みんな集まれ♬ ギクシャクパーティー大決戦!!

みんな集まれ♬ ギクシャクパーティー大決戦!!



 臭気が立ち込めたアマタク空間に、風が吹いた。

 その風に運ばれて耳に届いたのは、懐かしい声。


「のどかぁ!」


 ピンク色のウサギが風と共にのどかの胸に飛び込んできた。


「ラビリン!?」

「のどか、会いたかったラビィ」

「私も…久しぶりだね、ラビリン」

「ラビィ…!」


 かつて共に死戦を潜り抜けたかけがえのないパートナー、ヒーリングアニマル:ラビリンを胸に抱き、のどかは喜びと、そして胸に抱えていた苦しみが和らいだのを感じた。

 でも……


「ラビリン、どうして、それにどうやってここに?」

「ビョーゲンズがバグスターウィルスと交雑して変異したって情報はヒーリングガーデンでも掴んでいたラビ。だからずっと警戒してたラビ!」

「ですが、初動が遅れて申し訳ありませんでした。のどか」


 新たな声が謝罪する。

 それは長身の女神のような美貌を持つ女性だった。


「あすみちゃんも来てくれたんだ」

「はい。ワープ空間をここに繋げるのに手間取りましたが、なんとか成功して良かったです」


 ビョーゲンズに対抗するために地球の意志が生み出した風の精霊、あすみ。

 その彼女の背後には風が渦巻き、そこに空間を穿つ穴が生じていた。

 その穴の向こうから、さらに懐かしい二人が姿を現した。


「やっほ〜、のどかっち。久しぶり〜♬」

「ひなたちゃん!」

「無事でよかったわ、のどか」

「ちゆちゃんも…!」


 かけがえのない戦友で親友である彼女たちのそばには、そのパートナーのニャトランとペギタンも居た。


「みんな…」


 懐かしい顔触れに近づこうとするより早く、のどかは、駆け寄ってきたひなたとちゆに抱きしめられた。


「のどか…事情は聞いたわ。あなたを独りで苦しめてごめんなさい」

「ちゆちゃん…」

「のどかっちは何も悪くないよ。だから、くよくよせずにガンガン行こ?」

「ひなたちゃん…」


 心から信じ合える仲間たちの温もりに包まれて、のどかの心に再び灯りが強く輝いた。


「うん。ありがとう、みんな。そしてお願い、私たちに力を貸して!」


 その言葉に、ラビリンたちは頷いた。


〜〜〜


 風と共にラビリンたちが駆けつけたその時、同じように空間を渡って現れた集団が居た。


「ゆい〜ッ!」


 光と共にアマタク空間に渡ってきたのは、犬のような耳と尻尾を持つ少女


「コメコメ!?」

「ゆい、会いたかったコメ〜!」


 その少女も、かつてのパートナーの胸へと飛び込んだ。


「コメコメ、あたしも会えて嬉しいよ! でも、何がどうしてどうなって!?」

「わかんないコメ!」

「そっかぁ〜わかんないかぁ〜じゃあしょうがないね」

「待って待ってゆい、それで納得しないでちょうだい。あとコメコメも、そんな難しい話じゃないでしょ」


 呆れ声と共に現れたのは、長身の男性。


「マリちゃんまで来てくれたんだ!?」

「シナモンから連絡を受けてね。だから事情はわかってるわ。当然、みんなも連れてきたわよ」


 マリちゃんことローズマリーが、自身が持つデリシャストーンを輝かせる。そこにワープホールが光と共に再び開き、二人の少女と二体のエナジー妖精が現れた。


「はにゃあ〜、なにここ、すっごいことになってる!?」

「らんちゃん!」

「くんくん……これが拓海先輩の臭い……💕」

「ここねちゃん…?」

「そうコメ、これは拓海の匂いに間違いないコメ、くっせーコメ💕」

「コメコメ!?」


 ヒープリ組の感動の再会とは程遠い、いつもの面子の集合。


 まあとりあえずこれであたしも戦えるから良いか、とゆいが頭を切り替えたところに、


「先輩方! 私も加勢します!」


 元気の良い声と共に青い影が舞い降りた。


「ソラちゃんまで!?」

「ヨヨさんの鏡を通じて事態は把握していましたが、手出しできませんでした。けれど、エルちゃんが頑張って私だけなんとかここに送り込んでくれたんです!」

「そ、そうなんだ…でもソラちゃんがいくらスカイランド神拳を使えても流石に危な──」

「私もプリキュアです!」

「そうなの!?」


 突然のカミングアウトにより判明したことで、これでこの場所に九人のプリキュアが集結した。

 さらに、屋上ヘリポートと屋内を繋がるドアが内側から破壊された。


「やれやれ、やっと開いてくれたか」

