もしもルフィが最悪の状態でエレジアに飛ばされたらPart 2

もしもルフィが最悪の状態でエレジアに飛ばされたらPart 2



「なぁ、少し思い出の場所でも巡ってみよう」 「うん」 2人は思い出の場所を巡り出した。 思い出の中から少しでも生きる希望探そうとしたのだろうか。それともただの現実逃避だろうか。はたまた何か別に理由があるのだろうか。 もうわからない。 2人で必死こいてかけっこをした坂。 度胸試しで飛び降りた崖。 チキンレースをした路地。 みんなで歌ったマキノさんの酒場。 めぐるたびにもう何も残ってないことを痛感して苦しくなった。 もう涙は枯れていた。 そこで何かを思い出したルフィがつぶやいた。 「なぁ…ウタ、お前の能力で…」


「私も思ってたんだけど無理だよ…私が眠ったら能力もとけちゃうしそれにさ今のルフィに空いた穴を埋めれるほど私の能力は万能じゃない」 「そっか…悪りぃ無茶いっちまったな」 もう日は暮れていた。 瓦礫に灯っている小さな炎だけが2人をゆらゆらと照らした。 ウタは今度こそ全てを忘れたかった。 「ねぇルフィ…抱いてよ」 次こそ快楽に溺れてしまいたかった。 「でも前それでお前を傷つけて…」 「次は優しくしてくれれば大丈夫だからさ、本で読んだやり方だって教えるし」 「う…うん」 2人は一つになった。 しかし、快楽などは感じなかった。 なぜか繋がれば繋がるほど辛い現実が蘇る。 しかし2人は止まることもできなかった。 繋がれば繋がるほどお互いの存在を確認出来たから。


ところ変わって新世界 とある海域。 「ハーハッハッハッ!ママママ!四皇の半分が落ちてカイドウの所も戦争で大きなダメージを受けてるはずだ!今のうちに取っちまうよ!カイドウの首!」 「んでも赤髪の行方に関しては一切が謎のままだねぇ」 「東の海での島々の壊滅や温泉街での火山の大噴火も気になる…ペロリン」 「関係ないねぇ!今はカイドウの首が最優先だよ!」 「了解だママ!」 「待ってろよぉ!ワノ国!カイドウ!」 新世界ワノ国 「確かな情報網から得た情報なのでまず間違いないかと」 「あのババア…ふざけた真似してくれるじゃねぇか上等だよ!返り討ちにしてやるよウォロロロロロロ!」 「本気ですか?先の戦争でこちらも甚大な被害が…」 「そのかわり、いくらか戦力も補充できただろ!?あいつらの様子も見ておけ!あとついでだあいつの目が死んでないか確認してこい。まあ…まだ死んではないと思うが…ウォロロロロロロ!」


海軍本部 「おい!とっととしないか!本部をこの新世界に移したというのになぜ物資が遅れてる?」 「すいません…手違いがありまして…」 「手違いだと?なにしてるんだよ」 「おぉーいいんだよォ〜」 「黄猿大将!?どうしてここに!?」 「今新世界はちょっと大変なことになりそうだねぇある程度の戦力は旧本部に残しておいた方がいいんだよォ」 「大変なこと…?戦争の後処理…インパラダウンの黒ひげによるレベル6囚人大解放問題…ボア・ハンコックの戦争不参加による除名騒動…よくわらない金獅子のシキの計画…たしかに色々起きてはいますがだからこそ本部を新世界へと移すのでは?」 「いやもう一件やっかいなことが起きてねぇ」


数日後フーシャ村。 2人は同じような毎日を過ごしていた。 思い出の場所をめぐり海を眺めて夜になると交わる。 快楽のない交わり。性的興奮もない交わり。 ただただお互いの存在を確かめ合う。 虚しいだけの現実が押し寄せてくる。 悲しみが押し寄せるたび激しくなっていく。 激しくすればするほどさらに悲しみが押し寄せる。 悪循環だった。 でも2人はお互いの存在をこれでもかと言うくらいに確かめ合う。 そうしないと不安で眠れないから。


