真新しい手記・56

真新しい手記・56


新作だー!\太陽万歳!/

執筆お疲れ様です…!


『去る者、来たる者』


前回のあらすじ


・この夜の悪夢を狩り終えた後で


・ローとドフィ、カインハーストへ


・凪の夢の管理人と『継承』


・やっと伝えられた事。


今回は前回のお話の続き。

今回は悪夢を狩り終え、カインハーストへと向かうロー達を見送ったルフィ視点のお話。

語り部は勿論ルフィ。

参りましょう。



【ゆめのおわりとめざめのじかん】

・その時は、唐突にやって来た。


「おっ、そろそろだな……」


「エース?」


ルフィ達がローとドフラミンゴが帰ってくるのを待ってたら、エースは急に立ち上がってそう呟く。


つやつやした布で出来たマントが、ぼろぼろと崩れ始める。


「言ったろ、おれはもう生きちゃいないんだ」

「それでも最期、お前と一緒に戦えた」


「行っちまうんだな」


「ああ」

「ロシーのことは、お前に譲るさ」


すげえごっちゃりした服…身に纏っていた狩り装束が消えて、いつものエースらしい格好に戻る。

首のあたりについてた真っ赤な宝石だけが、ずっと残ったまま。


「サボ!ルフィを頼む」


「……任せてくれ」


昔よりデカくなった鉄パイプを背負い直したサボが、ゆっくり頷いた。


「なあ皆、あんだけの大騒ぎを起こした"鬼の血"なんてもんに、本当は何の意味もありゃしなかった」


Dにはもう不思議な力なんてほとんどないって言った、ローの話を思い出す。

海賊王の血だってみんな戦ったけど、そんなもんがエースなわけねえんだ。


"血そのものが生き物を規定する”


喋る獣がいた部屋のメモには、続きがあった。


「おれが本当に欲しかったものは、とっくにこの手の中にあったんだ」


"意志は生き物に奇跡をもたらす"


