もしもの話
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「うは~すっげェ賑わってるなー!!」
「おらこんなに賑やかな所にくるの初めてでやんす!!」
ワノ国を支配していた四皇カイドウと将軍オロチが打ち倒され、花の都ではお祝いムードの大きな祭りが催されていた。
現在ルフィ、ナミ、そしてワノ国で出会った少女お玉は一緒に行動して、祭りの中を練り歩いていた。
「ほらほらお玉、あんまりはしゃいでるとはぐれるわよ?」
そう言うとナミがお玉と手を繋ぐ。すると少し逡巡した後、お玉はもう片方の手でルフィの手を握った。
「えへへ…」
「何お玉?コレがそんなに嬉しいの?」
ナミに尋ねられたお玉はおずおずした様子を見せると、おもむろに口を開く。
「こうして二人に手を握っててもらうと、なんだかお父ちゃんとお母ちゃんに手を引いてもらってるみたいで嬉しいんでやんす…」
「お玉…」
お玉はまだ8歳の少女だが、両親はすでに亡くなり、彼女自身これまでワノ国の悪政の中で相当の苦汁をなめてきたのだ。その境遇を想うとナミの心が痛み、自然とお玉の手を力強く握り返す。
「おナミちゃん…?」
「今日はいっぱい楽しみましょ!」
ナミが笑いかけるとお玉も元気に頷く。
「あ、見ろ!!うまそうな食いモンの屋台がいっぱいあるぞ!!」
食い物を発見したルフィは一目散に屋台の方へ走っていく。
「あ、アニキ待ってほしいでやんす~!!」
慌ててお玉がルフィの後を追う。
まったく、こうなるとルフィの方が子供っぽく見えるわ…。
そんな感想をいだいていると、ふとナミは先ほどのお玉との会話で、故郷のフーシャ村にいる母親のことを思い出す。
お母さんか…ベルメールさん元気にしてるかな…?
ナミと姉のノジコ、そしてベルメールの間には血の繋がりはない。だが、本当の親子と同じかそれ以上の愛情でベルメールに育てられたナミにはそんなことは些細なことであった。
私も自分の子供が出来たらベルメールさんみたいな立派な母親になれるかしら?
さっきみたいに手を繋いで子供と一緒に歩いたりとか。
できれば伴侶となる人物がほしいなと思ったところで、目の前で焼きそばを頬張っているルフィの顔を見つめる。彼とは物心つく前から共にフーシャ村で育った間柄だ。気心の知れた相手だし、何より一緒にいて凄く楽しい。
…仮にルフィと結婚するならやっぱ式はフーシャ村でやりたいわね。
親しい人達いっぱい呼んでベルメールさんやノジコにお祝いしてもらったりして…。
皆に祝福される自分の姿を無意識に想像していたナミは、急に我に返る。
ってなんで私はこんなこと考えてんの!?
さっきまで想像していたことが恥ずかしくなり、顔を赤くしながら頭を振った。
止め止め、こんなもしもの話考えたってなんになるのよ。
ナミが一人悶々としていると、ルフィ達から声をかけられる。
「おーいナミ、お前もこっち来いよ!うめェぞコレ!」
「おナミちゃ~ん!一緒りんご飴食べようでやんす~!」
無邪気に祭りを楽しむ二人を見て、ナミはフッと笑いながら彼らのもとへ歩いて行く。
「はいおナミちゃん!」
両手にりんご飴を持っていたお玉は片方をナミに手渡す。
「ありがとうお玉」
りんご飴を受け取ったナミは再びお玉と手を繋ぐ。
ま、私達の野望が達成されたらもう一度じっくり考えてみようかしらね。
「よーし!次は何食おっかな~!」
「おらかき氷が食べたいでやんす!」
「慌てないの。また皆で手を繋ぎながら行きましょ」
そんなことを話ながら三人は祭りの喧騒の中へ消えていく。
四皇を倒し、ひとつなぎの大秘宝を手に入れるための足掛かりを手にした今、野望が達成される日はそう遠くはないかもしれない…。