ひろプリ with デパプリ パート 5
空色胡椒互いに聞きたいこともあるということ、あまり大きな声で言える内容ではないということ、戦闘によって既に夕方になっていること。それに加えてもともとゆいたちがソラシド市で一泊することも視野に入れていたということから、ヨヨの許可のもと5人をシェアハウスに招待することとなった。
「すみません、急にお世話になることになってしまって」
「構いませんよ。この家には皆さんが泊まれる場所は十分ありますから。それに、ここならプリキュアの話をしても問題ないですからね」
「おばあちゃんはスカイランド、えっと、ソラちゃんたちの故郷の出身なんです。だからプリキュアのこととか異世界のこととかも結構詳しいんですよ」
「そうでしたか。ご厚意感謝いたします」
「代わりと言っては何ですが、今日の夕飯は俺にごちそうさせてください。もちろん材料は自分で用意しますんで」
「ありがとうございます。でも、材料についてはうちにあるものは使っていただいて構いませんよ。おいしーなタウン出身の方の料理は私も楽しみですしね」
「それじゃあ、少しお言葉に甘えさせていただきます」
ましろとその祖母のヨヨと年長組として挨拶を拓海とあまねがしている間、ソラやゆいたち他のメンバーで話が盛り上がっていた。
「じゃあ戦いを終えた今はプリキュアに変身できなくなってしまったんですね」
「うん。でも、マリちゃんやコメコメとは定期的に連絡とったり、会ったりしてるんだ」
「世界をまたぐ通信……気軽にやり取りができるのは素敵ですね」
「そうだね。でも前みたいに一緒にいたら、今日も手伝えたのにって、ちょっと思っちゃった」
「ゆいさん……そう言っていただけるだけでも、ありがたいです。でも皆さんはもう既にこの世界を守ってくださったのですから、きっと今度は私たちの番なんです」
「そっか。でも何か手伝えることがあったら言ってね。拓海とあまねちゃんもいるし」
「ありがとうございます。お2人ともとても強かったです。さすがに1年間分多くプリキュアとして戦っていただけのことはありますね。それに、少ない言葉で通じ合っているというか――息ぴったりの連携でした。互いに信頼しあってる相棒って感じでした」
「そっか~……2人が戦うとこ見るの久しぶりだったけど、確かにいいコンビだったもんね」
「はにゃ?そういえばツバサ君が見当たらないような」
「少年ならここにいるよ?」
「わぁぁぁっ!あげはさん、急に抱き上げないでくださいよ」
「まぁまぁいいじゃん」
「え?この鳥さんがツバサ君なの?」
「僕はスカイランドのプニバード族、人の姿に変身できるようになった種族です」
「ふふっ。おもしろい」
「あれ?思ったより驚かないね?」
「らんらんたちの友達にも、似たようなことができる子がいるんだ」
「へぇ~。僕の種族以外にもそういうことができる方がいるんですね。ってあの、ここねさん?」
「ぷにぷにしてる……かわいい」
「ここぴー、撫でながら顔が緩んじゃってるよ」
「あっはは。しょうがないよ。この姿の少年、可愛いもんね~」
「って、あげはさんもここねさんも、話しながら頭を撫でないでください」
わいわいがやがやと話が盛り上がっている一角を眺めながら、拓海とましろの2人がキッチンに並ぶ。あまねはエルちゃんを抱いているヨヨともう少し話したいことがあるとのことでこちらには不参加である。
「悪いな、虹ヶ丘。手伝ってもらって」
「大丈夫です。この人数の分一人で用意するのはさすがに大変そうですし、私もみんなのためにお料理するの好きですから」
「そっか。俺もエルちゃんが食べられるものとかよくわからないから、いろいろ教えてくれると助かるよ」
シェアハウスのキッチンから手際のいい料理の音が聞こえてくる。普段から料理することも好きなましろではあるが、隣に並ぶ拓海の手際の良さには驚かされる。お料理の街、おいしーなタウンから来ているからそれなりに料理は嗜むのかと思っていたが、そういうレベルではなかった。
「ん、虹ヶ丘。料理酒ってどこにあるか聞いてもいいか?」
「あ、はい。こっちです」
「さんきゅ。っと、見慣れないものもあるな」
「あぁ。これは前にスカイランドに行ったときにおばあちゃんが買ってほしいっていっていた、現地の調味料なんですよ」
「へぇ。異世界の調味料か。後で詳しく話を聞いてみたいな」
