「 」の4週間(一部)とその周囲
どろどろと重く何もない暗闇にとらわれてゆっくりと沈みこむような感覚に襲われている。何をするにも億劫で、このまま微睡に解けてしまってもいいのではないかとぼんやりと思考する。
「 」
誰かの声が聞こえてくる。何故だかその音は何かをなくした時のような悲痛さが含まれているような感じがした。
「 」
誰かを呼んでいる。戻て来て欲しいと願われている。その願いをかなえてやりたいという気持ちが沸き上がるが指先一つ動かすのも億劫だ。
「 」
冷たい何かが降っている気がする。暖かい何かに触れている気がする。いやだいやだと希われている。
ここまでされているのにさすがに何もしないのは良くないだろうと考え張り付いてしまっているような瞼に無理やり力を込めてみた。
「だんな・・・ドゥリーヨダナの旦那・・・」
重怠い瞼を押し上げぼんやりとしたまま瞳を動かし周りを見渡そうと試みる。真白き部屋と直ぐ近くに居て己をそう呼ばう赤い塊。
俯き己の右手を両手で何かに縋るようにして持ち上げているような姿がぼやけて不明瞭な視界の中に映る。どうしても顔を見たくなったため重怠い眠気を押しのけ喉と口に力を入れて呼びかける。力なくかすれて小さく聞き取りづらいだろう声が耳に届いたのか彼はパッと顔を持ち上げた。
「・・・あしゅ・・・ヴァ、ター・・・マン?」
「旦那!起きたのか!!」
泣き出す寸前のようなそんな顔。どうしてそんな顔をしているのか分からなかったが返事の代わりにハツリと瞬いてみせる。ぐしゃりと更に顔をゆがめながらも口元はこちらを安心させるためか笑みを形どっていた。
「こ・・・こ・・・は・・・?」
「医務室だ。旦那、何があったのか覚えているか?」
「な・・・に・・・?」
アシュヴァッタ―マンに問われ何故こんなにも力が入りづらいかの経緯を思い起こそうとするものの、考えようとした先から思考がほつりと途切れ何が起きたのかを手繰り寄せることが出来ない。
更にまだどろりと重怠い眠気に襲われうつらうつらし始めてしまう。
「・・・いや。思い出せないならいいんだ。旦那、悪いが体を起こさせてもらうぞ」
ぐんにゃりとしたままの力の入らない体をまるで壊れ物を触るかのように持ち上げられ、ベッドの上に座るかのような体制にされて支えられる。何をしたいのだろうかとぼんやりとしたままアシュヴァッタ―マンの顔を見つめ続ける。己を支えたまま器用に何かを手繰り寄せ、そうして心配そうにこちらを覗き込む。
「旦那。食べられるか?」
小さな器には最近マスターに教えてもらった「おかゆ」なるようなものと似たようなものが入れられており、スプーンに掬われ口元に近づけられる。食欲などないし口を開くのも億劫だったが、アシュヴァッタ―マンの顔がこれ以上ゆがむのを見るのが嫌だったため口を動かしちびちび嚥下を繰り返した。
どうにか全て腹に収めた後は目を開けるのすらも出来ずに目を瞑りうとうととアシュヴァッタ―マンに凭れ掛かる。
「だんな・・・だんな・・・ドゥリーヨダナの旦那」
「なくな・・・わし様は・・・ここに、居るで・・・あろう・・・?」
まるで必死に何かを探し出すような悲痛さの込められた呼び声に苦笑しそうになりながらも頑張って口を開き言葉を紡ぐ。ぎゅうと何かに縋るかのように優しく抱きしめられた後、ゆっくりと体がベッドへと横たえられる。
「だいじょうぶ・・・大、じょーぶだ、アシュヴァッタ―マン。わし様は・・・ちゃんと、ここにー・・・」
「おう・・・おう・・・そうだな。大丈夫だ。・・・疲れたろ?ゆっくり寝てくれや」
「うむ・・・うむ・・・。アシュヴァッタ―マンも、ちゃんと、寝る、のだー・・・」
全ての言葉を紡ぐ前にドゥリーヨダナはどぷんと眠気に飲み込まれてしまった。
すう・・・すうと眼前の体からは穏やかな呼吸が繰り返されている。血反吐を繰り返し吐き続け、その体すらもぼやけて輪郭すらも危うかった状態と比べたらだいぶましになった。とはいえ、まだ打ち出の小槌もどきの後遺症に苦しめられているのかたまに輪郭がぼやけ「違う誰か」が表出してることや苦痛に顔をゆがめているような様子のまま目覚めないことやゴホゴホと咳き込み続けていることも未だ多い。
「大丈夫。大丈夫だ。・・・ちゃんと、またいつものように騒いでくれや。」
発端になった白い神への怒りを煮えたぎらせながらも傷つけないようにアシュヴァッタ―マンはドゥリーヨダナの髪を撫で続けた。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
