ひろプリ with デパプリ パート 18

ひろプリ with デパプリ パート 18

空色胡椒


「やった……のかな?」 

「そのようだな」 

 

ゴーボーグを構成していた闇のエネルギーが完全に消えたのを確認したフィナーレが、安堵の息を吐きながら周囲をなお警戒するヤムヤムの肩に手を置く。一方ブラペは先ほどゴーボーグから分離していたスペシャルデリシャストーンの方へと飛び、自分のストーンの力も使いながら石の状態を確認する。 

 

「拓海!」 

「スペシャルデリシャストーンはどうですか?」 

「……あぁ。完全に機能は停止している。アンダーグエナジーという未知のエネルギーを無理に注ぎ込んだからだろうな。浄化の時の光エネルギーと中にこもっていた闇のエネルギー、相反する二つの属性に触れた負荷が大きくて、完全に壊れてる。もう悪用できないだろう」 

 

そう言いながらブラペがストーンだったものを駆け寄ってきたプレシャスとスパイシーに見せる。ひびの入っていたそれは一部が欠けて落ちたかと思ったら、ブラペの手の中で粉々に崩れ落ちた。 

 

空から浄化技を放ったスカイ達も地面へと降りてきて、改めて戦いを終えられたことを確認すると、最初にプリズムが地面に座り込むのを合図に脱力した。 

 

「これで、もう大丈夫」 

「ふぅ。みんなお疲れ!」 

「な、なんとかなった~」 

「今回ばかりは本当に危なかったですね」 

「そうですね。でも―」 

 

スカイがプレシャスたちの方を見る。一緒に戦ってくれた5人の戦士たち、別のプリキュア。バラバラに飛ばされた自分たちだったけど、力を合わせることで新しいパワーが生まれた。また新しくヒーローを目指すうえでの指針を見いだせた。共に戦う中で、より一層深い友達ができた。 

 

プレシャスがピースサインをスカイへ向ける。それを受けたスカイもまた笑顔でピースを返す。それを合図に改めて10人と3匹で、喜びを分かち合うのだった。ハイタッチするバタフライとヤムヤム、それに合わせて小さく火花を吐くメンメン。ほっとしたのかちょっと気の抜けた表情になったパムパムを見つめながら笑顔をかわしあうプリズムとスパイシー。ガシッと握手を交わしあうブラペとウィングに、フィナーレに頭を撫でてもらっているマジェスティ。みんなが思い思いに喜びを分かち合っている。 

 

その様子を隣り合いながら見ていたスカイとプレシャスが手を取り合おうと― 

 

ぐ~~っ 

 

―したときにその音は響いた。割と大きく、はっきりと。ついつい全員の視線がその発生源に向けられる。 

 

「うぅ~。はらぺこった~!!!」 

「コメコメもコメ~」 

 

いつもの調子で、いつもの台詞をいうプレシャスに、ついつい全員から笑いがこぼれる。 

 

「折角ですから、みんなで帰って一緒にご飯にしませんか?」 

「そうだな。みんなでの勝利を祝って、腕によりをかけて作るか」 

 

スカイとブラペの提案に反対する者はいなかった。さてと、とブラペは自身の手を地面に触れる。ゴーボーグがいなくなった時の不具合か、展開されっぱなしとなっていたデリシャスフィールドを解除するため、自身のストーンの力を行使する。瞬間辺りは虹色の光に包まれ、彼女たちは変身を解除した姿で、最初にスキアヘッドと対峙した時の場所に立っていた。 

 

「みんな!」 

「拓海!」 

「よかった」 

 

「ふん。ちゃんと仕事はしたからな。刑期も短くしてもらわないと」 

「ご苦労様です。ってゆーか、一応はサポートもしてたわけだし、私のことも労ってほしいっつーの」 

 

背後からかけられた声に振り返る。ローズマリー、シナモン、そしてヨヨの3人が手を振っている。その奥には腕を組みそっぽを向いているナルシストルーと相変わらず小声で何か言っているらしきセクレトルーの姿も見える。 

 

「マリちゃん!」 

「父さん!」 

「おばあちゃん!」 

 

ゆい、ましろ、拓海を先頭にみんなで駆け寄る。ローズマリーは涙を流しながらゆい達4人を抱きしめた。 

 

