もしもの世界線
禪院晴作者これは交流会編の続きです。口岡作者さんが書いてくれたものとは別世界だと思ってください。
明人は縛りと自身の術式により、大幅に呪術センスや肉体が強化されていた。今の宿儺に勝てる可能性は低い。何故なら彼はまだ指三本分なのだから。
明人「チッ!(狐が邪魔だし、禪院晴の魂霊呪法で体が痺れる!)」
だがそれを補うように晴の式神稲荷が邪魔をする。稲荷は自立型の式神。自身でも術式を使えるが、晴も同時に使える。しかも晴はこの場にいない為、いつ術式が発動するか分からない。実に厄介だ。
稲荷「霜凪」
明人「(氷…足止めか!)」
明人には術式が通りにくい。そのため氷凝呪法などで足止めされていた。晴は魂霊呪法で神経を潰そうとはしているのだが、明人の縛りのせいでなかなか上手くいかない様子。
晴「(面倒くさいなぁ…)ちょっとトイレー」
歌姫「もうちょっと可愛く言ってよ」
ここで唱えてたら流石にバレてしまう。その危険性からこの場を離れることにした。トイレと言いつつ、自室に戻った晴はまた集中する。
晴「さぁて、どーしようかなぁ。勝てそうにないし…逃げるか。でもあれ難しいんだよねぇ…」
晴には策が一つあった。それは無下限呪術である。五条悟は晴のことを好いているのか、聞けばスラスラと教えてくれた。そしてそれで瞬間移動ができるのだ。本当は高速移動だけど。だがこれはすごく難しい。いけるかどうか…際どいところだ。
晴「私ならできる…きっとね」
場面変わって、明人は宿儺と稲荷を着実に追い詰めていた。やはり縛りのデメリットをなくす術式は強いと言える。
稲荷「構築術式」
明人&宿儺「?」
生み出されたのは簪。何故それを生み出す?明人の思考が一瞬、それに向いた。そして次の瞬間、宿儺が稲荷から渡された簪を手にした。そしてそのままどこかへ飛ばされるように消えた。
明人「!(しまった!)」
そして晴のところへ宿儺は引き寄せられた。だが呪力消費が大幅過ぎたのか、その場にへたり込んだ。稲荷は消え掛かっていた。無理もない、明人相手に相当消耗したからだ。しかし奴の核は晴の影の中。晴の容体が良くなればすぐに元通りだろう。
宿儺「晴」
晴「大丈夫、疲れてるだけ…」
宿儺に抱えられた晴は腕の中で眠ってしまった。
五条「…で、なんで先に戻ってきてんの?」
宿儺「飽きた」
疲れ果てて眠った晴の見舞いにやってきた五条と宿儺が睨み合う。団体戦は呪霊達の乱入で勝負はつかなかった。
楽巌寺「五条、そこを退け」
五条「おじいちゃんやっぱりボケちゃったの〜?ここは晴の部屋だよー?」
五条が茶化すように言った。楽巌寺嘉伸は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。
楽巌寺「あっとるわ、両面宿儺並びに禪院晴。口岡明人から全て聞いた。呪詛師として連行する」
「は?」と五条と宿儺の口から出た。「んー…」と晴、やっと目が覚めたようだ。
晴「何が何って?」
五条「あー、かくかくしかじか」
呪霊乱入騒動と現状を伝える。だんだん状況がわかってきたのか、晴が口を開く。
晴「証拠はありますか?」
楽巌寺「…」
証拠などないだろう。虎杖と宿儺を映そうとしなかったらのだから。誰も見ていない。
晴「無いですよね。それに私が裏切ったとしたら、父様との縛りで私は死んでるはずです」
楽巌寺「…」
縛りが発動しない理由、それは呪術界が晴にまだ呪詛師認定をしていないから。それが直毘人の耳に入るまで、晴が死ぬことはない。どうやらそこまで縛りの内容を知らないようだ。