そんな数日を過ごしたある日だった。 2人がいつも通り歩いているとルフィが突如立ち止まった。 そして、再会してから一度も聞いたことない明るい声を出した。 「おい!見ろよウタ!」 「ん?どうしたのルフィ?」 元気なルフィの声を聞いて少し混乱もあったが何か希望が見えそうな気がした。 あの頃のルフィの声だ! 何かが変わるかも知れない! また勝負できるかも! 「おぉー生きてたんだな!チョッパー!」


ウタがそっちを見た。

あるのは1メートルくらいの岩だけだった。 「ルフィ…?」 「なに黙ってんだよ?チョッパー?あ!紹介するよ!コイツ、ウタ!小さい頃からよく遊んでよ!」 「ルフィ?!」 「ウタ、前少し話しただろ?チョッパー!うちの船医でさ!甘いもんが好きでよ!ウタとも気が合うと思うんだ」 「…」 「チョッパーがいるってことは他のみんなもいるんだろ?教えてくれよチョッパー!もったいなぶらなくていいからよぉ!」 ウタは何も言えなかった。 そこにあるのは岩だよって教えてあげたらもうどうなるんだろう。 予想もできなかった。 「なんだよチョッパー?拗ねてんのか?おれがウタと手を繋いでるから!お前を繋いでやるよ!ほらこっちこい!どーしたんだよ!返事しろよ」 ウタはただじっとチョッパーと言われてる岩を見つめていた。


ルフィの“仲間”は日に日に増えていったが集合することはなかった。 ルフィは毎日ウタの手を引き“仲間”の元を辿るのが日課になった。 ルフィにはウタの他にも“繋がり”が出来たので交わりは少しずつ減っていった。 ウタにはそれがたまらなく不安だった。 ルフィは何度かウタの手を離そうとすることもあったがウタが必死にルフィの手を離さなかったので2人の手が離れることはなかった。 「なんだよ!ゾロまた迷子か?ナミならあっちだからよ!早く行こう!」 「おーい早くこいよサンジ!わかった!おれとウタが仲良くしてるから拗ねてるだな!」 「ウソップ!聞いてくれよフランキーの奴が大砲作ったのに見せてくれねーんだよ!」 「ブルック!ウタに一曲聞かせてやってくれよ!ウタも音楽家なんだ!」 「ロビン〜また本読んでんのか?どんな本だ?おれとウタに読みかけてくれよ」 木や岩、瓦礫に話しかけるルフィが不思議とウタには怖くなかった。 いや、不思議ではない。 理由もなんとなくわかる。 もうすぐ自分も行くんだ。 そっち側。


ルフィの“仲間”を全員紹介されて数日が経った。 いつも通り“サンジ”のところに向かうとそこにはウタのよく知る人物が立っていた。 「ホンゴウさん…」 「ん?何いってんだ?」 「ホンゴウさん無事だったんだね!シャンクスもいるでしょ?」 「何いってんだよ?ウタ?ホンゴウなんてどこにもいねーよいるのはサンジ…」 ウタが“ホンゴウ”と呼ぶ“サンジ”を見返すとそこにあったのはサンジでもホンゴウでもなく焼き焦げた木だった。 ルフィはその瞬間自分が何をしていたのか、ウタがこれからどうなってしまうのか理解して怖くなってきた。 「ウタ!おれが悪かった!おれが悪かったから!やめろよ!やめてくれぇ!」


ルフィの必死の呼びかけにウタはなんとか戻ってこれた。 「ごめん…心配かけちゃったね」 「ごめんってならおれの方だ。おれがあんなんなっちまったからウタを怖がらせちまって…。」 「ううん…そんなことないルフィの仲間のことが聞けて少し嬉しかったんだよ…私」 その夜2人は激しく交わった。 お互い存在を確かめるためだけに。 そこに欲望も快楽もない。 確かめれば確かめるほどここにいるのは2人ぼっちだっという現実が強く襲ってくるのだった。


2人の会話はどんどん少なくなった。 というよりバリエーションがなくなっていった。 手を繋いでヨロヨロと歩きながら 「ねぇ…ルフィ」 「なんだ?」 「なんでもない」 また少しして 「なぁ…ウタ」 「なに?」 「なんでもねぇ」 何度も何度も繰り返した。 意味のない会話なのはわかってる。 でも急に返事が返ってこなくなってしまうんじゃないかと不安だった。 だから何度と何度も同じ会話を繰り返した。 その「なんだ?」が聞きたくて その「なに?」が聞きたくて なんでもないって言いたくて。 本当はなんでもないはずないのに。