「みんな!ほんとによくがんばっだわね~。私、たずげにいげなくって~」 

「わわっ!マリっぺ泣かないで!」 

「そうだぞ。マリちゃんは私からの一方的な通信の意図をしっかりとくみ取ってくれたじゃないか」 

「パムパムから聞いた。私たちのために沢山頑張ってくれてたこと」 

「そうだよ。マリちゃんがコメコメたちをもう一度あたしたちに合わせてくれたから、戦えた!みんなで帰ってこれた!だから、ありがとう!マリちゃん!」 

「ううぅぅぅ~。みんな~、ほんどによぐやったわ~」 

 

満面の笑顔でお礼を言うゆいに、ローズマリーの涙はより一層激しくあふれ出るだけだった。それでも口元に笑顔を浮かべながら抱き合う彼女たちは、この再会の時を喜び合っていた。 

 

 

「おばあちゃん、どうしてここに?」 

「皆さんを助けるために、私にできることをしていただけ」 

「ヨヨさん、ありがとうございます」 

「うんうん。今回はほんとに助かりました」 

「それはよかった。でも、私だけではないの。本当はもう一人あなたたちを助けるために頑張っていた人がいたんだけど―」 

 

『俺様は借りを返しただけなのねん!もうプリキュアとは無縁の存在。だから会わない方がいいのねん!』 

 

「会わない方がいい、って先に帰ってしまったわ」 

「別の協力者、ですか?残念です。折角なら直接お会いしてお礼を言いたかったです」 

「ソラさん、大丈夫。きっとまた会える日が来るわ。だからその時、改めてお礼を言いましょう?」 

「ヨヨさん……はい!」 

 

姿を見せなかった協力者のことを思い、ソラは視線を上に向ける。無限に広がる青い空。その下にいる以上、どこかでその相手には繋がっているのだろう。そう信じられる。だからこそ彼女は息を吸う。そして空に向けて大声で叫ぶ。 

 

「見知らぬ誰かさ~ん!ありがとうございました~!」 

 

「へっくしょん!」 

 

なぜかムズムズした鼻をこすりながら、オンボロアパートに向かう彼の背筋は伸びており、どこか爽やかな印象すら与えた。 

 

 

「よくやったな、拓海」 

「いや、まだまだだよ。俺がもっとしっかりしていれば、フィールドを展開する前やゴーボーグが生まれる前になんとかできていたはずなのに」 

 

スペシャルデリシャストーンを見た瞬間にその機能を封じることができていれば、そう考える拓海の肩にシナモンの手が置かれる。 

 

「……少し背が伸びたな」 

「え?」 

「映像越しに見ていたが、ストーンの使い方も戦いの動きもかなり上達している」 

「あ、ありがとう?」 

「少しずつでいいんだ。既にお前は正式なクックファイターであれば十分以上の実力を持っている。プリキュアの協力アリとはいえ、通常のデリシャストーンでスペシャルデリシャストーンの力を抑え込めたのは、それだけお前が石の力を引き出せるほどになったということだ。生半可な努力じゃとてもできないことだ。お前は僕の自慢の息子で、自慢の弟子だ」 

「父さん……」 

 

師として、そしてかつてのクックファイタートップ候補としての嘘偽りのない賛辞の言葉は、拓海の胸を熱くさせた。思わずうるみそうになる瞳を一度瞑り、改めて師であり父である人の顔を拓海は見上げた。 

 

「ありがとう、父さん。俺、まだまだ強くなるよ!」 

「ああ。楽しみにしてる」 

 

肩に置いていた手に最後に軽く力を込めてからシナモンは拓海を放し、師弟としての会話を終えるのだった。 

 

「よっしゃ。父さん、頼みがあるんだけど」 

「ん?何だい?」 

「これからみんなで祝勝会やる予定なんだ。ただこの人数だからな」 

「ああ、なるほど。よし!じゃあ久々に共同料理と行こうじゃないか」 

「そうこなくっちゃな!」 

 

パチンと今度はハイタッチをかわす2人。今度は親子として、改めて笑顔をかわしあう2人。ヨヨの提案の元、全員で虹ヶ丘邸へと向かうこととなり、そこでみんなでご飯を食べることとなった。 

 

 

