえも排除されるかもしれぬな?」
アザレアは射貫くような鋭い視線で高官を睨みつけるが、彼が言わんとすることが理解できてしまった。
圧倒的な強さ故に見逃されていたが、クローンであるアザレアやカメリアの命はあまりにも軽い。
オリジナルであるロゼとは比べるに及ばず、あるいは道行く一般人よりもはるかに。
なぜなら彼女たちは明確に替えが効いてしまうのだから。
「貴様にカメリアを庇うような殊勝な心がけを期待しているのではない。ただただ、我が身可愛さに媚びればよい。一騎当千の猛者、閃刀姫をママとして甘えられることを楽しみにしている軍人たちは少なくないぞ?」
アザレアの背筋をぞぞっとした悪寒が走り抜けるが、少なくともいまこの瞬間を生き延びるためにはこれしないという結論にも彼女は至っていた。
高官が求める通り、彼女は軍服をはだけさせて乳房を露出させる。
「お、おいで――っっ」
そして物凄く嫌そうな表情を浮かべながら、アザレアは両手を掲げてみせた。
◆
椅子に座る高官はアザレアの胸に顔を寄せると、しゃぶりつくように激しい音を立てて吸い始める。
「よちよち、ボクのおっぱいを上手に吸えてえらいね♡」
彼女に頭を撫でられて気をよくしたのか、彼は桜色の乳首に軽く歯を立てた。
アザレアは甲高い嬌声をあげ、その華奢な身体を仰け反らせる。
「あひぃ♡ っっ、元気がよくてえらいえらい♡」
彼女は何とか引き続き褒めるが、胸の内にむずむずとした違和感を覚えていた。
しかし、その正体はすぐに現れになる。
彼女の乳首から母乳が勢いよく溢れ出始めたのだ。だが、高官はそれも分かっていたかのように喉を鳴らして彼女の母乳を嚥下していく。
(ななっ、どうして――っ!?)
困惑する気持ちが一瞬起こるが、先ほど彼が口にしていた台詞をすぐに思い出す。
つまるところ、アザレアとカメリアをクローンとしてデザインした者たちは二人が閃刀姫として不要になった後のことまで見据えていたのだ。
(余計なお世話だ。ボクはこんなところで終わるわけには……っ)
成さねばならないことのため、ここで挫けるわけにはいかない。
だが、おそらく奴が暗に示したように量産可能になったクローンの命など軽い。だからこそ、媚びてでも生き残らなくてはならないのだ。
高官が満足して顔を離せば、アザレアの乳房には赤い跡が、乳首にも歯形が薄っすらと見えた。
「それじゃあ、今度はシコシコしてあげよう♡」
アザレアは彼のズボンのチャックを下ろし、先走り汁を溢れ出しながら屹立する陰茎を解放した。
生々しい臭いに顔を顰めたくなるし、いますぐこの気持ち悪い物体をへし折りたい気持ちにも駆られるが、反抗の意志を明確に示せば先ほどの二の舞に演じてしまうのが関の山だろう。
(……どんなに嫌でもいまは従うしかない)
アザレアは先走り汁を掬い取って手のひらで塗すように広げ、そのまま彼の陰茎を扱き始める。
高官はしばらくされるがままだったが、口が物寂しくなったのだろう。
彼女の先ほどとは反対の乳房にしゃぶりつき、ちゅうちゅうと音を立てて吸い始めた。
「ふふっ、元気でいい子だ♡ ボクの母乳をたくさん飲みながら、がんばって精液をびゅうびゅうっていっぱい出してくれよ♡」
彼女の柔らかな手の中で、高官の陰茎が一回り大きく膨れあがる。
その直後、彼のモノは暴発したかのように大きく震え、アザレアの軍服に向かって精を吐き出す。
まるで閃刀姫としての彼女の尊厳を汚すかのように、白濁液は何度も何度も降り注いだ。
「よちよち♡ がんばって射精できてえらかったね♡」
アザレアは彼の頭を胸元に掻き寄せ、その後頭部をゆっくりと撫でる。
高官はばぶばぶと彼女に甘えるが、一方のアザレアは苦虫を噛み潰したようとだけでは言い切れない筆舌に尽くしがたい嫌悪の表情を浮かべていた。