さらりとまるで壊さないようにするために細心の注意を払うような力加減のまま頭を撫でられ意識が浮上する。おかしいと感じつつも何かに押し上げられるようにして瞼をこじ開ける。
目の前には白と黒の慕わしい神(おや)。
「と・・・さ・・・?」
「スヨーダナ?」
「とうさま・・・とうさまだぁ・・・」
ぐにゃりと何かが歪んだ感覚に襲われつつも彼の名を呼びかける。小さな呼びかけに気が付いた神(ちち)がこちらの顔を見つめてくる。表情の乏しい顔ではあるが、驚いたように目を見張りその瞳はどこか心配そうな色を乗せている。その温かさに歓喜しているのに何故か瞳からはほろほろと涙がこぼれ落ちる。
「どうしました・・・どこか、痛みが?」
「ちが・・・ちがう。痛みで泣いるわけでは・・・」
おずおずとした様子で伸ばされる掌に頬を押し付けその体温を享受する。確かにどこか軋んでいる感覚があれどもそれは意識しなければ分からない程遠い感覚でしかなかった。
「なら・・・どこか調子が?」
「・・・ばか。バーカ。・・・とうさまの、馬鹿。」
「す・・・スヨーダナ?」
見当違いの心配をしてオロオロしている親(かぞく)に不満をぶつけるようにして拙い罵倒を繰り返す。ショックを受けたのかピシリと固まったしまった掌に精一杯の力を込めてぐりぐりと頬を擦り付ける。
「夢だとしても、またこうして・・・あなたを見ることが出来て嬉しいのだ。・・・あなたに触れることが出来て嬉しいのだ。・・・あなたと話せることが、どうしようもなく喜ばしく感じているのだ。」
ほろほろと零れる涙をそのままに精一杯笑顔を浮かべて微笑みかける。これはきっと嬉し泣きという物だろう。体が動けば飛びあがるような程に喜んでその温かさを体全身で感じ取るために抱き着きたいのに夢というのはままならないものだ。顔を動かすのが精いっぱいで頬に触れている手の体温を感じ取ることしか出来ない。
「・・・スヨーダナ」
震えるような声音で呼びかけられる。細心の注意を払っているのかおずおずと両手が己の体の下へと通されゆっくりと持ち上げられて抱きしめられた。ようやっと待ち望んだ感覚にくふくふと笑い声が転げ落ちる。そうして殊更ゆったりとした動きで眠りを誘うかのように一定のリズムで体が叩かれる。
「・・・とう、さま・・・俺たち(コレ)は・・・あな・・・たを、あ、いー・・・」
起きていてその顔を見つめ続けたいのにとろとろと眠気が忍び寄ってくる。どうしても伝えたかった思いを紡ぐも、すべて伝えきることはできずに眠りへと落ちていってしまった。
すうすうと穏やかな呼吸を繰り返しているにも関わらず、己の腕に収まる小さな体はゆらゆらとその輪郭がぶれ安定していない。己の良く知るスヨーダナと本来ここにいるべきドゥリーヨダナの姿で行ったり来たりを繰り返している。そのためかその顔色は血の気が失せ、青色を通り越して白くなっているようにすら見える。ゆっくりと抱き上げた体をベッドへと戻し少しでも苦痛が和らぐように願って口づけを落とす。
「スヨーダナ。私もあなたの事を愛していますよ」
その声は誰にも聞かれることなく静かにその部屋に溶けていった。
ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
ドゥリーヨダナは未だに体に残る重怠さを抱えながらカルナと共にノウムカルデアの廊下をゆっくりと歩いていた。以前は全く問題のなかった動作にも関わらず、今はちょこちょこ止まらなければなければならないほどに体が休憩を欲している。
己は全く覚えていない(何かしらの激痛に襲われたような感覚はある)が羊のような形をした神が起こした騒動に巻き込まれ予断を許さないような状態に襲われたらしいという話を聞いた。今もこうして倦怠感に襲われ続けているのもその後遺症で、少しでも改善が出来るようにするために体を動かすのがいいらしい。寝てばっかりであったがようやっと同伴を義務図けられてはいるものの、自由に動くことが出来るようになったため重い体を動かす面倒くささは感じるものの無機質な部屋に居続けるよりましだと判断してこうして散歩をし続けている。
「は~・・・。休憩だ。きゅうけ~い。・・・な~ぜ、わし様がこんな大変な目に合わねばならんのだ。特別手当を要求するー!!!」
「そうだな。・・・回復したら、何か貰えるのではないか?」
ぎゃんと叫び声をあげて廊下の壁に凭れ掛かる。大きな声を上げるだけでもぜぇはぁと息が乱れてしまう。うっとおしさを吹き飛ばすためにしたがどうやら逆効果だったようだ。隣にいるカルナは言葉少なくドゥリーヨダナの言葉に同意してくれたためほんの少しだけ気分が上向く。