ましろとヨヨを先頭に歩く集団。最後尾にはシナモンと拓海がいる中、少し前を歩く2人組。 

 

「ふん。なんで俺様まで」 

「折角のお祝いムードです。わざわざ水を差す必要はないでしょう。ってゆーか、折角羽を伸ばす時間を貰えそうなのに、わざわざ先に戻る理由もないっつーの」 

 

そんな元ブンドル団2人に近づく人影。彼女は片手をあげ、まるで親しい相手に話しかけるように気さくな声をかけた。 

 

「やぁ。マリちゃんから聞いたよ。私たちを助けるためにいろいろ動いてくれたらしいな。感謝するよ」 

「……元ジェントルーか」 

「礼を言われるほどのことはしていません。今回の立役者はナルシストルーの方ですから。ってゆーか、ローズマリーからの要請を断る理由がなかっただけだっつーの」 

「そうか。それでもありがとうセクレトルー。それにナルシストルー」 

 

先に足早で歩き出し、前を進むメンバーの方へ向かうセクレトルー。すれ違い様にかけられたお礼の言葉に小さく笑みをこぼした彼女は、そのままローズマリーの方へ合流するのだった。 

 

「はんっ。俺様はさっさと帰りたいんだよ。一緒に食べるなんて、気分が悪くなるだけだしな」 

「そう言うな。みんなにもお前に礼を言う機会くらいは与えてやってくれ。それに、折角だ。お前が以前気に入ってくれたりんご飴をふるまうとしよう。どうだ?」 

「……ちっ。まぁ、今クッキングダムに戻ったところで牢屋の中か、また働かされるだけだしな。少しくらいは付き合ってやるさ」 

「そうか。そうしてくれると助かる」 

 

苦々しいように口元をゆがめるナルシストルーを横目で見ながらも、あまねは小さく微笑んだ。文句は言うし、嫌みなところも変わらない。それでも確かに今回も彼の発明家としての手腕に救われたのは事実。そして人と共に食べることを何よりも嫌っていた彼が、りんご飴につられたように見えるとはいえ、それを許容できるようになっていること。そこに彼なりの変化があったのだろう。 

 

ローズマリーと話すセクレトルー。しかめっ面をしながらもともに歩くナルシストルー。そしてここにいる自分。こうして同じ方向へ歩くことがあるなんて、と少しおかしく思いながらも、あまねは最高にファビュラスなりんご飴を作って見せることに意気込むのだった。 

 

 

その日の虹ヶ丘邸は夜まで笑いが絶えることなく、ほかほかハートがあふれ、レシピッピたちが喜びに踊るほどに、楽しくて美味しい場所になったのだった。 

 

─────────── 

 

翌朝。 

ソラシド市の駅にソラ達5人は揃ってゆい達を見送りに来ていた。ローズマリーとシナモンはナルシストルーとセクレトルーを連れて既にクッキングダムに帰還したため、ここにはエナジー妖精達だけが残っている。 

 

「もう行っちゃうんですね」 

「うん。2日間もお世話になっちゃったし、学校とかもあるから。それにあたし達、まだまだ沢山の招き猫に会いに行きたいしね」 

「そっか。みんなに出会うきっかけになった招き猫さん、他の町にもあるんだよね」 

「ああ。世界中に美味しいの笑顔を届けてくれてるはずのそれを、ちゃんと見て回りたいんだ」 

「世界中の美味しい笑顔─素敵な旅になりそうですね」 

「またいつかこの町にも寄ってね?おばあちゃん、いつでも歓迎するって」 

「ありがとなソラ、虹ヶ丘」 

「絶対また来るよ!」 

 

「パムパム達も、戻るのね?」 

「やっぱり、ここねさんたちもお別れすることはさみしいですよね」 

「えるぅ」 

 

ぽつりとツバサが呟いたその言葉は、きっと無意識のうちに考えないようにしていたこと。自分と同じ、異世界の友人たちのやり取りを見ていたから、つい漏らしてしまった言葉。いつかはきっと来るのだ。自分たちにも、その別れの時は。 

 

