もう一つの戦い、終幕
割れんばかりの大歓声がドレスローザを包む
それは戦いの終わりを、勝利の喜びを告げるものだった
そんな歓喜の声が人気(ひとけ)のない街の片隅にも届いたのか、サボとゾロは小さく笑みを浮かべた
その時、
「ハァ…トドメは、ささねェのか…!?」
2人の背後から息も絶え絶えな声が聞こえた
声の主は先程まで戦っていた男、ジーザス・バージェスだった
「必要ねェ」
「ああ。全て、終わったみてェだ」
サボとゾロはバージェスの方は振り返らず、そのまま歩き出す
だがバージェスはゆっくりと立ち上がり、2人の背中に不敵に笑う
「ウィ…ハッ…ハ……!!甘ェなァ……!!お前ら“兄弟”は……!!」
バージェスの言葉に2人の足が止まる
「“バナロ島”でウチの船長に敗北したエースが…海軍に引き渡される前に言ったセリフを聞きてェか?」
振り返った2人にバージェスはニヤリと笑う
「ウィ…ハッハ…聞いたら笑っちまうぜ…!?ハァ…てめェが処刑されると悟ってエースはこう言ったんだ」
『兄弟には、黙っててほしい』
その瞬間、サボとゾロの空気が変わった
だがバージェスはさらに饒舌になる
「バカな男だ!!てめェの命の価値を知らねェ。“火拳のエース”が海軍に捕まりゃ、世界中に報じられるさ……!!軍は奴の命を120%利用…」
そこでバージェスの声は途切れた
「「もういい……喋るな……!!」」
バージェスの顔面をサボの“爪”が捕え、太い喉元にはゾロの刀があてられていた
「おい、さっきからいろいろ喋ってたが…」
「あいつが…エースがどんな気持ちでこの世を去ったか…そんな事、あの日から夜の数だけ考えた!!!」
バージェスの頭がミシミシと悲鳴をあげ、刀の切っ先が軽く肌を押す
「お前に言われなくても全部わかる!!!」
サボはさらに“爪”に力を込めながら叫ぶ
だがバージェスは痛みに呻きながら後ろ手に短剣を構える
「お前らは後悔してんだろ…!!革命軍のNo.2に、麦わらの一味の船員(クルー)!!それだけの地位や力がありながら、兄弟を救いに行かなかった事を!!!」
直後、バージェスの短剣が飛び出した
「あの時、どっかで昼寝でもしてたのかァ!!?」
笑いながらサボを刺そうとするバージェスを確認すると、先程まで刀をあてていたゾロが離れた
同時にサボの“爪”がバージェスを解放する
だが次の瞬間、
「だから、もう後悔しねェ!!!」
「!?」
「“火拳”!!!!」
至近距離から放たれた炎の拳がバージェスを焼いた
「おれ達は別にいい……」
「けど”火炎”(エース)が、許さねェってよ!!」
炎の中から聞こえる絶叫に、2人は吐き捨てた