「門平さん、お手数かけてすみません。空間に入るのが精一杯で、ここのドアが壊れて開かないことを失念してました」


 スペシャルデリシャストーンで分厚い扉を破壊した拓海の父:品田門平と、その後に続いたのは電脳救急センターの医師、宝生永夢だった。


「父さん! 先生!」

「拓海、俺とマリちゃんでこのアマタク空間をデリシャスフィールドに上書きする。その間にみんなと一緒にアニマーンを浄化するんだ」

「アニマーンはバグスターウィルスの要素もある。浄化には僕も力を貸そう」


 永夢はそういって、懐から黄金色の大きなガシャットを取り出した。

 永夢のその顔つきが戦士のものに変わったのを見てとって、拓海は彼への信頼を高めた。


「わかりました、先生、父さん……ゆい、のどか先輩。俺たちも行こう!」

「うん、拓海!」

「私たちみんなの力を、合わせよう!」


 のどかの手にはヒーリングステッキが既に握られていた。そのステッキとラビリンが一体化する。


「プリキュア・オペレーション!」


 のどか、ちゆ、ひなた、あすみ、四人の周囲に地球のエネルギーが集結し、彼女たちを彩っていく。

 そして、


「重なる二つの花、キュアグレース!」

「交わる二つの流れ!キュアフォンテーヌ!」

「溶け合う二つの光!キュアスパークル!」

「時を経て繋がる二つの風!キュアアース!」


「「「「ヒーリングっどプリキュア」」」」


 不退転の決意で地球を癒す戦乙女たちが、空を駆ける。


「あたしたちも行くよ、コメコメ!」

「コメコメ的にはもっと昼ドラ展開が観たかったコメ」

「あ……匂いが薄れちゃう……」

「ここねもすっかり淫乱芸が板についてきたパムね」

「僕もリンちゃんとデートだったのに呼び出されて迷惑メン」

「はにゃあ!?お姉ちゃん二人が付き合ってるとか初めて聞いたよ!?」

「なぁゆい、変身はまだか? 私も空気読んで変身解除したんだが?」

「あまねちゃんは年長なんだからまとめてよ!? もおおお! せーので行くからね、せぇーの!」


「「「プリキュふるーアつデリふぁシャスびゅらタすンバイおパーティだーゴー!!!!」」」


「あ ま ね ちゃん !!」

「掛け声違うのに、せーのといったゆいが悪い」

「あたしのせい!? あっとと、にぎにぎ」

「コメコメ〜♬」


 ドタバタしながら現れたのは、最近、何でもかんでも分け合えば良いってもんじゃないよねとちょっと感じるようになってきた微妙なお年頃の戦乙女たち。


「今度こそせーので行くからね。せーの!」

「「「「デリシャスパーティープリキュア!!!!」」」」


〜〜〜


「なにやってんだアイツら……」


 デパプリ組のぐだぐだっぷりに頭を抱えるブラックペッパーVR。

 その横で、ソラがそのマントを遠慮がちに掴んで引っ張っていた。


「あの拓海先輩にお願いが…」

「どうしたソラ」

「今回ましろさん来れないんで、私、ソロです」

「あ、ああ…で?」

「そのぉ…寂しいんで一緒に…へ、変身………」


 ダメ、ですか? と上目遣いのソラ。


「……わかったよ」

「ありがとうございます!!」


 変身を解いた拓海がもう一度デリシャストーンとガシャットを両手で構えた、その横で、ソラもスカイミラージュとスカイトーンを両手に構えた。


「えへへ」

「なんだソラ、急に笑って?」

「拓海先輩とお揃いのポーズなので!」


 まぁ確かに両手アイテムは似てるな、と思いつつ別に変身ポーズに拘りはないので、ここはソラに合わせてやるか、と拓海は彼女の動きに合わせて変身アイテムを構え直した。


「ひろがるチェンジ、スカイ!」

「ブラックペッパー、大変身!」


「「ヒーローの出番です(だ)!!」」


〜〜〜


 色鮮やかな少年少女たちの眩しいヒーロー姿に、永夢は目を細めた。


「……リア充め」


 その顔には感情は既になく、冷徹な虚無を宿した目で、彼は黄金のガシャットを構えた。


「ハイパァァァ……大! 変! 身!」


 地獄の底から湧き上がったかのような低い響きと共に、全てを超越する完全無敵の仮面ライダーが出現した。


「ノーコンテニューで、クリアしてやるぜ!」


 自分もあんな風に女の子に囲まれた青春を過ごしたかったけれど過ぎ去った刻は決して戻らず、それゆえに自分の決め台詞に嫌な哀愁が漂ってきたことを実感しながら、宝生永夢(3◯歳独身)は仮面ライダーエグゼイドムテキゲーマーを身に纏い、空を駆けた。


