みんな、反撃の時間だよ

みんな、反撃の時間だよ

さっちゃんの人

目を覚ますと、そこは知らない天井だった。

重くなっている身体を起こし、周囲を見渡して自分のいる場所を確認する。

白く清潔に保たれた部屋や消毒液などの医療品が置いてある棚、いくつものベッドや閉じていないベッド同士を区切るためのカーテン。

病室だ。だが、詳しい場所は分からない。

そもそも、残っている最後の記憶は路地で力尽きたことだ。どうして自分の身体がベッドの上にあるのか、まったく見当がつかない。

そんな時、病室の扉が開いた。


「あっ……よかった、目が覚めたみたいだね」


入ってきたのは水色のマフラーを巻いた狼耳の生徒だった。



















「改めて確認すると、とんでもないチームですね。今の我々は」


サンクトゥムタワー内の会議室で、尾刃カンナは渡された資料に目を通しながら、顔を引きつらせていた。

この日、カンナも含め先生から招集されたのは現状の対アビドス穏健派として行動している面々だった。

カンナが代表として来たヴァルキューレ警察学校。

ミレニアムからはヴェリタス。

ゲヘナからは風紀委員会。

トリニティからは補習授業部。

矯正局からはFOX小隊。

これだけでも異色極まる面々だ。それに加えて、資料にはこの場にいない面々の名前も記されていた。


「七囚人の狐坂ワカモや清澄アキラとも協力体制を敷いている。それに加えてアリウススクワッドのリーダーも現在シャーレで保護中。今のような非常事態でなければ、我々が率先して確保しに行かなければならない面々です。我々が置かれている状況と合わせて、もう笑うしかないですね」

「“そうだね、改めて考えるとすごい組み合わせだ。でも、みんなの力を借りないとこのままじゃ最悪な結果に突き進むことになるからね。”」


カンナの疲れた笑顔に先生も苦笑で返しながら、手元のリモコンでスクリーンに投影されているスライドを変えた。


「“私達は今、完全に後手に回ってる。それもアビドスだけじゃない、他学校の対アビドス過激派にもね。どうにかして『皆』を止めないといけない”」


スライドには4つの円が描かれ、それぞれに『アビドス』、『過激派』、『穏健派』、『勇者PT』と記されている。その大きさは今の状況を表すようにアビドスと過激派が互角であり、穏健派がかなり小さい。そして過激派と穏健派の間に勇者PTが重なっている。


「“おそらくだけど、チャンスがあるのはアビドスと過激派による決戦時。そこで私たちも仕掛ける。最短距離でホシノたち上層部を私達が押さえなければいけない。”」


そう言ってスライドが変わる。そこにはマークしているアビドスの戦力と作戦の目的が映されている。


「“まず向こう側にいるRABBIT小隊をFOX小隊には抑えてもらう。ヒナには風紀委員会、ハナコと親衛隊については補習授業部の皆に担当してもらうね。ヴェリタスの皆にはアビドスの警備システムを落してもらう。そうして薄手になるはずのホシノの下へアリスたち勇者PTに行ってもらう。カンナにはアリスたちの護衛を、他のヴァルキューレの皆にはアリウス部隊の相手をしてもらうよ”」



それぞれの役割を確認した面々の表情がより引き締まったものへと変わる。



「“さあ、みんな反撃の時間だよ”」




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