しゃべりながらもその手は止まらない。一品、また一品と丁寧に料理が作られていく。拓海が料理にひどく集中していることは傍から見ても明白だった。
「拓海先輩って、お料理得意なんですね」
「これでも実家がゲストハウスをやってるからな。手伝いに入ることもあるし。そういう虹ヶ丘もかなり手際がいいな。みんなのために作るのが好きって言ってたけど、かなり場数を踏んでいる感じがする」
「そうかな。でも、いつもみんなが美味しそうに食べてくれるから、なんだか嬉しくて。料理をするのを楽しいって思ってます」
「俺もそんな感じだよ。ある人が言ってた。この世で一番強いのは、誰かのために頑張る心ってさ。きっと虹ヶ丘もハレワタールたちのことを考えながら料理してるから上達もするし、美味しいって心から思える料理になるんだろうな。っと、よし。完成!」
拓海とましろの2人による晩御飯の用意が終わった。さすがにいつものテーブルではスペースが足りないこともあって、予備のテーブルや椅子を並べてから、みんなで一緒に夕飯となった。
「デリシャスマイル~。拓海の料理はいつも通り美味しいけど、ましろちゃんの料理も美味しい~」
「ああ。どこか優しい気持ちになる味だ。ましろ本人の持つ真心が込められているのだろう」
「はい!ましろさんのご飯にはいつも元気を貰えます!」
「う~ん。お店のご飯じゃないからキュアスタで紹介できないけど、この美味しさはいろんな人に知ってほしい気分」
「うんうん。ましろんってば、絶対いいお嫁さんになるよね。でも、拓海君の料理はなんか本格的って感じで、違う意味ですごいよ。しかもいつもってことは、毎回こんなに手が込んでるの?」
「確かにそうですね。盛り付け方にもこだわっているというか、本当にお店で見るものみたいです」
「そういえば拓海先輩って、最近ここぴーのところで」
「うん。時々アルバイトで来てもらってるの」
「ここねさんの家ですか?」
「ここねの家はレストラン・デュ・ラクといってな。おいしーなタウンでも有名な高級店なんだ」
「それほんと!?私も聞いたことあるけど、超有名レストランじゃん」
「あげはさんのこの驚き方からすると、ここねさんのお家も拓海さんもすごいんですね」
「拓海先輩、厨房でもホールでもすごく一生懸命働いてくれてて。そういえば、若い女性客が増えた気がする」
「へ~。そうなんだ。でも拓海はほんとにすごいんだよ!拓海の作ってくれるものならいくらでも食べられるくらい」
「おいし~」
「エルちゃんよかったね」
「ほっ。最近小さい子供も食べられるようなメニューに挑戦していたから、喜んでもらえてよかったよ」
「ふふっ、本当に美味しいですよ。それにしても、あなたくらいの年齢でここまでの料理の腕を持つなんて、相当努力されていたのですね」
「ありがとうございます。元々の実家の仕事の影響もありますけど、俺自身が料理で誰かを笑顔にしたいって思ったんで、必死にいろいろと勉強しました。幸いにも街には昔からの知り合いで料理に携わる方も多くて助けてもらいました」
「そうですか。さすがシナモンさんの息子ですね」
「えっ。父のことを知っているんですか?」
「ええ。シナモンさんが一度ソラシド市に来たことがあるのですが、その時に異世界出身同士、いろいろお話をさせていただきました」
「えっと、シナモンさんって?」
「あぁ、俺の父さんだよ。今は品田門平って名前で暮らしてるけど、父さんはクッキングダム出身なんだ」
「ええっ!?じゃあ、拓海先輩も異世界人とこの世界の人の血が流れてるの!?」
「まぁ、そういうことになるな。虹ヶ丘はクォーター、俺はハーフ。ちょっと違うけど似たようなもんだ」
「すっごい偶然!びっくりだよ~、ってごめんなさいつい口調が」
「いいって。そっちの方が気楽なんだろ?無理に敬語使おうとしなくても気にしないさ。同じような境遇で、プリキュアに関係している者同士。かしこまらなくてもいいだろ」
「あ、うん。ありがとう」
楽しく歓談しながらの時間はあっという間に過ぎていき、夕飯後の片づけ、お風呂と順番に済ませたのちに、彼らは眠ることにした。「折角だからくじ引きをして互いのメンバーで同室になろう」というらんの提案を受けて、女子組はワクワクしながらくじを引くのだった。当然ながら拓海とツバサはワンセットである。
結果としてはソラ・エルちゃんとゆい、らん・あまねとましろ、ここねとあげはという組み合わせで同室となった。