アクアホストになる(導入編)
「え、ウチのアクアをですか?はい、はい承知いたしました。はい、よろしくお願いいたします。失礼致します」
電話を終えたミヤコは
「…はぁ」
大きなため息を吐く
聴こえた内容から察するにアクアに関する話題であることに食らいついたルビーは
「ミヤコさん、お兄ちゃんに番組のオファーでもきたの?」
兄の仕事の内容チェックを行う
「…はぁ」
対するミヤコは2度目の大きなため息を吐くと
「鏑木さんからね、ドラマの主演でアクアにオファーがきたの」
電話の内容を明かす
「え!?ドラマ!?しかも主演!?凄いじゃん!!何でため息なんて吐いてるの?」
ドラマの主演という大役にルビーのテンションは一瞬でぶち上がる
「ネット配信限定のドラマなのはいいんだけど…」
尚も複雑そうな表情を浮かべるミヤコは
「ーーまさかNo.1ホスト役なんてオファーが来るなんて…」
爆弾を投下する
「せんせ!!どういうこと!!」
アクアが家に帰ると飛んできたルビーに首を絞められる
「は?何の話?というかルビー、首苦しい…」
何のことか検討も付いてない様子のアクアに
「惚けないでよ!ホスト役なんてどういうこと!!」
般若の形相を浮かべ問い詰めるルビー
「??……あぁ!あの件か」
酸素が少なくなってきた中で必死に頭を巡らせ、ようやく状況を飲み込んだアクアはひとまずルビーを落ち着かせるためにその華奢な身体を優しく抱き寄せる
「むぐっ」
ルビーは思わぬ反撃に思考が止まる
「よしよし。大丈夫だから今説明するから一旦落ち着け」
頭を撫でる
「うぅ…」
優しい兄(せんせ)の声と手つきに毒気を抜かれていく
「あれはな、鏑木Pの思いつきなんだ。少し前に大ヒットした金持ち学園で暇を持て余した大金持ちがお遊びで学園内にホスト部作ってた漫画あっただろ」
「うん」
ルビーは病院のベッドの中で読んだことがある、少し前(10年以上前)に大ヒットした漫画を思い出す
「アレを元にちょっと顔のいい奴らを集めて学園ホストもの作ろうってなったんだよ」
アクア曰く、鏑木Pの若手の顔がいいモデル達の売り込みの場として手っ取り早い作品アイデアを欲していたらしく、アクアがポロッとかの作品を口に出したところ思ってた以上の好感触でトントン拍子に話が進んでいってしまったらしい
「で、発案した礼がわりにってキャストの1人に選ばれたってわけだ」
「ーーでも!せんせが演技でも女の子を口説いてるの見るの嫌なんだけど!!」
理由がわかってもなおルビーの嫉妬は抑えきれない
「それは許してくれ…」
可愛い妹のご機嫌を取るため隣に座るルビーの頭をそっと自分の膝に乗せ撫で回す
「…撮影から帰ってきたら必ず私を今みたいに甘やかしてね?」
「はいはい」
「…キスシーンとかはなるべくNGだしてね?」
「はいはい」
「…せんせ、大好き結婚して」
「は…っと!?サラッとヤバすぎるトラップを混ぜないでくれ!?」
「チッ…」
おざなりな返事をするせんせから言質を取ろうとし失敗しまた拗ねるルビーに苦笑しながらその頭を撫で続けるのだった