やまもおちもいみもない
「今日はちょっと回数多いぞ」
ベッドまで私を運んで覆い被さってきたコラさんが重々しく言った。拒む理由はひとつもないので頷く。体力には自信がある方なので、いつもの回数より増えようと問題はなかった。
コラさんがキャミソールをたくし上げ、下着を外すと胸に顔を埋める。前戯のときはまず胸から始めるのが好きなようだった。戦闘中や走ってるときには邪魔だと思っているけど、今はそれなりのサイズに育ってよかったと脂肪の塊を褒めてやりたくなる。
未成熟の体に劣情を抱いていた人が、今の体をどう思うかというのは離れていた間の悩みの種だった。本当にコラさんがペド趣味だった場合運良く再会出来ても、もうその体に興味はないと言われるかもしれないと嫌な方に想像がはたらいたのだ。杞憂に終わったけれど。最悪の想像を巡らせて、何度か夜に枕を濡らしたことはコラさんには絶対に教えてやらない。
柔らかい金髪が胸の間をくすぐるので、襟足を引っ張ってこちらを向かせた。意図が通じたようですぐさまキスを贈られる。腕を曲げて四つん這いになったコラさんに組み敷かれると閉じ込められているみたいで、体勢だけでももう満たされそうな自分がいた。
同時にめちゃくちゃにされたいという願望も育つ。体格でも筋肉量でも勝てる見込みのない相手に本気で好き勝手されるとどうなってしまうのか、恐怖よりも期待が先に来てしまう。
「ん……ふ、ぁ…」
脚が絡み合って、太腿にぐいぐいとコラさんの欲の部分を押し付けられる。興奮しているのだと暗に伝えてくれるのが嬉しくて舌を食まれながら声を漏らす。
「脱がすぞ」
「ふぁ、ぁん⋯⋯」
キスの合間にコラさんがそう囁いた。ボトムに手を引っ掛けて下着ごと下ろされる。頷く間も与えられずに脱がされたせいで甘ったるい声を出した。
「今日すごい可愛い。どうした?」
「ぁ、わかんなぁい……」
返事の声は自分のものとは思えないほどドロドロに甘え切っていた。コラさんが好き過ぎて、どんなことされるのか期待し過ぎてこうなっているのだと、言うにはまだ理性が余っていた。
「そうだよな、いつも可愛いもんな」
「あっ、ぅん」
喜んでしまう言葉を追加で囁かれて、また甘えた声を出してしまった。ストレートな口説き文句に弱いということを分かっていて、こういう言葉を投げかけてくれる。嬉しくなってコラさんの首に腕を回して、もっと欲しいとキスをせがむ。上半身の体重をかけてもびくともしない力強さに、更に興奮した。
「すげーぐちゃぐちゃ」
「っあ……」
長い指が大陰唇を辿る。膣口が指に吸い付くのを楽しむみたいに突き入れずに撫でるだけに留める。
それでもすっかり濡れているらしい女性器はくちくちと音を立ててコラさんの指を歓迎する音を立てた。
「指ふやけそう」
「んっ⋯⋯、あ、ぃ、」
お伺いを立てるように撫でていた指がずぶずぶと沈められて、コラさんにしがみつく力が強くなる。
昨日も愛された場所なので拓かれる痛みはなく、ただ受け入れて歓迎するだけだった。
「いっ、むり⋯⋯も、むりっ!」
「だーめ。最初に言ったろ?」
食い気味に却下されて、わぁっと涙が溢れてもコラさんは構わず腰を動かした。
正常位を二回からの対面即位が二回に騎乗位が一回。普段ならこのあたりで終わるはずの行為に今日は対面座位が二回とまた正常位がもう一回、私が体力の限界を迎えてなし崩しに後背位へ移行して三回を迎えたところでギブアップを訴えた。多いとは言われたけれど流石に限度がある。
だがそれも聞き入れてもらえずに、喘ぐ体力も無くなった状態でコラさんに揺さぶられている。
胎内を何度も熱くて太い陰茎でこね回され、絶頂を迎えるたびに肌がどんどん敏感になっていく。敏感になった肌が更に快感を拾い上げ、絶頂までの間隔が短くなる。コラさんの手に撫でられるだけで甘イキする始末だった。咥え込んだ陰茎を締め付けると下腹部がどんどん熱く潤んでいくのが分かる。律動に合わせて押し上げられるような心地のせいで、絶頂後の浮遊感がずっと続いていた。落ちようにも止まらない。高みに何度も上げられて思考も削ぎ取られる。
体力もどんどん無くなっていくので、自分で止めるすべも無い。気持ち良すぎておかしくなりそうだった。
「いぁ、いや!もうやだぁ~~~~!」
過ぎた快感が怖くて拒否してしまう。自分で言い出したことだというのは、もう頭になかった。
ずりずりと力が入らない体で逃げを打つ。腕をなんとか動かして全く使い物にならない下半身を引きずって這った。
後で戻るから少しでも休ませて欲しいと本気で思った。それなのに体がブレーキをかけられたみたいに静止して瞠目する。振り返ると足首をコラさんが握っていた。
「や、ぁ、あ~~~~~!!っう……」
足首を引っ張られてコラさんの元へ逆戻りする。そのまままた硬さの衰えない陰茎をねじ込まれて身が竦んだ。
「お前、いま逃げたときどんなんなってたか分かるか?」
「ぅ、あっ、ん……」
「シーツの上でずりずりってさ」
「あ、ふっ、あ、あぁ、ぃ」
「ケツ振って逃げてんの、すっげぇエロかった」
「し、ら、ぁあ!んぁ、あぁん!」
大きな体に抱き込まれて、律動に合わせて抜き差しされるのに喘ぎ声しか紡げない。
「知らない」と言おうとしたら、深く入り込んで言葉にならなかった。
ヒュッと息が詰まる。
目の前がチカチカして、何度目か分からない絶頂が襲う。身を震わせて少しでも快感を逃がしたいのに、もはやそんな体力もなくて波に放り込まれたような気持ち良さだった。
声も出せずにはくはくと浅く息をして、自分を組み敷くコラさんを見つめる。
情事の真っ最中だというのに赤い目は凪いでいてこちらをじっと見つめていた。まるで私の痴態を頭に焼き付けているみたいだった。
「ほんとかわいい。お前がエロく喘いで訳分かんなくなってるとこどうしようもなくかわいい。なあ、誰にもそんな顔見せんなよ」
今度こそ視界が真っ暗になる前に、浮かれたような声音でコラさんが言ったのが聞こえた。