もう一度見せて

もう一度見せて


記憶を弄れるようになったIFミンゴの、何かこういう事もあったんじゃないかくらいの話

終始IFミンゴの独壇場


ドンキホーテ・ドフラミンゴ

元天竜人であり、己の手で滅ぼした今は無きドレスローザの元国王であるこの男は他者を虐げる事が恐らく誰よりも得意だろう

特殊なルートで手に入れたであろう映像電伝虫に記録された映像を、己の膝の上に乗せているトラファルガー・ローに見せていた

壁に映し出される映像は、かつてのハートの海賊団のクルー達がドフラミンゴにより惨殺される光景

 

「あ゛あ゛ぁあァああああアあ゛ァ゛!!!」

 

糸で唯一拘束されずに自由に動かせる左腕を必死に伸ばし、過去の出来事であり、もう既に終わった事象と理解しているが無意味に映像に映るクルーを掴もうと動かす

 

「止めろ!!!止めろォぉおおおおああああァア゛あ゛あ゛あ゛!!!」

 

零れる涙を拭う事も忘れて必死に止めようとするローのその姿に、ドフラミンゴは愉悦に満ちた笑みを浮かべる

辺り一面の血の海と、もう動かないクルー達だったその残骸をしばし映した後に再生を停止する

 

「あ、あァ……あああ゛あ゛…………」

 

伸ばしていた腕がダラリと力無く降ろされる

 

「フッフッフ、ローどうだった?お前の船員の死に様は」

 

糸の拘束が解かれるが言い返す気力も起きないローは呆然と壁を見つめていた

 

「もう一度見せてやるよ」

「!!?」

 

その言葉に反応したローはすぐにドフラミンゴに振り返る

相変わらずの笑みを浮かべたその表情に総毛立つ

あんなおぞましい映像をもう一度?と、問うよりも早くローは逃げようと体を動かして床に体を投げ出す

しかしながら地面に倒れたと同時にその背をドフラミンゴに踏みつけられる

 

「あがッ!!」

「おいおいロー、そんなに焦るな。あァそうだ、良い事を教えてやるよ」

 

その言葉と共に笑みを深くするドフラミンゴ

 

「今日、この映像をお前が見るのは次で16回目だ」

「…………は?」

 

言葉の意味が一切理解出来なかった

今見終えたあの映像を見たのはこれが初めてだ

確かにクルーの身に付けていた衣類等はここに捕らわれて間もなくに渡されていたが、死んでいたと知ったのは今の映像を見てからだ

だがこのドフラミンゴという男、ローには意地の悪い物言いの仕方はしても存外嘘は吐かない

 

「フフフ、フフフフフ!!まったく何度言ってもいい顔をするなお前は。忘れたか?俺が最近使えるようになった技があっただろう?」

「え?あ……あ!!!」

 

血の気が引く感覚がした

今まではただ糸を生み出したり、覚醒した事により周囲の物を糸に変えるといった技だったが、応用に応用を重ねたドフラミンゴは遂に本来形の無い物に糸という形を与えて扱う事が出来る様になった

それこそ『記憶』のような物ですら

その時ローは理解した

本当はもう既に、それこそクルーの身に付けていた物を渡された時点で本当は彼等が既に死んでいる事を知っていたのだと

だがその事実も再び失う事も

 

「い、やだ…ヤダ!!!止めて!!!お願いもう止めて!!!抜かないで!!!もう見せないで!!!」

 

自分を踏み付けるドフラミンゴから逃げようと必死に体を動かす

しかし痩せ細り弱った体での抵抗など、ドフラミンゴには全く意味を成さない

ドフラミンゴは指先でローの頭に触れる

 

「摘出糸”エクストライト”!!」

 

手を離された瞬間、ローの頭から青い綺麗な糸が生え、そうしてその先はドフラミンゴの指先に繋がっていた

糸が完全にローの頭から引き抜かれると、ローはそのまま気を失った

それを確認すると押さえつける為にローの背に乗せている足を退け、グイと引っ張り持ち上げる

 

「ロー、おいロー、そろそろ起きろ」

「……ん、ぁ?」

 

目を覚ましたローを自分の膝の上に乗せてやれば酷い脱力感を覚えながら大人しくしているローに、ドフラミンゴは楽し気に話し掛ける

 

「なァロー、今日はお前に良い物を見せてやるよ」

 

そう言ってドフラミンゴが操作する映像電伝虫は、本日16回目の映像を再生する

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