もしもの世界 剣契
月が雲り路地裏を隠すある日
月を見上げる巨大な笠を被り顔に大きな傷跡がある男がいた
「……黒い雲が垂れ込めて来てる、雨が降りそうだ」
そう静かに呟き返り血を拭き、刃を納め薄暗い路地を進む
僅か30歩、歩けば人の死がある路地を進む、あちこちで罵倒、悲鳴、そして哄笑
「お頭殿!」
今人を切り捨てた金髪の返り血に塗れた少女が嬉しいそうに口角を上げ話しかけて来た
「…すんすん、お頭殿随分斬ったようですね!月と雲そして血の匂いそれも沢山!」
「ああ…私も斬っていました見てください魔法少女です!」
少女は指さすそれは…死屍累々たる有様だった老若男女問わず急所を的確に斬られ死んでいる、首を斬られた少女がこちらを虚ろの目で見てくる あの日を思い出す
「…見事だ」 黒い靄がちらつく
「そうでしょう!こいつらの首を売れば暫く家族達を食わせるお金が出来ますね!…あっ!そうだ最近近くで美味しいパジョンとお酒がある店が出来たんです!」
「行きませんか?いや行きましょう!」 見えない鎖が腕に縛りつく
私はそれを…
「…ああ、ついて行こう土産を買えば家族が喜ぶ」 断ち切った
傷だらけで返り血に塗れた男が道を進む、未練を断ち運命を斬り鎖を斬り捨て“剣の流れ”に従い男は進む
それを黒い靄は見ていた