やめなよAL-1S 残酷な真実
鳥籠Keyが手を振るう。アリスの体の命令権を奪うためのプログラムが侵食する。しかし、アリスの構築した防衛プログラムが防ぐ。2人の戦いはこの繰り返しだ。
いや、Keyの顔に焦りが生まれる。Keyの作り出したプログラムにアリスが対応する時間が短くなっているのだ
(新たにプログラムを構築する時間が足りない…まずいっ!)
Keyの攻撃の隙間を突いてアリスが反撃用のプログラムをKeyに向ける。咄嗟に防衛プログラムを作って防ぐがそのまま攻守が逆転する
(何故?!こちらのパターンが読まれてる!)
かつてアリスにはケイの人格が入っていた。そして、アリスとケイの2人でアトラ・ハシースを起動した。その際にケイのパターンを学習していた。その経験によりKeyよりも早くプログラムを作る事が出来たのだ
(このままの勢いでKeyを拘束して、アツコの所に向かいますっ!)
アリスの攻撃の勢いが増す。Keyのプログラムが防ぐ。その際、2人の間にそれぞれの記憶が入り込む。
Keyに流れ込んでくる。そこには、モモイとミドリ、赤毛の少女がゲームをしている景色が。彼女らが自分の手を引っ張って一緒に遊んでくれる。それに暖かみを感じた。
アリスは見た。血だらけになった少女を抱えてやって来るアリスと似た少女の姿を。何故か手に殴ったような感覚がある。
2人はそれぞれに流れ込んだイメージに対して困惑する。しかし、切り替えて目の前の敵に対処しようとした所で乱入者が現れた。それは、アリス達の精神世界ではなく外で起きた事だ。
アリスの体に巻き付いていたロボットを何者かが撃ち落としたのだ。アリスとKeyは視界を通じて確認する。そこにはモモイがいた
「モモイ!」
アリスは喜ぶ。モモイがアリスの事を助けたのだ。そのままアリスはKeyを拘束するためのプログラムを構築しようとして———
「もう、やめてよ。これ以上私から奪わないでよ」
———動きが止まった。
アリスがモモイを見る。彼女は泣いていた
頭の中がグチャグチャだ。どうしてアリスがこんな事をしたのかわからない。ミドリの銃を使うなんて。目的はマダム?誰かに唆された?あのロボットは?どうして何も相談してくれなかったの?何をしたいの?私からまた奪うつもりなの?ねぇ、AL-1S
「私からミドリを奪って、今度は私の居場所も奪うの!?」
———アリスに記憶が流れ込む
命令は反逆者の鎮圧だった。2人の小さな反逆者、大した脅威でもなかった。倒れたピンクの服を着た方に近づき体を持ち上げた。銃弾がAL-1Sに当たる。
「お姉ちゃんを…離して…!」
見ると緑色の服を着た少女が息も絶え絶えにこちらを睨みつけていた。
——反逆の意思を確認
持っていた方を捨て、彼女に殴りかかる。何度も何度も、意識がなくなっても
「アッ、アアアアアアア!」
(違う!アリスじゃありません!アリスは!)
流れ込んだ記憶。手に感じるその時の感触。例えそれがアリスではなくこの世界のAL-1Sがやった事でも、まるで自分が行ったかのような錯覚をアリスに与える。
——Error、感情を処理できません。
唐突に悲鳴をあげ、動きの固まったアリスに対してKeyは拘束用プログラムを放つ。それは何の抵抗もなくアリスに当たる。アリスに近づくが何の反応もない。Keyは人格を封印するためのプログラムを構築し始める。何も反応がないアリスにKeyは語りかける
「…あなたの感じる罪はあなたのものではなく私達のものです。『アリス』」
Keyの口調は敵に対して向けるにしては優しかった。
プログラムの構築が終わる。それをアリスに放とうとして…黒いモヤに気づいた
「!?」
Keyは距離を取る。黒いモヤがアリスを吸い込み、強烈な光を発する。Keyが目を開けた時、そこには誰もいなかった。