ひろプリ with デパプリ パート13

ひろプリ with デパプリ パート13

空色胡椒


衝突音に次ぐ衝突音。


アンダーグフィールドの外、こちらの世界でも未だに激しい戦闘が繰り広げられていた。


「はあっ!」

「守れ」


シナモンの手から連続で放たれる光弾をバリアで防ぐスキアヘッド。その際に動きが止まったのを見て接近したシナモンの拳がバリアに激突する。かなりの威力をもって放たれたパンチであっても、スキアヘッドのバリアを揺らがせることはできたものの、破るには至らなかった。


「弾けろ」

「ふっ!」


かつてプリキュア相手にもとった戦法でバリアを破裂させて反撃に転じるスキアヘッドだが、すぐさまシナモンは自身も手のひらからバリアを形成し、スキアヘッドを包みこむように広げる。外に向かうはずだった衝撃と光弾が、球状に展開されたバリアの中で爆発し、大量の煙が発生する。


すぐさまシナモンはマントを手に左側面を覆うように翻しエネルギーを込める。直後、防御に使われたマントに突如現れたスキアヘッドの拳が叩き込まれ、衝撃が空気を揺らした。


「よく気づいた」

「お前が空間移動できることは分かっていたから、気を張っていたんだ」


そのままお返しとばかりに放たれたシナモンの蹴りをスキアヘッドが防いだかと思えば、その逆の足の蹴りが迫る。それをかわして反撃に光弾を放てばマントが振るわれ反射される。


息もつかせぬ攻防は何人もの介入を許さない。


(こいつ…やっぱり強い。フェンネルと同じ…いや、この無感情さ…下手したらより厄介かもしれない)


戦闘しながらなお、シナモンは冷静に相手を分析する。僅かな隙や動揺が、この相手の前では致命的なミスに繋がる。何より相手はほとんど無といっていいほど感情が見られない。感情が読めなければ相手の動揺を誘うきっかけも見いだせない。


両者の右腕同士が激しく激突する。ビリビリと空気の痺れが少し離れているはずのローズマリーたちのところまで伝わってくる。


再度距離をとる両者。あれだけ激しい戦闘をこなしながら、互いに汗こそかけど肩で息をする様子はない。理由は単純。両者とも全力であれど、まだ全開ではないから。


「もう少し…もう少しよ」


「させると思うか。アンダーグエナジー、召喚」


ちらりとローズマリーを一瞥し、干渉が完了しそうなのを察したスキアヘッド。すぐさま右手を地面につけ──


「そっちこそ、させない!」


先程まで以上の高速移動。十分な距離だと判断していたスキアヘッドの予想を上回る動きで、シナモンは右腕を地面につく前に蹴り飛ばす。


「!」


流石のスキアヘッドも、ほんの僅かに目を見開く程度だったが、これには驚いた様子。その隙を逃さずシナモンの右の拳がスキアヘッドに向かって振り抜かれた。


ゴッ!という衝撃音。


シナモンの右拳は確かにスキアヘッドの左頬を捉えていた──と同時にスキアヘッドの左拳が同様にシナモンの右頬へと打ち込まれている。不意打ちを受けて不安定な体勢ながらも、スキアヘッドは的確なカウンターを成功させていた。


吹き飛ばされまいと足場がややめり込むほど拮抗する両者。そしてスキアヘッドが右手に球状にエネルギーを集めて直接ぶつけようとしたのと、シナモンが左手に同じように光弾を形成したのがほぼ同時。


激突したエネルギー同士が大きな爆発を起こし、2人が発生した煙に包まれた。爆煙の中から飛び出す2つの影。どちらも未だ健在。


「む?」


スキアヘッドが自身の右手を見つめる。先の爆発のエネルギーを完全には受け止めきれなかったのか、右手は傷つき指先が震えている。


「っ」


とはいえそれはシナモンとて同じこと。彼の左手もスキアヘッドの右手と同じく、大きく傷ついてしまっていた。


「できたわ!今よ、みんな!」

「コメ!」「パムッ!」「メン!」


と、ローズマリーの声と共にコメコメ達が空間に開いた穴へ飛び込んでいく。それを見届けたローズマリーがポータルを閉じると、シナモンの隣に並び立つ。


「シナモン、お待たせ」

「マリちゃん、上手くいったのかい?」

「ええ、バッチリよ。あとはこいつが邪魔しないようにここで」


臨戦態勢へと移るローズマリーをちらりと見てから、シナモンも改めてスキアヘッドと向き合う。


「どうやらここに私がいる意味ももうないようだ。あとは余興がどう転ぶか、観察させてもらうとしよう」


右手を最後に一瞥し、スキアヘッドはモノクルを直してから空間転移ゲートを開く。


「逃げるつもり?」

「言っただろう。もうここで私のすることはないと。クックファイターとやら、その名前、知識の宮殿に記録しておこう…」


そう言い残しスキアヘッドは消えた。


「シナモン、大丈夫?」

「あぁ。このくらいなら治せるさ」


話しているそばからシナモンの癒しの力で傷が癒えていく。左手の感覚を確かめてからシナモンはスキアヘッドがさっきまでいた場所を見つめる。


「恐ろしい相手だ…」

「ええ。でもあの言葉に嘘がないなら、もうここには現れないでしょうね。今はゆいたちが無事に戻ってこられるように念の為に備えないと」

「そうだね。彼女達なら自力で窮地を脱して、戻って来られる…そう信じてるよ」

「ええ。私も」


(ゆい、ここね、らん、あまね、それに拓海君…頑張って)


