ひろプリ with デパプリ パート2
空色胡椒「改めまして、ソラ・ハレワタールです!」
「虹ヶ丘ましろです。ソラちゃんの知り合いに会えるなんて、びっくりだよ」
「僕は夕凪ツバサといいます」
「私は聖あげは、よろしくね!こっちはエルちゃん」
「えるっ」
「あたし和実ゆい!この前はありがとうね。こっちは幼馴染の拓海」
「自分の紹介くらいできるって。品田拓海だ」
「芙羽ここねです」
「らんらんは、華満らんだよ~。よろしくね」
「菓彩あまねだ。よろしく頼む」
とりあえず折角会えたのだからという理由で5人と5人、合わせて10人の団体となったソラ達は、近くのテラス席で改めて自己紹介を行っていた。
「でもびっくりしたよ。ソラちゃんはソラシド市に住んでるんだね?」
「はい。今はましろさんのおばあ様、ヨヨさんの家にみんなで住ませていただいてます」
「はにゃ~、にぎやかで楽しそうだね」
「うんうん、めっちゃ楽しいよ。みんなでいろいろやるのもアガるよね」
「みんな一緒かぁ~。家族みたいな感じなのかな?」
「そうですね。私にとってのもう一つの家族、と言っていいかもしれません」
「おっ、ソラちゃん嬉しいこと言ってくれるじゃん」
「えるぅ~♪」
「あ、指握ってくれた……かわいい」
「えるちゃん、ここねちゃんとも仲良くしたいみたいだね」
「子供は人の本質によく気付くらしいからな。きっと、ここねのやさしさにも気づいたのだろう」
「いっしょに、なかよくしよ」
「ん?私とも仲良くしてくれるのか?ありがとう」
「新しい友達がいっぱいできてよかったね、エルちゃん」
「皆さんはどうしてこの町に?観光ですか?」
「まぁそんなところだ。さっきのあの招き猫、俺たちの知ってる人がいろんな町に置いたらしくてさ。それを探しにいろんなところを巡ってるんだ」
「そうなんですね。皆さん一緒に旅をするなんて、仲がいいんですね」
「そうかもな。にしても、シェアハウスで男子一人ってのも大変じゃないか?」
「いえ、もう慣れました。そういう拓海さんも、男性一人のようですけど」
「似たようなもんかな」
料理を待つ間に会話が弾む。ソラが前に一度あったことがあるだけというほぼ初対面だというのに、不思議と互いのことを他人のようには思えなかった。盛り上がりながら話すことしばし、テーブルの前には各々の頼んだ料理がところ狭しと並んでいた。
「あ~む。う~ん、デリシャスマイル~!」
「デリシャスマイル?」
「そう!ご飯は笑顔だからね」
「いいじゃんそれ。美味しいも嬉しいも楽しいも、全部入ってるみたいでさ」
「このサンドイッチ、パンがすごくふわふわしてて美味しい」
「ほんとだね。くもパンもこんな風にふわふわにできるかな?」
「ましろはパンを焼くの?」
「うん。結構好きなんだ」
「らんさんは何にされたんですか?」
「ラーメンだよ。ご当地ラーメンを確認するのは、ラーメン屋さんの子としては大事だからね」
「おうちもお店をやってるんですね」
「うん。いつかみんなでぱんだ軒にも来てほしいな」
「これがお子様ランチですか……エルちゃん、どうです?」
「はた、かわいいね~」
「お子様ランチは子供たちの大好きが詰め込まれているからな。そういやあいつも、どこかの街で元気にやってるのかな」
「ああ、そうだといいな。ん、これも中々に美味いな」
各々が頼んだものを食べ、また互いに分け合いながら10人での食事の時は充実したものとなっていた。チラリとゆいが視線を上げるとレシピッピたちが楽しそうにしているのが目に入る。
「?どうかしましたか?」
「うぅん。なんでもない」
不思議そうな顔をするソラに笑顔を返し、ゆいはまたご飯を口に運ぶ。レシピッピたちが怯えることなく、また危険にさらされることもなく、こうして楽しそうにしていられる光景を見ることも、招き猫巡りの旅の中でゆいが好きな瞬間だった。去年の自分たちがしてきたこと、それが確実に実っているのだと実感でき、また今は離れてしまっている仲間のことも思い出させてくれるから。
「えるぅ、ふぁ~~~……すぅ~」
「エルちゃん、寝ちゃいましたね」
「きっとお腹いっぱいになったからだね」
「その気持ちわかるな~。あたしもこんないい天気だとご飯沢山食べたらお昼寝したくなるよ」
「らんらんも!」
「あはは。みんなでお昼寝ってのも楽しそうだね」
「みんなでお昼寝……」
「こういう時は男一人ってのを嫌でも意識させられるな」