新世界 新海軍本部 海軍大将青キジは頭を抱えていた。 「おいおい。いい加減してくれよ…そりゃボルサリーノの担当でしょうが」 「とはいっても黄猿さんは今ゼファー先…ではなくてZの件で手が離せないとのことで…」 「じゃあサカズキはどうしたのよ」 「先日のカイドウとビッグマムの現場に向かってしまって…」 「おいおいおれだって金獅子の件任されてんのよ…ったくどうなってんだよ今の海は…」 頂上戦争からあと海は今までにないくらい荒れていたのはたしかだった。 「今、麦わらごときのために東の海まで行くわけにはいかないのよ」 「しかし、チャルロス聖がカンカンでして…」 「はぁーどうしろってんだよ」 「おれに行かせてくれ」 葉巻を加えた男が名乗りを挙げる。 「んじゃ、任せる!」 「んな適当でいいのかよ」 「ダチだからね信用してるよ」 「ローグタウンで逃した…アラバスタの件もある。しっかりケリつけてやる」


新世界 ワノ国 兎丼。 「はーはっはっはっ!ママママ!出てきな!カイドウ!」 「どーしましょー!クイーンさん!」 「おれが知るか!!早くカイドウさんを連れてこい!」 「それがつい先ほど到達した赤犬と交戦中でして…」 「ちくしょう…海軍めなんて間の悪い時にきやがんだ」 「カイドウの部下はどいつもコイツも骨がないね!」 「おい!その檻を壊すんじゃねえ!例の男を閉じ込めてんだよ!」 「どどど…どーしましょ!クイーンさん!」 「知るか!おれに効くな!」


東の海 ゴア王国 フーシャ村跡地。 2人はもう歩き回ることも少なくなっていた。 またどこか歩き回ると幻が見えてきそうでそれが怖かった。 次に幻を見たらもう帰って来れない気がした。 ほぼ一日中初めて出会ったはずの場所で憎たらしいほどキラキラと輝く海く広大な海を眺めながら。 もう自分達がなにを考えているのかもよくわからない。 ウタは少し前から頭の中でぐるぐる泳いでいた言葉を口にした。 「ねぇルフィ…死んじゃおうか?」


「嫌だ」 「どうせこのまま生きててもさ何にもないよ!」 「そうかもな」 「もう大好きだった海だってこんなに嫌いになっちゃった!」 「そうだな」 「このままじゃあ私ルフィのことも嫌いになっちゃうかもしらない!」 「おれはウタのこと嫌いにならねぇ。絶対に」 普通ならこれ以上キュンとする言葉はないかも知れない。 でも今のウタにはこの言葉に嬉しさも感じたが、同時に悲しさを感じた。 理由はよくわからないけど怖かった。 「でも、ルフィはよく頑張ったよ!もういいじゃん!」 「でも、まだ叶えてないから」 「私との約束?もういいよ!忘れてよ!これ以上ルフィが傷つくのは見てられないし」 「もうお前とだけの約束じゃねぇんだ」 「え?」 「アイツらとの約束でもあるからな」 「そっか…」


「だからよ!おれはひとつなぎの大秘宝“ワンピース”を見つけて海賊王になって、新時代使らなきゃいけねぇんだ!」 「そうだよね…2人での約束だと思ってたのにちょっと悔しいけどもっと嬉しいよ」 ほんの少しだけどルフィはまだ前を向いていた。 いや向こうとしていた。 ウタはすズキズキと痛むココロを押し殺してルフィに笑顔を向けた。 まだココロが痛むとは思っていなかった。 「ウタも協力してくれよ!」 ルフィもまた痛むココロを押し潰して笑顔を返した。 「もちろんだよ!」 ウタは断ることができなかった。


約束を誓い直して数日経った。 ウタは薄々気づき始めていた。 もうルフィは生きる理由がワンピースしかなかった。 それがなくなったら恐らく一緒に死んでくれるんじゃないか。 そもそもワンピースを見つけに行くにも計画性がなさすぎた。 戦力は足りるの? 航海術は持ってるの? 海戦にになったら、砲撃はできるの? 食料は?料理は? 病気や怪我はどうするの? ワンピースへの航路はわかるの? 船はどうするの? 疑問が尽きなかったけど一つ一つの質問がルフィを傷つける気がしてウタは問うことができなかった。 多分ルフィはワンピースに、海賊王に、しがみついて精神を保っているんだ。


