ふてぶてしい♬×🍞 

ふてぶてしい♬×🍞 


【擬人化/NL/解釈違い】

「はぁっはあっ……もう、最悪じゃっ!」


スタッフ用の通用口を乱暴に開け、カウンター裏に入ってきた小さい姿。

体格だけ見ればティーンにギリギリなるかどうかという彼女だが、立派な成人だ。

俺の血縁、オルフェの娘のメロディーレーン。今日はお忍びのパンクファッションに身を包んでいた。


「聞いてくれ叔父上よ! せっかく一ヶ月前から予約していたバンドのライブに、妾のパパラッチが先回りしておったのだ! せっかくの妾の楽しみを拒みよって……インスタで放火してやろうか!」


まあまあ落ち着けよ。そういって、部屋の冷蔵庫に入れてるサービスのミネラルウォーターを差し出す。

メロはそのままキャップをひねると、イラつきをぶつけるようにラッパ飲みを始めた。


世間一般ではアイドル系で売り出しているメロだが、中身は勝負に対してストイックな成人女性そのものだ。メタルバンドが好きだというのも、アイドル売りしてる厩舎にとって好ましくないんだろう。

世間様のイメージと、ホントの自分が違ってくるのって辛いよな。俺にもまあ、身に覚えが無いことはねぇ……。


「……というかメロ、お前この通用口にどうやって入ってきた?」

「んくっ、んくっ……ぷあっ。ん、こやつが教えてくれた。逃げ足といえば、我が弟タイくん、黄金ジャック、玉無しツイッタラー、そしてコイツだからな」


そういって通用口から頭をかきながら出てきたのは……げっ、ウシュバの同期の大逃げ野郎! またお前か……。


「いやー、この前シゲピン姐さんから逃げてる時に偶然この通用口を見つけましてね、ハハハ……」

「ハハハじゃねぇよ。メロに変なこと覚えさせやがって。この色事師が」

「頼むってオヤジさん! こうやってお嬢さんを助けてやったんだし、次に使う時はG1クラスの部屋使いますから!」


まあ……メロを助けてくれたことには違いないんだろう。その条件で飲もうじゃねぇか……。

やれやれとため息を付くと、メロもどうやら落ち着きを取り戻したようだ。


「……ふう。せっかくオフだというのに、楽しみが潰れてしまった。なあ叔父上、今こやつのことを『色事師』と言っておったが、口は堅いか?」

「ん? おう……少なくともこの界隈ではな」

「わかった。よし、大逃げのお主よ。今宵は妾の相手をせい」

「……え?」


唐突なメロの発言に、大逃げ野郎はめちゃくちゃキョドっている。

そりゃそうだ。普段はナンパして女の子を連れ込んでは腰抜けにして返してるベッドヤクザが、逆ナンされてるんだからな。

そういえばこいつ、この前来たときも逆ナンだったな。最近の大逃げ野郎はそういう星の周りか?


「え、えぇ!? 俺、メロレンさんと、何をするって!?」

「察しろ。夜伽じゃ夜伽。妾は今日は別の『夜遊び』で気を紛らわすことにする、と言っているのだ」

「よとぎ……!? 夜の相手ってことスか……!?」

「妾は支度をしてくる。叔父上、いつもの部屋は空いておるだろう? こやつに鍵を渡してくれ」


そういってメロはスタッフルームに入っていく。

一方の大逃げ野郎は、呆けた顔でうわ言のようにつぶやいている。


「お、俺がアイドルのメロレンさんと一緒にお風呂、一緒にベッド、一緒に……ぶふふふふ……!」

「はぁ……お前、覚悟はできてんだろうな?」

「はっ、はいっ、オヤジさんの大事な大事な嬢さんッスからね! もちろんガラスを扱うように……」

「そうじゃねぇよ、『お前自身』の覚悟だっての」

「えっ? それってどういう意味……」


そう大逃げ野郎が言いかけた時、メロが大きなキャリーケースを引っ張りながらスタッフルームから出てきた。

とびっきりの笑顔で。


「んっふふー♪ 今日は何を使おうかのう、楽しみじゃ、楽しみじゃ♪」


口を開けて唖然とする大逃げ野郎に、俺は部屋の鍵を渡した。

部屋の番号を見て、こいつも察しだだろう。だが、ここまで来た以上、もう逃げられねぇぞ。

堪忍して付き合ってやるんだな、健闘を祈る。



* * * * *



このホテルには、まだ俺が使ったことがない部屋がいくつかある。

最上級G1クラスの露天風呂付きの部屋、回転ベッドの部屋。そして今俺がいる……SM部屋だ。


高速椅子、磔台、周りに壁のないむき出しの和式便所、鉄格子の檻……。

あはは……オヤジさんの趣味ってホントは怖いんスね、そしてメロレンさんも。


俺は口に枷をはめられ、手足をベッドに縛られて拘束されていた。

そりゃあもう、メロレンさんの手際は見事だった。俺が逃げられないぐらいに。

――あのキャリーケースの中身いっぱいに、まさか大量のSMグッズが入ってるとは思わないじゃんさ!!


「んっふっふ……♪ 大逃げが自慢のお主でも、こう縛られてはどうしようもできまい」


シャワーを浴びて出てきたメロレンさんは、一糸纏わぬ……いや、腰になにか着けている。

牡馬の股間に生えているやつを模したオモチャだ。


「さぁて……お主は今宵、どう嘶いてくれるのかのう? 楽しみじゃなぁ……♡」


あの、メロレンさん……に生えてるソレ、どう使うんっスか?


「ん? 『これ』をどう使うのかという顔をしておるな。もちろん……挿れるのじゃ、お主に♡」


そういってメロレンさんは、ベッドで動けない俺の上に跨ってくる。

やべぇよ、矢作さんでもここまでしねぇよ。


「さ、乾いたままでは痛いぞ。まずは舐め清めるんじゃ……♡」



     *



翌朝、ツヤツヤした顔のメロと、げっそりして歩き方がきごちない大逃げ野郎がエレベーターで降りてきた。

大逃げだって、掴まっちまえばもう垂れるだけだ。勉強になったろう。

こいつは可愛い孫娘に付き合ってくれた褒美だと、大逃げ野郎にはユンケルをくれてやった。


Report Page