ふたトラ×イス

ふたトラ×イス


メヒコシティの外れ、森の中から銃声が十数発響く。音の発信源には、銃を持った5、6人のオセロトルと一人の少年。

「よし、全弾当たっているな。次はもう2m的を遠くするぞ」

少年が古い的を回収し、新しい的を設置していると、後ろから声をかけられた。

「イスカリ、また訓練をしているのです、ね。立派なことです」

イスカリと呼ばれた少年が振り向くと、そこには一人の女がいた。

「トラロック神!お褒めに預かり光栄です。わざわざここまで来られるとは、何か御用でしょうか?」

イスカリが礼儀正しく返答をすると、トラロックはイスカリに近付き、耳元で囁いた。

「今夜も儀式を行いますから、ちゃんと準備しておいてください……ね」

その囁きを聞いたイスカリは、少し肩を震わせ顔を赤らめる。

「ふふ、いい反応です、ね。それじゃあ、私は神殿に戻ります」

満足気なトラロックが別れを告げた後も、イスカリは動かなかった。ふと目線を落とした時、抱えている射撃用の的を見て、ようやくぼうっとしていた頭が冴えた彼は射撃訓練の続きに取り掛かった。


イスカリは一年テスカトリポカとして儀式を受けている。彼が毎晩のように行っているのもその儀式のうちで、あらゆる快楽を享受することが目的である。やっていることは、有り体に言えば性行為だ。テスカトリポカが相手をする時は自慰をし、トラロックが相手をする時は、トラロックの側面が強ければ抱き、逆にウィツィロポチトリの側面が強ければ抱かれる、というものだ。

……だが、それは建前のようなもので、基本的にほぼ毎日ウィツィロポチトリに抱かれている。トラロックを抱いたことは二度あるかないか。そのため、彼はすっかり「この儀式ではウィツィロポチトリ神に抱かれるもの」という考えが染み付いていた。

そのための準備と言えば、当然肛門を慣らしておくことに他ならない。訓練が終わり、自室へと戻ったイスカリは、抱かれるための準備をする。

「んっ……ふぅ、ぁ、……」

幾度も男根を受け入れた穴は、儀式を始めたばかりの頃より遥かに慣らしやすくなっていた。最初は指を一本挿入し、ある程度ほぐれてきたら指を増やす。穴を広げるように指を動かし、柔らかくしていく。彼の体は、自身の指の動きを全て快楽として受け取っていた。

「あぁっ、んっ、はぁっ……♡」

最終的に三本の指を咥え込んだ彼の穴は、すっかり性行為への準備が完了した。更なる刺激を欲する本能を抑え、指を引き抜く。あとは儀式の時間を待つだけだった。


儀式はイスカリの部屋で行われる。ウィツィロポチトリがやって来るのを待つ時間は、彼にとって何回経験しても緊張するものだった。ベッドの上で待っていると、足音が聞こえ、扉がノックされる。

「イスカリ、入ります、ね」

「どうぞお入りください、ウィツィロポチトリ神……」

イスカリは緊張と期待から気が逸り扉が開く前に返答した。しかし、開かれた扉の先にいたのは──トラロックだった。

「ウィツィロポチトリ……?今日は久々にこちらで相手しようと思ったのですが……」

自分が早とちりをしていたことに気付き、訂正しようとするイスカリ。彼が何か発する前にトラロックが口を開く。

「もしかして……今晩も抱かれることを期待していたのですか?」

「そっ、その、えと……」

はっきりしない言葉とは裏腹に、体は「抱かれる」と聞いた瞬間肩を跳ねさせ、開発されきった奥をきゅんきゅんとさせる。

「いえ、どちらでもいいのですよ?これはアナタのための儀式。アナタがやりたい方を選んでください……ね♡」

そう言いながら甘い吐息をたっぷり耳にかけられ、いっそうイスカリの体が熱くなる。

「ぼ、僕は……」

儀式のため念入りに慣らした穴が肉棒を求めている。すっかり抱かれることを期待し受け入れる体制ができている。自分の体のことは自分が一番理解できるのだ。

「う…………ウ、ウィツィロポチトリ神と、したい、です…………」

羞恥で声が段々とか細くなっていったが、思いを口にする。

「ふふ、そうですか。いいわ、アナタの望む方で相手してあげます」

そう言うやいなや、トラロックはイスカリに口付けをする。唇を割り開き、口内を蹂躙するように舌を動かす。あまりの激しさに、イスカリは思わず目を瞑る。ほんの一分にも満たない時間だったが、二人にはとても長く、濃厚な時間に感じた。

「今夜も可愛がってあげます、ね……♡」

イスカリがキスの後に最初に見たものは、そそり立つ陰茎をイスカリに押し付けるウィツィロポチトリの姿だった。

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