きりにひとつび

きりにひとつび


たまにルフィは静かな時がある

それでどうといったことも無いが

ふと黙り船縁の向こうを睨んでいる

なにがおもしろいもんかねと思う

まァ食材へ手ェ出されなくて良いか


やたらと濃い霧の海域に入った

日持ちする乾物に湿気は大敵だ

念入りに痛んでないかを調べていく

どれも無事らしいと心底ほっとした


甲板に出ても開放感はまるで無え

とっとと晴れてくれないもんかね

ちと湿気ってもタバコならまあいい

一本を取り出してジッポを鳴らす


霧の中から手が伸びてきた


流石にのけぞって歯を食いしばる

やたらめったら見慣れた手だった

愛用の品を握りしめるルフィの拳

クソテメェふざけんな火傷すっぞ!

怒鳴るとゴムの本体が飛んでくる


怒りが喉の奥にすっと引っこんだ

ひどく青ざめた顔が左右に揺れる

傷跡まで強張らせて、ささやく




みられてる




ポタージュみたいに濃く深い霧

奥でなにかがゆらりと身じろいだ

















きりにひをともすのならば

けっしてひとつにしないよう

ひとつびはとびらをひらきます


あちらとこちら

こちらとあちら

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