「おれの人生には、悔いはない」


人生に悔いは残さない。


サボが死んじまったと思った時に、エースが誓った言葉だった。


「お前は…自由になれたんだな」


泣きそうな顔で笑ったサボに、エースは、見たことねえ幸せそうな顔をした。


「――愛してくれて、ありがとう」



【てのひらにのこったもの】

・エースは笑ったまま、首元の赤い宝石だけを遺して消えた。


サボはなにも言わないで工房から道具を持ってきて、デュラに手伝ってもらいながら砕いた宝石を鉄パイプに捻りこんだ。

振ったら、エースのと同じ赤い炎が出てくる武器だ。


「貴公、彼の遺志を…」


デュラがなんか言いかけた途中であの光の壁がルフィ達を覆った。


ローが帰ってきたんだ。


「サボ!!」

「お前は話を聞いていなかったのか!!?」


「ロー!折角戻ってこれたのに、第一声がそれってのはどうなんだ?」


「黙ってろ…」

「"シャンブルズ"…」「"メス"!!」


おどけたサボから白い血がぽんと取り出された。

獣の心臓を抜いた技だ。


「助かった!事態が落ち着いたら、お前に抜いてもらおうと思ってたんだ」


「そもそも赤い月の夜に聖血を輸血するな」


青筋立てたローは、コラさんの半分に会いに行った時と変わんねえ見た目だった。

いつもの帽子が戻ってるから、そこだけはちょっと違うか。


「なんだ、聞いてたより変わりばえしねえんだな」


あんまローと仲良くなかったゾロが、いつも通りのローを見て言う。


「?」

「ローはローだろ」


「フッフッフ!!」「違いねえな」


ヘンな顔してるみんなを眺めてミンゴが笑った。

やっぱそう思うよな。


「"D"の血は、意志により規定される…」

「こいつは"トラファルガー・ロー"を望んだのさ」


「…それも知っていたのか?ドフィ」


「"そう気づいた"だけだ」


ドフラミンゴの言い分にうんうん頷いたルフィをローはジトっとした目で睨んできた。


なんでだよ。なんかこう、"かん"で気付くことってよくあるじゃねえか。


「細けェ話は後にしろ」

「ロシナンテをこれ以上待たせるわけにはいかねえからな」


「分かってる」

「"ROOM"!!」


ローが指を動かしたら、またでっかい光のドームが広がっていく。


「"シャンブルズ"!!!」



【いざ行かん、約束の場所へ】

・ぱっと景色が切り替わり、ルフィとローとドフラミンゴはひんやりした地下のような場所に移る。


真ん中のベッドにはコラさんが、近くの椅子にはねえちゃんが眠ってる。


「コラさんのとこ行くのか?」


「いいや」

「今のおれなら、夢にすら干渉できる…それで帰って来たからな」


今度は、ねえちゃんを囲めるくらいのドームがぽっと光った。


「"スキャン"…」「…"シャンブルズ"!!!」


ねえちゃんの指が、ちょっと動いた。


開きっぱなしだった灰色の目が、おれ達のほうを向く。


「…ロー?…ご友人様?」


「……ああ」


「ねえちゃん!!」


立ち上がったねえちゃんは、やっぱりローよりでっかかった。


「コラさんを起こしに行ってくる」


「わかりました」


いつもみたいに霧がかったみたいな声で答えたねえちゃんは、ミンゴを振り向いて狩人様って呼んだ。

そういやミンゴは起きてるねえちゃんと会うの初めてなんだな。


「遺志をあなたの力としましょう」


背の高いねえちゃんに、もっと背の高いミンゴが背中をかがめて腕を差し出す。


「少し近づきます」

「目を閉じていてくださいね」


ふわっと気配が散って、また集まる。


内側から燃えるみたいにして、ミンゴの力はどんどん引き出されていっていた。


「いってらっしゃい」

「皆さまの夢が、有意なものでありますように」


夢に乗り込むおれ達に、ねえちゃんは少しだけ笑ってくれた。



――向かうは『狩人の夢』



素敵な物語をありがとうございます…!


ローの、ロー達の帰還、まことにめでたい…!

エースとの二度目のお別れはやっぱり寂しいけど…でも、これでよかったんだって心から思える。そんなお話でした。


『始めるにはまず 終わりに辿り着かねばならない』


自分の好きな英語歌詞の曲の一節。

それを思い出したお話でもありました。


エースとのお別れ。

エースから告げられた言葉達にすでに涙腺が壊されかけますが、最期の「――愛してくれて、ありがとう」で決壊しましたね…

特にサボが、エースのこの言葉を受け取って彼を見送るというこの構図…寂しい、寂しいけど…なんて温かくて、愛おしい…


そしてエースの遺志と、エースが遺してくれた血晶石を得物に嵌めるサボ…

これもまた、継承なのでしょうね。

もういないけど、確かにここにいる。


で、ロー達の帰還と、しょっぱなからのバタバタ感にしんみりハートにも笑顔が溢れますね!

サボからポン!と取り除かれる聖血…

ローの「そもそも赤い月の夜に聖血を輸血するな」がご尤も過ぎる…でも輸血してないとサボはトゥールの悪夢に乗り込めなかったから…ゆ、許したって……?


帰ってきたロー、トレードマークのふかふか帽子も戻ってきてホッコリ。


ルフィとドフラミンゴの、


「?」「ローはローだろ」


「フッフッフ!!」「違いねえな」


のやり取りが好き過ぎる。

いつも『本質』をちゃんと捉えて話すルフィと、色々視えてる兄上だからこその反応なんだろうなって。

兄上の言葉にうんうんと頷くルフィをジト目で見るローも好きだし、なんかこう…勘で分かるじゃん?って思ってるルフィも好き。

ルフィよ…普通の人は君のように早々勘でよく気付くって事はあんまりないんやで…


そして場面は次に移り、コラさんと人形ちゃんが眠る大聖堂の地下室へ。


夢に干渉出来るようになったローは、自身の能力を駆使して現実世界の人形ちゃんのボディに、狩人の夢の『人形ちゃん』の精神をシャンブルズをする事で救い出す。

初見読破時に、成程!こういう手があったか!と膝を叩きましたね!

現実世界にもボディがある人形ちゃんならではのギミックというか描写と構築の妙ですね…!


現実世界に降り立っても、人形ちゃんは人形ちゃん。

挨拶とロー達とのやり取りも早々に、早速狩人様へのおつとめを果たす姿に「ぶれねぇな…流石人形ちゃん」となるなど。

何気にルフィの「立ち上がったねえちゃんはやっぱりローよりデカかった」とのコメントにフフッ…となったり。

人形ちゃん2m近くあるもんね…ローも190cmはあるんだけどな…(隣の3mの兄上から目を逸らしながら)


そして狩人様恒例のレベルアップタイム

ルフィからはそういう風に見えるんだな…と実に興味深い。

「内側から燃えるように」って描写が凄く好きです。遺志を力に変える時、そんな風であるならとても素敵だなって。


さて次回は狩人の夢に殴り込みかな?

ちゃんとコラさんを説得して目覚めさせないとね!

人形ちゃんに「いってらっしゃい」「皆さまの夢が、有意なものでありますように」ってお見送りしてもらったし!楽しみですね!

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