晴「それに…私が死ぬことで一番困るのは貴方方では無いのですか?呪術師としてもですが、教師としても、ね?」
楽巌寺「!」
どうやら図星のようだ。特級術師の晴が死ぬことは大きな損害となる。そしてその損害を被るのは五条悟などの特級、または一級術師になるだろう。そして教師として京都校はともかく、東京校メンバーに勉学を教えているのは晴だ。いなくなれば次の人材を見つけなければならない。非術師に呪術のことを公表していない今、それは困難だろう。
結果、証拠不十分として宿儺と晴の呪詛師認定は無しになった。
晴「さーて、みんなの調子は?」
五条「恵が一番酷いかなぁー。あとは元気そう」
「そっか」と言い部屋を出る。向かったのは家入硝子のところだった。
晴「硝子さん」
家入「お、晴。やっと目が覚めたか」
晴「ごめんなさい寝ちゃいましたー。それでもうみんなやっちゃいました?」
家入「まだ京都校の子だけ」
晴「じゃあ東京校の子達は私やります!お疲れでしょうから、ゆっくり休んでくださーい!」
家入「はぁ…お前ってサイコー」
晴に抱きつく家入。「お疲れ様です」と言い背中をポンポン摩る。家入と別れたあと東京校メンバーのところへ。
晴「おっはよ〜、怪我の手当てにきましたー」
虎杖「あ!先生!」
明人「(なんでここに?!)」
伏黒「禪院先生、今までどこ行ってたんですか」
晴「いや〜、実は疲れて寝ちゃったんだよねぇー。恥ずかしい」
釘崎「先生忙しいもんね。大丈夫?」
晴「平気だよ。心配してくれてありがとう。さ、みんなー!怪我治すからこっちおいでー」
まずは伏黒、虎杖、釘崎。その後に来た四季組と二年生達も治し終えた。
晴「あとは明人くんだけ」
明人「僕はいいです。怪我してないので」
晴「本当に?」
明人「…はい」
ジリジリと近づいていく晴。その風景を不思議そうに見てる東京校メンバー。
晴「嘘ばっかり、怪我してるじゃない」
明人の頭を撫でる晴。怪我はまだ残っていたらしい。晴曰く。軽傷だが、治す。
晴「さて、みんな治したから。行くわね」
満足したのかトコトコと歩いていく晴。それを見送る皆、そして伏黒が何かに気づく。
伏黒「これ…血か?」
床についた一滴の血。それが誰のかは分からない。
釘崎「血?なんでそんなのがここに?」
パンダ「もしかしたら、晴は相当無理してるんじゃ無いか?」
虎杖「先生が?!」
狗巻「しゃけしゃけ」
真希「あいつの治し方ちょっとちげぇからな」
虎杖「?反転術式じゃねぇーの?」
パンダ「晴は魂霊呪法で治すんだ。だから俺でも治るぞー。でも、もしかしたら反転より効率悪いのかもな。血が出るくらい無理してるとなると」
ガシャン!と音を立てた。明人がマグカップを落としていた。「やられた…」そう呟いた。そして晴は自室に戻り、扉が閉まった途端、崩れ落ちた。
晴「はぁ…はぁ…上手くいったわ」
宿儺「晴…!目が」
晴「平気、縛りをしただけ…それよりも全部手に入った。心霊躁術、光学術式、解釈呪法、節句ノ候…そして、脱縛術式」
怪我を治すという名目の元、魂霊呪法で全員の魂に触れた。もちろん縛りにより明人の魂に触れるのは困難を極めたが、両目を犠牲にすることでなんとか触れることができたのだ。
そして晴は術式を使用した。禪院直毘人との縛り、先ほどの縛り、そして天与呪縛にさえその術式は作用した。
晴「宿儺…私、見えるわ!貴方が見える!そうよ…呪印まで全部」
宿儺「ケヒッ…そうか!やはりお前は俺の嫁に相応しい!」
二人は自室で、唇を交わしベットに倒れ込んだ。