ミラーパッドで確認してみるも、ゴーボーグの方はフィールドを展開してからずっと静止しているらしく動きはない。エナジー妖精たちが向かったからには、ゆいたちはまた戦いに身を投じることになる。仲間たちとまた会うために、そしてこちらの世界に帰ってくるために。


今までの戦闘では一緒にデリシャスフィールドにいた。でも今は共に戦うことが出来ない。その事に歯痒さをおぼえながらも、ローズマリーは心の中で戦友達にエールを送った。


──────────


「プリズム…」


戦えないあたしを守るために、ましろちゃんが変身したキュアプリズムが1人でキョーボーグを引き付けている。


助けたい、そう思っているのに今のあたしにはそれが出来ない。わかってる。あたしが初めてプリキュアになれた時、生身のまま駆け出して無事だったのは、相手がジェントルー…あまねちゃんだったからだと。


人を傷つけないようにしてたジェントルーとは違う。スキアヘッドの操るキョーボーグはそんなこと気にしない。だから今のあたしが出て行っても、結果的にプリズムの足を引っ張っちゃう…


…悔しいな。


「あたしだって…一緒に戦いたいよ。拓海やあまねちゃんみたいに力になりたいよ…また一緒にご飯を食べて、みんな一緒に笑い合いたいよ…」


ギュッと左腕に巻かれたウォッチを右手が握りしめる。お願い…お願いします…どうか…届いて!


「コメコメっ」




「大丈夫コメ!」


「えっ?」


声が聞こえた…そう思った次の瞬間ウォッチが光り輝いた。輝きの中に虹色の穴のようなものが見えたと思ったら、小さくて暖かいものがあたしの胸の中に飛び込んできた。


思わずそれを抱きしめる。覚えてる。この感じ。でも最後に抱っこした時より少し大きくなったかな?なんてつい思ってしまう。


「ゆい!久しぶりコメ!」

「コメコメ!」


笑顔でこっちを見上げるその姿は、今1番会いたかった大事な友達。苦楽を乗り越えた、あたしのパートナーだった。



「ここね、もう大丈夫パム!」

「パムパム!」

「らんちゃん、笑顔ましましで行けるメン?」

「もちろんだよ、メンメン」


別のフィールドではここねとパムパム、らんとメンメンが同じように再会を喜びあっている。ずっと心配しっぱなしだったパムパムに至っては若干涙ぐんでおり、ここねが優しく目元を拭ってあげている。


「らん!」

「うん!バタフライ、待っててね」



「…えるぅ?」

「あっ、プリンセス!起きたのですね?」

「ウィング…ヒーローの、でばん?」

「……そうですね。本当は僕達だけでなんとかしたいですけど…プリンセスも一緒に戦ってくれますか?」


本当は騎士として守りたい。でもどんなに小さく見えても、プリンセスは自分と肩を並べて戦えることを知ってるから。プリンセスも自分たちを守りたいと思ってくれていることを知っているから。その力が、今必要だから。だったら、


「行きましょう」

「うん!」


共に守りあって、勝てばいい!



「コメコメ、行くよ!」

「コメ!」



「「「プリキュア・デリシャスタンバイ!パーティー、ゴー!」」」

「スカイミラージュ!トーンコネクト!」


「にぎにぎ」「コメコメ!」

「ハートを」「コメコメ!」


「オープン」「パムパム!」

「サンド」「パムパム!」


「くるくる」「メンメン!」

「ミラクル」「メンメン!」


「ひろがるチェンジ!マジェスティ!」


「「「シェアリンエナジー!」」」

「ひらめきHOP!さわやかSTEP!はればれJUMP!」


ゆい、ここね、らん、そしてプリンセスエル。それぞれのいる場所に4人のプリキュアが降り立った。


「あつあつごはんでみなぎるパワー!キュアプレシャス!おいしい笑顔で満たしてあげる!」


「ふわふわサンドde心にスパイス!キュアスパイシー!分け合うおいしさ、焼きつけるわ」


「きらめくヌードル・エモーション!キュアヤムヤム!おいしいの独り占め、ゆるさないよ!」


「降り立つ気高き神秘!キュアマジェスティ!」



すぐさま飛び出したプレシャス。視線の先にはキョーボーグの攻撃を光弾で相殺するプリズム。キョーボーグが接近して直接攻撃を当てようとしていたその側面に、


「2000キロカロリー、パーンチ!」


強烈なプレシャスのパンチが炸裂し、大きく吹き飛ばしたのだった。


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