やめなよAL-1S サオリの独白

やめなよAL-1S サオリの独白

鳥籠


才羽モモイ

彼女の名を知らない生徒はアリウスにはいないと言っても過言ではない。彼女を一言で表すならアリウスに似つかわしくない程前向きだったと言ったところか。ミドリという双子の妹もいるが、そちらの方はアリウスのモットーを理解しているのにな

マダムに教育係を命じられたがアイツの行動力には手を焼いた。訓練には不真面目で気付けば消えていたり、いつの間にかカタコンベを通って外の世界に行っていたのか銃をデコレートしていたり、イタズラで多くの人を巻き込んだりしていた。ミドリは真面目な方だったが姉につられて一緒に問題行動をする事もあった。モモイは幼馴染みのような関係のミサキ達といる時もいつの間にか入ってきて騒がしくする。呆れたヤツだった。

…だが、不思議と嫌いにならなかった。それどころか私も楽しいと思ってしまったんだ。だからだろうな、モモイの行動をつい甘やかしてしまったのは


私がちゃんと甘やかさなければ、注意していればあんな事は起きなかったのか?


それはある日私が訓練を終えて学園にもどってきた時だった。他の生徒の慌ただしい声が聞こえたんだ。モモイが怪我をして昏睡状態らしい、と。その場にいたミサキ達も動揺していたのがわかった。すぐにモモイの様子を見に行こうとしたところでマダムに呼ばれた

嫌な予感がした

マダムのもとに向かうとそこには血だらけのミドリがいて…マダムは「捨ててきなさい」とだけ命じた。その一言で私は理解した

…………すまない。

私はその日の朝モモイ達が何か企んでいる事に気づいていた。だが、いつもの事だと気にしていなかった。

ミドリを運ぶ。こんな事他のみんなに任せられない、見せられない。ミドリを川に捨てる。本当なら生死の確認をするべきだったのだろう。だけど、私はしなかった。これは私の甘さだ。あの傷では助からないのだから。

だが、もしかしたら…。ミドリが流れていく、私の中にある甘さと一緒に

そう、全ては虚しいのだから



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