夢への道を全く進まないまま数日が経った。 一隻の海軍の軍艦がやってきた。 「物資運搬船からの情報は本当だったか…」モクモク 皮運搬物資の船長があまりにも弱々しい姿を見送ったあとどうしても不安になり保護を依頼したのだったが皮肉にもその2人のうちの男が麦わらのルフィと一致したのだ。 年齢の情報だけが不一致だったのは怯える2人が実年齢より一回り小さく見えたからだろう。 「覚悟しろよ!麦わらぁ」モクモクモクモク‼︎


スモーカーはフーシャ村跡地に上陸して言葉を失った。 ずっと追い続けていた麦わらはあまりにも小さかった。 「麦わら!観念しろ!」 麦わらと手を繋ぐ少女には目をくらず拳を強く握る。 「げっ!ケムリン!」 そういうとスモーカーに対してルフィは頭を下げた。 「見逃してくれ!最悪おれはいい!ウタだけでも!」 「‼︎?」 「ルフィ!やめてよ」 「拍子抜けだぞ麦わらァ!本当にいいんだな」モクモク 「悪りぃなウタ…約束守れねぇかも知れねぇ」 「ダメだよ!ルフィ!一緒に新時代作るんでしょ!」 「…」 スモーカーは少し黙っていた…


スモーカーが立ち去って2人はしばらく黙っていた。 ウタには確かに聞こえた。 ルフィの中でガラガラと最後のなにが崩れて去った音が。 「ケムリンの奴最後に嘘ついていくんなんてよぉ?なにがしたかったんだろうな?な?ウタ?嘘だよなウタ?」 「うん!そうだよ!きっと嘘だよ!」 フーシャ村に飛んできた新聞紙が2人に現実を突きつけた。 【新世界壊滅!エンドポイントの伝説は本当だった!政府は未だ黙秘を続ける】


取り乱すことルフィに対してウタは少し冷静だった。 ウタは確信していた。 ついにだ! やっとだ! これでルフィと向こうに行ける。 長かったなぁ… 辛かったなぁ… これ以上自分が傷つくのは嫌だったしそれ以上にルフィが傷つくのは見てられなかった。 シャンクス… みんな… ゴードン… もうすぐそっちにいくからね。


意外なことにその誘いはルフィからきた。 「なぁ…ウタ…そろそろ行こうか」 ウタにルフィがどこに行こうと誘ってるのかすぐにわかった。 ルフィから言ってくれるのが嬉しかった。 ルフィと再会して初めてココロからの笑顔が出せた気がした。 「うん」 そういうと2人は“新時代”を誓い合った場所に来ていた。 夕日は2人を歓迎さるようにキラキラと輝く。 「おれたちが行くならココしかねぇと思ってよ」 「そうだよね」 一歩一歩海の方へ近づく。 あと一歩で海に落ちるその時だった。 「いい加減にしろ…2人とも…」 コツンコツンと鞘が2人の頭を叩いた。

「「!!?!?」」 2人は振り返った。 そこのは赤髪を靡かせた1人の男が立っていた。 2人の憧れの船長。 ウタのお父さん。 ルフィの麦わら帽子の持ち主。 シャンクスだ。 何かあったのだろう。 シャンクスも傷だらけだったが2人には関係なかった。 生きててくれるだけでよかった。 2人は大粒の涙をボロボロこぼした。 「娘に剣を使うなんて!海賊の風上にも置けないぞ!シャンクス!」 他に聞きたいことがあるのに。 「今のは愛の鞭って奴だ!」 「鞭じゃなくて剣だったぞ」 「愛だなんてぇ〜私を愛してるってことシャンクスゥ」 ウタは泣きながらシャンクスに抱きついた。 「シャンクスゥ」 ルフィもすぐにあとを追う。 懐かしい匂いが2人にこれは幻覚じゃないと教える。 「2人ともまとわりつくな…いや、今日くらいいいか…」


