拓ゆいインパルス
和実ゆいが知っていた世界は、あまりにも小さ過ぎた。
ゆい達がブントル団のリーダー、ゴーダッツとデリシャスパーティプリキュアとして戦い、地球とクッキングダム、2つの世界は救われた。それは間違いではないだろう。
しかし世界には……いや、日本には数多くのプリキュア達がいて、それぞれが世界を救っていたのだ。しかもその多くがゆいとそう歳の変わらない少女達である。
そしてその中でも少なくない人数がゆいの幼なじみ、品田拓海に恋心を抱いていた事実は、鈍感でマイペースなゆいにも危機感を与えるには十分であった。
もし拓海が他の女の子とくっついてしまったら、ゆいの元から離れていってしまうかもしれない。電車や飛行機で行ける距離ならまだマシな方で、もしかすれば異世界や宇宙に行ってしまう事だって懸念される。
拓海がゴーダッツことフェンネルの凶弾に倒れた時、身も凍るような寂しさをゆいは覚えた。もう2度と拓海に会えないかもしれない。死別よりかはマシかもしれないが、それでももう2度とあの冷たさを味わいたくない。
だから少女は、強硬手段を取る事を躊躇わなかった。
「ゆいから部屋に呼ばれるなんて、いつぶりだったかな…」
夕暮れ時、思春期真っ只中の少年である拓海にとって幼なじみとはいえ女の子の部屋に呼ばれるのにはあまり慣れていない。例え自分が何人かの女の子と肉体関係があったとしても、その胸の鼓動を抑えることは不可能であった。
「ゆい、いるんだろ?入るぞー」
拓海が意を決してドアノックし、入室すると普段とは違う雰囲気のゆいがそこにはいた。
溌剌とした笑顔を浮かべて料理に舌鼓を打つのが普段のゆいだとすれば、アンニュイな雰囲気を醸し出しているこの少女は一体誰なのだろうか。拓海がそう狼狽えてしまう程に、様子が違って見えた。
花より団子、色気より食い気なはずのゆいが部屋に入ってきた拓海に艶やかな視線を向ける。そして小さく震えながら着ていた衣服を1枚ずつ脱いでいった。上着、シャツ、そして下着。まるでストリップショーのような艶めかしさに、拓海は息を呑む事しか出来なかった。
「ねぇ、拓海――抱いてくれる?」
いつもからすれば様子がおかしい幼なじみの頼み……いや、懇願ともいえるだろう。拓海は色欲に関係なく受け入れる事を選んだ。
「んっ…、あむ…!拓海、もっと…!もっと強く…!」
「……あぁ」
お互いが顔を向け合う対面座位。ゆいはいつもより強く腰を打ちつけていた。水音と喘ぎ声が薄暗い部屋に響く。
「なぁゆい、もう少し声を小さくしないと下にも聞こえるぞ?」
「大丈夫…!今日はお母さんお店開けないって言ってたから…!」
疑問を浮かべたとしてもこれ以上追求されないように、ゆいは快楽で拓海の脳を染めあげようと必死で腰を打ち付け、深い口づけを交わす。しかし、その時間は長くは続かなかった。
「なぁゆい、今日のお前少し変だぞ?何かあったのか?」
「え?別にそんな事ないけど…」
「じゃあなんでお前、そんなに泣きそうなんだよ…」
「えっ…」
涙は流していない。しかし、その一瞬を突かれて拓海に押し倒され、呆然とするゆいに拓海は言葉を続ける。
「何かあったら力になりたいんだよ。俺達、幼なじみだろ」
「幼なじみ…そっか、そうだよね」
ゆいは一呼吸置いた後、拓海に剣幕を向ける。…今この状況で、「幼なじみ」の言葉がゆいの地雷であった事は明らかだった。
「拓海はさ、色んな女の子とこうやってエッチしてるんだよね?」
「うぐっ、それは…」
「うん、分かってる。でもさ、もしあたしに赤ちゃん出来たら拓海はあたしだけを見てくれるよね?」
「おい、ゆい…!」
拓海が押し倒したはずだった。しかし、パワーはゆいの方が上である。拘束された状態で縄を引きちぎる程の怪力の持ち主だからだ。ゆいはどこか虚ろな目で拓海をベッドに寝かせ、その剛直を腟内に押し込むとそのまま騎乗位で犯し始めた。半狂乱で腰を振る度に、同年代より明らかに大きな胸が拓海の上で揺れる。
「んっ、あっ!ゆい…!お前…!」
「拓海の赤ちゃん欲しい!拓海の赤ちゃん産みたいよぉ!」
「あたし拓海が望むならなんだってやるよ!?お料理も子育ても、勿論エッチな事だって!」
「拓海の周りには色んな女の子がいるけど、あたしには拓海しかいないの!」
「だから拓海!あたしだけを見て!」
「ゆ、ゆい!出るっ!」
「いいよ出して!あたしをママにしてぇ!」
───ゆいの腟内に、白い欲望が注ぎ込まれた。
「ごめんな、ゆい。俺の事であんなに思い詰めてたなんて…」
「ううん。あたしこそ、拓海の気持ちにもっと早く気がついてたらこんな事にはなってなかったと思うから」
一糸まとわぬ姿でベッドで横になるゆいと拓海。2人ともどこか吹っ切れた様子で、互いに笑みをこぼしていた。
「俺、明日からみんなに謝ってくるよ。何十回引っ叩かれるかもしれないけどこれ以上ゆいを…彼女を悲しませる事は出来ないって」
「えっ?それって…」
「順番がぐちゃぐちゃになって悪いんだけど…ゆい、俺の彼女になってくれますか?」
おいしーなタウン一情けない告白。その様子を見たゆいは思わず吹き出しそうになるのを抑えながら首を縦に振った。
「もう、そういう時は───」
「───俺のお嫁さんになって、でしょ?」
その日、久々にひまわりのような満開の笑みがゆいの顔に戻ったのだった。