アオイちゃん××××たいそう編 2
アオイはどちらかと言うと行動派である。悩んだら体が動くタイプだ。早速スマホロトムに手を伸ばした。
検索ワード おっぱい おっきくなる 出来るだけ早く
※フィルタリングonです
その週の休日。彼女は一世一代の勝負に出る面持ちでハッコウシティにやって来ていた。スマホロトムに表示される店に行くためである。育乳、バストアップ、サプリ、オイルマッサージ、モニター、マジックミラー………フィルタリングは仕事をしている。スマホロトムも多忙である。さて、数多のフィルタリングの波を抜けアオイの目に止まったもの、それは……
『エステサロン ミロカロスのなみだ』
そう、彼女はその道のプロの手を借りることを選んだ。
はじめてのエステ……入っていく大人達は皆、メイク完璧、スタイル抜群、周囲にはなにやらキラキラのエフェクト(アオイ視点)が漂っており、思わず臆してしまいそうになる。不安になる心……傍らからポンッと音を立てて出てきたのは相棒のマスカーニャである。
「にゃおちゃん……」
マスカーニャはパチンと指を鳴らす。すると、ふわり、小さな花がアオイの手の中に落ちてきた。タイムのはな……奇しくもアカデミーの教師と同じ名を持つ其れの花言葉は、
「勇気と、行動力、だね。
……うん、わたしは大丈夫」
行こう、と声をかけてマスカーニャをボールに戻す。タイムのはなはを胸ポケットに挿してゆっくりとサロンの扉を開けて……
3分でつまみ出された。
否、追い返されたというのが正確か。
アオイは扉を開け、勇ましく、そう、多少はあると思いたい胸を張りながら受付へ向かった。怪訝な顔をする受付嬢を尻目に堂々と学生証を提示した。
「えーと、新チャンピオンのアオイ……様です、よね?」
「はい!」
「…………すみません、親御さんは?」
「コサジタウンにいます!」
「こ、このお店は、ですね、未成年の方が利用する場合、保護者の方に同伴していただくか、同意書を頂く必要がありますので………」
「え゛…………」
もちろん、ママには言っていない。気恥ずかしいし何より理由が理由だ。好きな人が巨乳好き!だからおっぱいおっきくしたいからエステに行きたい!なんて言ったら怒られるどころの話じゃない。口ごもっていると受付嬢は
「申し訳ございません、次いらしたときはお持ちくださいね……」
と、頭を下げ、玄関の扉を開けた。
そんなこんなでハッコウシティに向かったのは徒労に終わろうとしていた。勇気と蛮勇は別物である。中央のバトルコートを眺めるベンチでチュロス(チョコ味だ)を頬張った。出来立てはカリカリで甘くて何処かもちもちした食感がある。
(もちもち…………)
自分にはない触感である。
「あら、新チャンピオン……アオイちゃん?」
黄昏ていたアオイの背後から声がかかった。
余談ではあるが、アオイの検索ワードはママには筒抜けであった。
はじめてのスマホロトム
スマホロトム安全安心プラン
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8・お子様安心検索サービス
………お子様が有害な検索を行ってしまった場合、検索結果にはフィルタリングを行い検索ワードは直ぐに親御さんのもとへ!………
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お子様は安全安心です!
ネモの父自慢のシステムである。
因みにボタンは外している。