「そうですね。みんなは気にしてないみたいですけど」
「ちょっと複雑だよな」
「ですね」
そうこうしながらみんなでご馳走様をすると、満腹感とちょうどいい気候が合わさってか、エルちゃんがソラの腕の中で眠ってしまった。穏やかな時間のおかげか安らいだ表情で眠る姿に思わず全員が笑顔になる。なんてゆったりとした時間、というものは彼女たちの日常においては、やはり長続きはしないらしい。
「今日は随分と部外者が多いな」
「「「「っ!」」」」
聞き覚えのある声にソラ達4人が即座に警戒態勢に入る。視線の先には何度も表れている不吉をまとったような男。
「あれは」
「ゆい、芙羽、華満。気をつけろ」
「う、うん」
見知らぬ男ではあれど、ただならぬ気配と不吉さはゆいたち5人も感じ取っていた。この緊迫感、自分たちにも覚えがある。強敵と対峙した時に感じていたそれである。
「スキアヘッド。こんな時まで!」
「プリンセスは昼寝中か。ちょうどいい。残りを先に始末しておこう」
きらりと一瞬男――スキアヘッドのモノクルが光る。
「アンダーグエナジー、召喚」
その右手が地面に触れた時、闇のエナジーがあふれ出て先ほどの招き猫と店の中にあっためん棒を取り込む。2つのものにアンダーグエナジーをまとわせることで、スキアヘッドの手駒となる怪物を生み出す。
「キョーボーグ!!」
「招き猫が!」
「ひどい」
ゆいたちにとって大切な意味を持つ招き猫、それが敵に利用される形で怪物とされてしまった。思わず拳を握り締めるゆい。もしここに仲間たちがいたら変身して怪物から元に戻せるのに、と。
「ゆいさん、すみませんがエルちゃんをお願いします」
「え?ソラちゃん?」
眠っている状態ではエルちゃんを巻き込むわけにはいかない。そう判断し、ソラはゆいに彼女を託し、他の3人とともにスキアヘッドたちと向き合う。
「ゆいさんたちはエルちゃんを連れて離れていてください」
「でも!」
「大丈夫です。ここは、ヒーローの出番です!」
ソラのその言葉とともに4人はそれぞれのミラージュペンを取り出す。
「「「「スカイミラージュ!トーンコネクト!」」」」
「ひろがるチェンジ!スカイ!」
「きらめきポップ!」
「さわやかステップ!」
「はればれジャンプ!」
眩しい光に包まれながら4人の姿が変わっていく。髪型、衣装、靴、アクセサリーと、きらびやかでありながらも凛々しさも感じる姿へ。最後に風になびく青と赤のマント。空色、白、夕焼け色、桃色。それぞれの色をまとって4人が怪物と対峙するように並び立つ。
「無限にひろがる青い空!キュアスカイ!」
「ふわりひろがる優しい光!キュアプリズム!」
「天高くひろがる勇気!キュアウィング!」
「アゲてひろがるワンダホー!キュアバタフライ!」
「レディー、」
「「「「ゴー!」」」」
「「「「ひろがるスカイ!プリキュア!」」」」
並び立ちながら名乗る4人。突然の事態に思わずゆいたちは立ち止まってしまう。ただそれは目の前の出来事が信じられないからではない。むしろこんな状況は何度も――経験してきた。
「プリ……キュア」
「はにゃ~、ソラちゃんたちも!?」
「皆さん、プリンセスを頼みます!」
「プリンセスって、エルちゃん?」
「わけわかんないかもしれないけど、とにかくここは任せて安全なところに!」
「菓彩!」
「ああ。ゆい、みんなこっちだ」
ウィングとバタフライの言葉にすぐさま反応した拓海の声に合わせ、あまねがゆいたちを先導する形でその場を離れて様子をうかがう。
「まさか私たち以外のプリキュアに会うなんて」
「拓海、どうするの?」
「様子見だな。3人は動くなよ。もし何かあったら、俺が行く。菓彩」
「わかってる。その時は私は念のためにこっちで3人とエルちゃんを守る」
「頼んだ」
「あまね、拓海先輩。すみません」
「うぅ……らんらんたちはメンメンたちがいないから戦えないし」
「それにあの男は危険だ。今はソラたちの方を優先しているが、いつこちらに攻撃するかわからないからな。油断できない」
「ゆい。いざというときは俺と菓彩を置いて、エルちゃんを連れて3人で逃げるんだ。いいか?」
「そう、だね」
ほんのちょっぴり感じる歯がゆさ。それは一緒に戦えないことに対して生じた気持ち。でも誰と?今まさに戦わんとしているソラたち?それとも――その小さなもやもやの理由について、ゆいはまだはっきりとはわかっていなかった。