2人は枯れていたはずだった涙が止まらなかった。 シャンクスにしがみついて離れなかった。 するとシャンクスが茶化す。 「どうしたんだ?2人とも手なんか繋いで随分と仲良いじゃねぇか」 「ちょっと!シャンクス!そんなんじゃないからね!これはその…」 ウタが照れながら返す。 「もしかして…もうやっちまったのか?」 さらに煽るように重ねらるシャンクス。 「「…」」 2人は黙ってしまった。 「おい!まさか!本当に!?冗談のつもりだったんだぞ!」 「悪りぃシャンクス」 「いくらルフィでもゆるさねぇ!さっきより強いの行くぞ!」ゴツン! 「いてぇ!なにすんだよ!」 「ハハハ!お父さんへの挨拶より先だったんだから仕方ないよ!」 「うぅ〜」 あの時のようなしあわせな時間が静かに流れていた。


「でもよ…どうやってここまで来たんだ?」 「そうだよ…カイドウって人にやられたんじゃ…」 「おいおいおれがあんな奴に負けると思ってたのか?」 「そりゃシャンクスが負けるわけねぇとは思ったけど」 「まあ大破局噴火が起きた時は焦ったけどな…一歩遅れたら死んでた!だーはっはっは!」 「「笑い事じゃない!」」 「それでこの後どうするの?」 ウタは恐る恐る問いた。 「もう置いていかないでほしいの…」 「おれも連れて行ってくれぇ…ひとりぼっちはいてぇのより辛えぇ」 シャンクスはしばらく黙ってから口を開く。 「悪りぃな2人ともお前らの頼みはまた聞いてやれそうもない」 「なんで!?」 「おれももう長くなくてな…」


「最後にお前らを一目見たくてなぁ」 そう呟くシャンクス。 ウタは震えながら口を開いた。 「嘘だよね…?嘘って言ってよ!」 ルフィが続く。 「やっと会えたのになんでそんなくだらねぇ嘘つくんだ!ぶっ飛ばすぞ!」 「死んじゃ嫌だよ!そしたら私たち本当にどうすれば良いんだよ!もうわかんなくなっちゃうよ」 騒ぎ出す2人をシャンクスは静かに制した。 「おいおい…おれだって心臓ひとつの人間1人…次の時代に若い命2つも送ればお役御免でいいだろう」 再開した嬉しさで気づかなかったがシャンクスの傷は酷かった。 生きてるのが不思議なくらいだった。


「先に逝く身で申し訳ないんだが頼みがある」 「嫌だ!シャンクスが死んじゃうなら私も死ぬ!」 「おれだって死んでやる!」 もう2人はシャンクスの話を聞くつもりはない。 するとシャンクスは腰にかけたグリフォンをウタに渡した。 「ルフィにだけ帽子を預けるのは不平等だ…ウタお前にはこれを預ける」 あまりの気迫にウタは受け取るしか出来なかった。 「いいかよく聞け2人とも」 2人はようやくシャンクスの話に耳を傾けだす。 「新世界もワンピースも無くなって海賊時代は終わりだ!新しい時代だ!でもこれはお前らの新時代じゃないだろ?次はお前らが塗り替えろ! それが終わったら預けたものを返しに来い!それまでは絶対来るんじゃねぇぞ!」 そういうとシャンクスは静かに倒れた。


シャンクスが倒れた瞬間だった。 ルフィが泣き崩れる。 「シャンクスぅううう!」ガクガク 取り戻した正気が崩れ去った。 とっくに来ていた限界。 ルフィの繋いだ手の握る力がドンドン強くなる。 本当にウタ以外に縋るものはない。 ウタがいなくなったらもう死んでしまう。 消えてしまう。 この手は絶対離さない。 ウタもそう思ってるはずだとルフィは考えていた。 しかし、ウタはその手を離した。