〜〜〜


 街の空が虹色に染まった。

 それは展開されたデリシャスフィールドがアニマーンのアマタク空間と干渉した証だった。

 その怪しくゆらめく虹色の空の下、何十体もの巨大な怪物:アマタクミンが、9人のプリキュアと二人のゲーマーヒーローによって蹴散らされていた。

 身長数十メートルもの悍ましい怪物たちの周囲をプリキュアたちが閃光となって飛び交い、アマタクミンを翻弄し、拳を叩き込む。

 大地が鳴動し、ビルが崩れ、怪物たちが衝撃と共に空へと打ち上げられる。


「「「「プリキュアファイナルヒーリングッドシャワー!!!!」」」」


 チームヒープリの一斉砲火が宙を舞った数体のアマタクミンをまとめて浄化する。


「あれがヒーリングっどの力……のどかちゃん、やっぱりすごいや。でも、あたしたちも負けないからね!」


 ゆいが変身したキュアプレシャスは気合を込めて仲間たちに声をかけた。


「あたしたちも行くよ、みんな!」

「待って、その前に大事なことを確認したいの」

「スパイシー、急にどうしたの?」

「宝生先生と拓海先輩って、アリだと思わないかしら?」

「ホントに急になに言ってるのスパイシー!?」

「そうだよここねん、またらんらんのブログにナマモノカップリングSS投稿する気でしょ!」

「ここねちゃんそんなことやってたの!?」

「おかげでちゅるりんブログのフォロワー増えたから良いじゃない。新作投稿を期待する読者が多いのよ」

「これ以上らんらんのブログ乗っとるのやめて!?」

「そうだぞ、ここね。私からも苦言を呈させてもらう」

「あまねまでそんなこと言うの?」

「ああ、今日という今日は言わせてもらう。君はいつだって拓海を左側におくが、それは解釈違いも甚だしいとな!」

「そんなことないわ!荒々しく攻め立てる拓海先輩を読者は求めているのよ!」

「二人とも左右論争でらんらんのブログを毎回炎上させるのやめてよぉぉぉ!!」


「お腹いっぱいパーンチ!!」

「クリスティパンバリ…ああああ!?」


 プレシャス渾身の一撃が仲間をまとめて吹っ飛ばした。


「ほら、みんな立って立って、せーのでライマイやるよ。はい、せーの!」

「「「「プリキュア、ライトマイデリシャス!……ふぅ〜〜」」」」


 数十体のアマタクミンが昇天した。


「ねぇねぇフォンティーヌ」

「どうしたのスパークル?」

「あっちのチームなんかギクシャクしてない?」

「……ギクシャクってどころじゃないわね。……グレース、私ちょっとあの子たちに指導してくるわ」

「下手に関わらない方が精神衛生的に良いと思うよ」


 キュアグレースは苦笑を浮かべながらもこう続けた。


「あの子たちはあれで良いんだよ。みんな色んな意味で……ホント色んな意味で強い子たちだから」

「色んな、という部分に大きな含みを感じるわね」

「のどかっちもだいぶ苦労してんだね……」


 そうこうしている横で、数十体ものアマタクミンがまとめて崩れ去った。


 大量のアマタクミンが一瞬にして細切れになり、その破片が黄金の粉雪のように降り注ぐ。