「パム……久しぶりにここねに会えて嬉しかったけど、今のパムパム達にもやるべき使命があるパム!」 

「うん。私も、こっちで沢山学んで、沢山経験するから。次に会った時に、いっぱい分け合いましょ?」 

「らんちゃん、僕たちも向こうでしっかりやるメン!だかららんちゃんも」 

「うん!らんらんもらんらんの夢のために、やるべき事頑張るよ!べ、勉強もなるべく!」 

「互いのやるべきことをやる。いいね。しっかり前を見据えている感じ」 

「?あげはさん?」 

 

明るく言葉を交わしあうパートナー同士を眺めていたツバサの肩を、あげはがぽんっと叩く。首をかしげる彼に向けて、あげはは優しい笑顔を向けてから、ここね達の方に視線を向ける。 

 

「離れていてもそれぞれのやるべきことを頑張って、それぞれの経験をして。次に会うときに分かち合える。今回みたいにね。それってすっごく素敵なことだと私は思うな。会えない時もあるかもしれない、でも絆が途切れたわけじゃない。だからきっと、進んでいけばまた会えるって信じられる」 

 

ね。そう言ってウインクしたあげはの言葉は実体験も込められているのだろうと、ツバサはハッとする。今までずっと一緒にいた家族と離れ、幼馴染とも離れ、それでも彼女は進んだ。そして実際家族ともその幼馴染とも出会い、経験を分かち合い、また進んでいる。 

 

「ここねだけじゃなくて、もちろんみんなともまた会いたいパム!」 

「今度はクッキングダムにも来てほしいメン!」 

「あ、はい!ぜひ!皆さんもいつか、スカイランドにご招待しますね!」 

「私たちもその時を楽しみにしてるね」 

 

ふわりと浮いて自分の前まで来てくれたパムパムとメンメンが差し出した手を、ツバサはしっかりと握った。その上にエルちゃんが片手を乗せ、あげはが両手で包み込むように握手を交わすのだった。 

 

 

「コメコメ。来てくれてほんとにありがとう。また一緒に戦えて、あたし嬉しかったよ」 

「コメコメも嬉しかったコメ!嬉しかったし、楽しかったコメ!」 

「またいつかこっちに、今度は遊びに来いよ。コメコメの好きなもの、沢山用意してやっから」 

「ほんとコメ?」 

「ああ。約束だ」 

「うん。約束だよ」 

 

一度ぎゅっと抱きしめてくれたゆい。話しながら頭を優しく撫でてくれた拓海。2人の言葉を受けて、人型に変身した状態のコメコメが両手の薬指を伸ばして差し出す。ゆいが右手で、拓海は左手で同じように小指を伸ばし、コメコメの指と絡ませる。優しい笑顔を向けてくれる2人を見て、コメコメは思わず2人に飛びついて、まとめて抱きしめる。 

 

「おわっ」 

「コメコメ?」 

「ありがとうコメ!コメコメはゆいが大好きコメ!それに、ゆいが大好きな拓海も、大好きコメ!」 

「はぇあっ!?」 

「へっ?」 

 

驚いて目を白黒させる拓海とほんのり頬を染めたゆいを最後にもう一度ぎゅっとしてから、コメコメは離れ、パムパム達の方に向かう。 

 

「さぁ、帰るコメ!」 

「コメコメ、急にどうしたパム!?」 

「最後にすっごいことが起きた気がするメン!?」 

 

驚いている2人の手をしっかりと握ったコメコメは最後に振り返りながら笑顔を見せて、 

 

「オムスビヒャッコハムチャデッセー!」 

 

光の中へと消えていった。 

 

 

「なんていうか─コメコメ、大きくなったな」 

「…うん、そうだね」 

 

がしがしと頭をかきながら漏らした拓海の言葉に、嬉しさと寂しさとをほんのり滲ませたゆいが同意する。それにしても、と拓海は考える。 

 

(最後のコメコメのあれって…どっちの意味だ?) 