2人の手が離れたのは再会して初めてのことだった。そして… パシン! 離した手でウタはルフィの頬を叩く。 「えっ?」 瞳いっぱいに溜めた涙をこぼさないように必死こらえているウタ。 「ねぇ!ルフィ!泣くの辞めなよ!これから私と作るよ!新時代!」 これでもかと言うくらい大きな声で叫び始める。 「でも…でもよぉおれは弱いし」 泣き言をいうルフィ。 「強くなればいいじゃん!私もずっとずっと強くなるから!!」 不安がないといえば嘘だった。 不安しかなかった。 託された剣に言われている。 ここで止まるなって。 小さい頃は危ないから良く触るなって怒られたその剣を託されたんだ。 もう子供じゃいられない。 「でもよぉ…」 「ルフィは兄弟と仲間との約束でもあるんでしょ!」 「でも…どうやって」 「大丈夫!きっと出来るよ!私は最強だから!アナタと最強だもん!何度でもいうよ!アナタと最強だから!」


「だから出来るよ!」 「うん」 弱々しいけど確実に前を向いたルフィの返事が帰ってくる。 「悪党吹っ飛ばして!」 「うん」 「もう寂しくない!ルフィがいるもん」 「うん」 「だから泣くの辞めてさぁ行くよ」 2人の目から大粒の涙がこぼれていた。 ワンワンと大声を出していた。 でも2人は決して泣いてはいない。 いずれ偉大な2人の兄弟に、世界一の大剣豪になる男に、世界中の海図を描く女に、勇敢なる海の戦士になる男に、オールブルーを見つける男に、なんでも治せる万能薬になるトナカイに、歴史の真実を解き明かす女に、夢の船をつくる男に、鯨と再会する骨に、国を滅ぼされても歌姫を育てる男に、 そして何より赤髪の偉大な男に夢を託されたものは 決して泣かないのだ。


ーニ年後ー アラバスタ王国 比較的平和に復興していたはずの国だがまた侵略の魔の手が襲いかかってきていた。 「ピロピロピロピロピロピロ!例の大噴火から二年!海軍本部がなくなってもしぶとい政府を落とすため古代兵器を探したがこの国にあるはずだ!サァ言え!」 「ウホウホ!」 「知らないわよ!そんなもの!」 「おっとそんな口聞いていいのかな?ビビ王女東の海を襲った怪物たちをこの国に落とすことくらい容易いんだぞ!」 「ウホホー!」 「うぅ…」(助けて…ルフィさん!)


「どうやら口を割る気はねぇようだな!やれぇ!」 大勢の兵隊たちがビビに襲い掛かる。 「ゴムゴムのガトリング!」 「ふん!」 良く伸びたゴムの拳の乱打と無数の斬撃が兵隊たちを蹴散らした。 「悪りぃ遅くなったビビ!」 良くしる麦わら帽子の良く似合う青年が見知らぬ1人の女性を連れて現れる。 「あんたもルフィのお友達なんだ!かわいい!私はウタよろしくね!」 ぎゅっとビビを抱きしめるウタ。 「おいウタ!今はそんなことしてる場合じゃ…」 「不安にはハグが一番なの!ルフィにも良くしてあげてるでしょ?」 「おい!お前!」 「にししー」


「ルフィさん…!来てくれたのね!」 「待ってろビビ!あんな奴らおれとウタですぐぶっ飛ばしてやるから!」 「安心してね!」 マイペースで会話を続けるルフィとウタに痺れを切らしたインディゴが叫ぶ! 「なにがぶっ飛ばすだ!どこの誰だかしらねぇが消し炭にしてくれる!」 「ウホホホ!」 スカーレットもインディゴに続く。 「ケミカルジャグリング!」 「ウホホォ!」 無数の薬品とゴリラが飛んでくる! 「そんなもん二年鍛えた俺たちに効くか!ゴムゴムのォレッドホークゥ!」 「神避!」 ルフィとウタのあっという間に攻撃に科学者もゴリラも完全ノックアウトだった。


「なんだよ?ウタ!能力使わなくていいのか?」 「この後のシキってやつ倒すためにも体力残しておかないと」 「ふーん」 「ルフィは能力使っちゃったから私の勝ちだね!」 「なんだと!今のは勝負じゃねぇだろ!」 「出た!負け惜しみぃ〜これで私の325連勝だね!」 もう2人は手を繋がなくても大丈夫 だってココロがつながっているから マイペースな2人の会話にビビが割って入る 「2人とも怪我して血出てるけど大丈夫?」 「え?」 互いは相手の腕に少し擦りむいたような傷が出てそこから少量の血が出てるの確認すると みるみる青ざめていった…… happy end?


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