 その中をムテキゲーマーが巨大な剣を片手に引っ提げながら歩いていた。

 ビルの影から新たなアマタクミンが姿を現し、足元のムテキゲーマーを踏み潰そうと脚を振り上げた。

 が、その足が振り下ろされるよりも早く、そのアマタクミンの頭頂にムテキゲーマーが移動していた。

 それはワープ移動ではない。この一瞬のうちに、アマタクミンの体内を切り裂いて頭上まで達したのだ。

 断末魔の悲鳴さえあげる間もなくアマタクミンが粉砕され、空中にムテキゲーマーだけが佇んでいた。

 ムテキゲーマーが後ろを振り返り、後に続く二人のヒーローに目を向けた。


「拓海くん、ソラちゃん。アニマーンへの突破口は開いた。このガシャコンソードに君のデリシャストーンとプリキュアの力を重ねてアニマーンに撃ち込むんだ!」

「はい、先生!」


 ムテキゲーマーが投げた巨大な剣:ガシャコンキースラッシャーを受け取りながら、ブラックペッパーVRとキュアスカイがアニマーンへと突貫する。


「拓海先輩! アニマーンの動きは私が封じます。その隙を狙ってください!」

「わかった! ゆい! それにのどか先輩!」

「拓海!」

「拓海くん!」


 キュアスカイが空中に佇むアニマーンに向けて拳を放つ。


「ヒーローガール、スマキパーンチ!」

「そんなパンチは俺には効かな──え?スマキ?」

「簀巻きです!」


 パンチと見せかけて、スカイの手にはブラックペッパーVRがガシャットで作り出した光のロープが握られていた。

 スカイはそのロープでアニマーンをぐるぐる巻きにする。


「しまった、性癖を見抜かれていたか!?」

「拓海先輩が教えてくれました。こうすればあなたは、進んで攻撃を受けたくなるって!」

「この一瞬で私の性癖を見抜くとは…ふふ、流石だな、品田💕」


 恍惚とした表情のアニマーン。その視線の先に、ブラックペッパーVRが迫っていた。

 その両脇にはキュアプレシャスと、キュアグレースが寄り添い、彼の持つガシャコンキースラッシャーに手を添えていた。


「あたしと」

「私と」

「そして俺たちの力、見せてやる。アニマーン!」


 三人の力がガシャコンキースラッシャーに注がれ、それは巨大な光の槍と化した。

 その槍を目にして、アニマーンの目が歓喜に震えた。


「なんと神々しい、これが品田の槍…💕」

「「「ヒーリングデリシャスペッパーゴッドランス!!」」」

「ご馳走様でしたあァァァ……グッバイ♬」


 なにやら満足気な笑顔と汚い喘ぎ声と共に、アニマーンはついに浄化されたのだった──



【次回、最終回】


──みんな、お元気ですか? 私は元気です。海外の学校でいろいろ大変なこともあるけれど、毎日が生きてるって感じです。


──俺……医学を習ってみたいんだ。父さんから受け継いだ治癒の力をもっと活かしたい……


──品田……ゆいをいつまで待たせるつもりだ、君は……



【最終回:アニマーンの真実】


「そういえば菓彩、お前どうやって屋上に入ってきたんだ?」


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