やめなよAL-1S パラレルワールド
鳥籠見知らぬ場所でモモイに出会えたアリス。しかし喜んだのも束の間、身につけている物やその雰囲気はいつもとは異なり冷たく感じた。その雰囲気の変化に混乱してオロオロしていた。そんなアリスをモモイ(?)は変なものを見る目で見ていたが、暫くすると「とりあえず、私の部屋に入ろうか」とアリスを部屋に連れていく
アリスは不思議だった。ここはミレニアムではないはずだ、だからモモイの部屋などないはずだと。それでもモモイが迷いなく進むのでついていく。そして、案内された部屋に入って驚くことになった。部屋はベッドとロッカーぐらいしか目立つものが無い。隅には壊れた数少ないゲーム機が粉々にされた状態で放置されてた。服も普段の明るいピンクが色褪せていたりしている。…何かがおかしい
「モモイ、アリスの事はわかりますか?」
「…AL-1Sでしょ」
モモイがアリスの事を『AL-1S』と呼んだ事にアリスは悲しい気持ちになる
「アリスは…アリスです…」
見るからに元気のなくなったアリスを見て流石に何かがおかしいとモモイも思ったのか
「ごめん。ちょっとあなたの話を聞かせて」
アリスは話した。ゲーム開発部の事を、アリスが拾われてから経験した日々の事を。モモイは信じられないと思いながら聞いていた。しかし、アリスの楽しそうに話す様子を見てモモイは一つだけ確信した事があった
アリスの話を聞き終えてモモイは言う
「たぶんだけど、ここはあなたの知ってるのとは違う。もしかしたら別世界ってやつかもしれない」
そしてモモイも話し出す。ここはアリウスと呼ばれる場所でモモイはアリウス所属の生徒である事、ミレニアム学園の名前は知っているが、入ったこともないしユズという少女の事も知らない事。アリスはここではAL-1Sと呼ばれており、学園を束ねるベアトリーチェの部下であり、普段は他の生徒とコミュニケーションをとっていない事を話した
アリスはモモイの話に混乱しながらもなんとか理解しようとする。ただ一つだけ気になった事があった
「『ミドリ』はいないんですか?」
ミドリはモモイの双子の妹だ。ゲーム開発部が無いからユズと出会ってない事はわかった。しかしミドリとも姉妹ではない世界なのか。それはアリスにとっては単なる疑問でしかなかった。だからモモイが顔を逸らした意味も空気が重くなった事も気づかなかった。どれくらい経ったかモモイが口を開く
「ミドリは…ミドリは死んだよ」
「えっ?」
モモイの言葉を理解できなかった
死んだ?誰が?ミドリが?死ぬって、2度と会えないことですよね?
少しずつ言葉の意味を理解し始める。そして理解すると同時に涙が出てくる。別の世界とわかっていてもミドリが死んだ事、ミドリを失ったモモイの事を思うとアリスの涙は止まらなかった
暫くするとモモイが部屋を出て行こうとする
「落ち着くまで部屋を使っていいよ。…あなたが元の世界に戻れるように努力はしてみるから」
モモイの言葉にアリスは甘える事にした
モモイが部屋の外に出る。彼女の心境は複雑だった。
AL-1S…いやアリスの話は半信半疑だった。正直ふざけてるのかとも思った。だけど、ゲーム開発部での話をしてた彼女はとても楽しそうで、私の知ってるAL-1Sとは違うと思った。それでも、ミドリの話が出た時に怒りが湧いてくるのをなんとか押さえ込んでアリスから逃げるように外に出たのだ。
だけど、ミドリが死んだと聞いて泣き出した彼女を見てAL-1Sと違う事に確信も持った。
アリスの話を思い返す。私とミドリ、アリスにユズという少女の4人で部活を行っているらしい。そんな幸せそうな風景を頭に浮かべて、虚しくなる。どちらにせよ、あの子はここにいるべきじゃない。AL-1Sを許すつもりはない。それでも『アリス』は関係ない。彼女は幸せな世界に戻すべきだ
仇と何も知らない少女、瓜二つの姿でありながら違う存在にモヤモヤしながらもモモイは自分のしたいと思った事に向けて動き始めた