ひろプリ with デパプリ パート3

ひろプリ with デパプリ パート3

空色胡椒

「やれ」

「キョーボーグッ!」

「はぁぁぁっ!」

 

最初に駆け出したスカイの拳とキョーボーグの拳が激突する。瞬間両者の動きが止まったことを合図に他の3人が動き出した。プリズムとバタフライは左右へ、ウィングは飛行能力を行使しキョーボーグの上空へ飛行する。

 

あえてキョーボーグの目の前を飛行することによりその視線を上に誘導するウィング。無意識のうちにその動きを追っていたキョーボーグの気がそれた一瞬にスカイが反対の手でキョーボーグの拳を横向きにはじく。

 

「キョッ!?」

「やぁぁっ!」

「ふっ!」

 

わずかに体勢が崩れたそのすきに、プリズムの放つ光弾がキョーボーグの体をさらに傾けさせるように連続で打撃を与え、ダメ押しとばかりにウィングがスカイへと振り抜かれていたのと逆側の肩へと蹴りを喰らわせ完全に片足立ちの状態へと持っていく。

 

「ナイス、二人とも!ひろがる!バタフライプレス!」

 

無防備になったキョーボーグにすかさず大技を叩き込むバタフライ。かつてカバトンたちの召喚したランボーグであればこれで十分浄化できていた。が、

 

「キョーボッ、グッ!」

「おっとと。さすがにこれじゃ浄化しきれないか」

 

全く効いていないわけではないものの、すぐさまキョーボーグは立ち上がってきた。これまでのキョーボーグに対してはマジェスティも加えてのマジェスティック・ハレーションで対抗してきたが、今回はそれができない。現状の上位技はアップドラフト・シャイニングとタイタニック・レインボーアタックの2つ。それが通じるかどうかもわからないが、それでもやるしかない。気を引き締める4人。

 

「キョーボーッグッ!」

 

キョーボーグが武器としてめん棒を取り出し、本来の招き猫なら備わっていない鋭利な爪をだして素早くめん棒を削っていく。即席で整えられた武器は、それでも先ほどのような調理器具としてのめん棒から大きく形を変え、とげ付きのこん棒のようになっている。

 

「それもうめん棒である必要ないよね!?って、うわわっ!」

「あっぶな!」

 

プリズムのツッコミも意に介すはずもなく、新しい武器をプリキュアめがけて振るうキョーボーグ。キョーボーグ自身の怪力も合わさりそれだけで強烈な風圧がプリキュアたちを襲う。それは特にウィングに影響した。

 

「っ、うわっ」

 

空中で回避のための行動をとったのはいいものの、後追いするかのように発生した風圧に飛行を狂わされる。姿勢を安定させるために一瞬動きが止まってしまうウィング。瞬間生じた隙をキョーボーグは見逃さず、もう片方の手でウィングをしっかりとつかんでいた。

 

「ぐぅっ」

「ウィング!」

 

すぐに助けようと飛び出すスカイだったが、再度振り抜かれた改造めん棒が迫る。咄嗟に蹴りを繰り出すことで直撃を避けることはできたものの、不安定な状態からの蹴りでは勢いを相殺しきることはできず、スカイだけが弾き飛ばされてしまう。

 

「スカイ!」

「プリズム、危ないよ!」

「えっ?あっ」

 

一つの動揺がまた次の隙を生む。スカイの方に気を取られたプリズムに向けてキョーボーグが手に握っていたウィングを叩きつけるように投げる。ウィングとプリズムが衝突し、その勢いを殺さぬまま遠くへ弾き飛ばされる。

 

「しまった!」

「これで持ちうる合体技も封じた。あとは残りを片付ければよい」

 

冷静に状況を見ていたスキアヘッド。先の幹部たちとの度重なる戦闘がもたらした情報により、プリキュアの手の内はある程度理解している。マジェスティが覚醒するまでの技についてはほぼ完全に知っているという自信があった。だからこそ早々に大技を放たせないために各ペアの片方ずつを攻めた。

 

「くぅっ。ヒーローガール!スカイパンチ!」

「スカイ、ダメっ!」

 

危機的状況を打破するためにスカイは自らの全力をもって浄化技を繰り出す。しかし焦りの中で放たれた技であるが故に、敵の不意を衝くどころかほぼほぼ正面からの攻撃。当然のようにキョーボーグは迫るスカイの拳に対し自身の改造めん棒を振り抜いた。

 

「ぐぅっ、くうぅぅぅっ」

「キョーッ、ボーグッ!」

「くあっ!」

 

先ほどとは違い武器を手にした事実は大きく、競り合いを制したのはキョーボーグ。まるで野球をするかのように振り抜かれた改造めん棒はスカイの体を大きく跳ね飛ばした。跳ね飛ばされたスカイの直線状には、

 

「やばっ!きゃっ!」

「あっ、バタフライ!大丈夫ですか!?」

「ったた。なんとかね」

 

丁度バタフライがいたため巻き込むような形で地面をバウンドする。幸い激突する前にキャッチする体勢になれたためバタフライもスカイもダメージは抑えることはできていたが、それでも苦しい状況がひっくり返るわけではなかった。

 

「終わりだ。プリキュア」

「キョーボーグ!!」

 

二人が立ち上がる前に仕留めてしまおうとキョーボーグが接近する。すぐにはバリアが展開できない状態のバタフライと、プリズムのように遠距離攻撃手段を持たないスカイ。相手の勢いを殺す手立てがない中なんとかしなければと立ち上がろうとする。

 

「キョー、ボーッグッ!」

「くっ」

 

だがそれより早くキョーボーグは自身の攻撃範囲内に彼女たちをとらえていた。再度振り下ろされる改造めん棒が、スカイとバタフライに迫り――

 

背後から緑の閃光がその攻撃を阻むかのようにキョウボーグと彼女たちの間に飛び込んできた。

 

「え?」

「何?」

 

飛び込んできた勢いのままキョーボーグの攻撃を跳ね飛ばす人影。予想もしていなかった攻撃に体勢を崩されたキョーボーグの腹部に黒いブーツによる蹴りが炸裂し、大きく後退させた。

 

スカイとバタフライの前にその人影が着地する。キョーボーグが跳ね飛ばされた際の衝撃で発生した風圧が、その背にある白とピンクのマントをなびかせる。白い帽子に黒い羽とピンクのハートのような飾り。水色、黒、金色をアクセントとして身に着けるその衣装はやはり白。

 

全然違う姿ではあるものの、顔が見えないその後ろ姿は、かつて幼かったころのスカイを救ってくれた憧れの人を思い出させた。

 

人影が振り返りスカイたちの方を見る。銀色の髪に目元を覆う黒い仮面。どこか見覚えがあるような精悍な顔立ち。その奥から覗く青色の瞳——スカイジュエルのような輝きをもった瞳が彼女たちに向けられ、その口からはまだ若々しい男の声が響いた。

 

「大丈夫か?」

「あなたは……ヒー、ロー?」

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