 

『ゆいが大好きな拓海も、大好きコメ!』 

 

ゆい(のこと)が大好きな拓海もという意味か?それとも─いや、それは都合よく考え過ぎなのだろうか、とぐるぐる考える。 

 

「拓海さん!」 

「ん?っおっと!?」 

 

本日二度目の衝撃。今度は先ほどのよりもしっかりとした衝撃をもって、拓海の胸めがけて飛び込んできた。思わず受け止めた拓海だったが、いきなりのことに目をぱちくりさせてしまう。 

 

「ソラ!?な、なんだきゅうに?どうした?」 

「わかりません!」 

「はぁ!?」 

「わかりません。けど、なんとなくこうしたいって思いました!」 

「えぇ…?あ~、っと。その、いや、えぇ~?」 

 

受け止めたはいいけどここからどうしたものかと手の置き場所すら悩んでしまう。そんな拓海にお構いなしにソラは昨日のプレシャスがしたように拓海の胸に頬を寄せた。 

 

「昨日のゆいさんや、今日のコメコメちゃんを見ていた時に、どうしてか心の奥から駆け出したいような気持ちが溢れそうでした。それとは別で、拓海さんと話していると心の奥がとても暖かかったです。拓海さんが一緒に戦ってくれた時、自分の知らないところから有期や力が湧いてきて…わからないことが沢山です」 

 

でも。そう言いながらソラは頬を離し拓海を見上げ、真っすぐな瞳と言葉で今の気持ちを告げる。 

 

「拓海さんが教えてくれたそのわからないことは、とっても素敵なものなんじゃないかって思いました!だから、また会いに来てください!いえ、私の方からでも会いに行きます!これからももっともっと!沢山のわからないことを、教えてください!」 

 

まるで告白めいたそのソラからの言葉は、果たしてそれはどういう気持ちからくるものなのか、それを正確にはかることはできない。誰かへ相談しているときの話であれば、それを定義づけるための手伝いもできるかもしれない。ただソラの真っすぐなその気持ちは、本当に彼女にとってはわからないもので、まだ名もない気持ち。告白ではないメッセージ。だからこそ─ 

 

「あぁ。また会おう、ソラ」 

「~っ!はいっ!」 

 

それを断ることなど、拓海にできるはずもないのだ。もう既にソラに対しては抵抗がほとんどない動き─そっと彼女の頭を撫でながら、拓海は笑顔を返す。それだけでソラの笑顔の輝きがまた増したようにも見えた。 

 

 

「へっ?な、ゆい!?」 

「?ゆいさん?」 

 

そんな2人が同時に素っ頓狂な声を上げたのは、拓海の背中側から前に回された一組の腕が原因だった。先ほどまでソラの頬が触れていた箇所で重なるように回された腕は、他ならぬゆいの物。急なその行動に当事者の2人はもちろん、他のメンバーも驚いていた。 

 

「ゆゆっゆい!?急にどうしたんだよ?」 

「別にぃ~。コメコメやソラちゃんは良くて、あたしはダメ?」 

「いや、んなことはないけど」 

「ソラちゃんも別にいいよね?」 

「?はいっ!拓海さんをシェアリンエナジー?ってわけですね?」 

「なんかちょっと違う気もするけど……まぁいいや。というわけで拓海、もうちょっとこのままね」 

「えっ!?えぇ?」 

 

前にはニコニコ笑顔で抱き着いているソラ。後ろには表情こそ見えないがしっかりと抱き着いて背中に顔をうずめているらしいゆい。何がどうなっているのかわからないまま、拓海は両手を上にあげた状態のままあたふたすることしかできない。 

 

「おぉ~。ソラちゃんもゆいちゃんも、大胆だね」 

「これって、もしかしてライバルというやつなのでは?」 

「う~ん、なんだか大変なことになって来ちゃったのかも」 

「ソラ、ゆい、たくみ。みんななかよし~」 

 

「拓海先輩、可愛い」 

「いや~ゆいぴょんはいつ気づくのかな~と思ってたら、まさかソラちーもなんて。ってあれ、ここぴー?」 

「あ、違うの!ただゆいからもソラからもぎゅってされてあたふたしてるの、なんか可愛いなって」 

「まぁ、確かにそうだね~。はにゃー、これからどうなっちゃうんだろうね?」 

 

面白がる者、ドキドキしてる者、しみじみとしている者。いろんな反応をそれぞれが示す中、あまねが拓海たちの方へ近づく。ポンッと拓海の肩に手を置きながら、それはそれはいい笑顔であまねは申す。 

 

「どうした品田?顔が赤いぞ?」 

 

「うっ!うるせぇ~!!!」 

 

照れていることを微塵も隠せていない少年の叫びが、ソラシド市の空へと響き渡るのだった。 

 

 

THE END 


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