「何を要求してやろうか・・・。そもそもわし様が油断をしたのも日ごろの周回とやらの回数が多かったからであり、万全な状態だったのであれば反撃をすることも容易であったわ!」
「・・・そうだな。」
胸を逸らしながらも心配そうな顔を己に向けていたマスターの顔を思い浮かべながら欲しいものを思え浮かべることで憂鬱になりそうな気分を吹き飛ばす。カルナは笑みを浮かべながらも労わるようにして肩を叩いてくれた。
「・・・よし!そうとなれば早く万全な状態に戻すべく散歩を続けるぞ」
「承知した・・・む?あれは・・・」
気を取り直してそう声を上げ、歩みを進めようとした先から誰かが近づいてくる。それが誰か分かったのかほんの少しだけカルナがドゥリーヨダナを背後に隠すようにして前に出た。
兄と朗らかに今日の食事がおいしかったのかを話しながら歩みを進めると進行方向の廊下に己の宿敵であるカルナが立っていた。
「こんなところで何をしているのですか、カルナ」
「・・・関係のないことだ」
「今日はあのトンチキ王子と一緒じゃないのか?」
「・・・関係のないことだ」
目が合ってしまったため無視するわけにはいかず話しかけるものの、カルナの反応はいつもよりもさらに静かな音を響かせて関わることを拒絶するような言葉を紡ぐ。兄であるビーマが話しかけても反応は変わらずむしろ何かを隠すようにしてほんのわずかに体を動かした。
「何後ろに隠してー・・・」
「待て」
「・・・?兄ちゃん、どうかしたんですか?」
ひょいとカルナの後ろを覗き込むようにしてビーマが近づくのをカルナが言葉少なく止める。ビーマは驚いたようにして目を見張り止まってしまった。不審に思ったアルジュナも同じようにして後ろを覗き込もうとする。
そこに居たのは最近騒動に巻き込まれ要観察の対応をされているドゥリーヨダナだった。だがしかし彼の顔は今まで見たことのないー否。誰かが良く浮かべていたー眉根を下げ困ったように笑っているような表情をしていた。その表情をする「誰か」をアルジュナは良く知っていた。
「・・・ヴィカルナ・・・?」
「ええ。まぁ・・・。はい。・・・久しぶりというべきでしょうかね。アルジュナ、ビーマ。」
思わず彼の名前を呼んでしまったアルジュナに答えるかのように「彼」は困ったような笑みを深めて言葉を紡ぐ。
確かによく見ればいつものドゥリーヨダナと違って柔和な雰囲気を纏っているしいつも以上に髪が短くなっている。ちらりと横目で兄を見るとピシリと固まったまま微動だにしていない。さてどうするべきかと思いながらもヴィカルナになってしまっている彼をどうすべきか考えたところで後ろから声が聞こえてくる。
「おい。こんな狭い廊下で、でっかいやつが立ち止まってんじゃねーよ」
「ここで止まっては他の方に迷惑でしょうし、話がしたいのならどこかほかの場所に移動した方が良いのでは?」
カリ化してしまっている方のドゥフシャーサナが不機嫌そうに言葉を紡ぎ、カリ化してしまっている方のヴィカルナも不思議そうに首を傾げこちらに近づいてくる。そうしてカルナの後ろに居る「ヴィカルナ」を見て大きく目を見開いて止まってしまった。
「てめぇ!兄貴に何しやがった!!」
「貴方たちは今の兄になるべく近づかないように通達されていたはずです。何故こんなにも近くに居るのですか?」
「待て・・・お前たち」
「いえ、それよりも彼をー」
ドゥフシャーサナは怒りを抱いたままに勢いよく固まったままのビーマの胸ぐらをつかみ責め立てるようにして言葉を紡ぐ。ヴィカルナも表面上はニコニコしているように見えるが怒気が隠しきれていない。
カルナが言葉少なくその騒動を収めようと彼らに近づこうとして移動する。確かに止めるのは大切だが、こちらに挨拶した以降言葉を発しない彼を休ませた方がいいのではないかと目線を向けると先程までにそこに居たはずの場所に誰も居なかった。どこに行ったのかと目線をさ迷わせた瞬間だった。
スパーンと2つの大きな音が響き、その音の元であるドゥフシャーサナとヴィカルナ頭を押さえ蹲った。
「いって・・・!?」
「あいたぁ!?」
「こんの・・・いい加減にしなさいよ、馬鹿兄貴―!!!」
目を白黒して2人に衝撃を加えた人物の方向に目線を向けるとぷんすこと怒っているような表情をした女性がハリセンのようなものを持ち仁王立ちしていた。
「・・・は?」
「・・・おや。」
あり得ない人物を見たとでもいうような表情を浮か2人が固まる。そんな2人の様子に気が付いてないのかポコポコと女性は怒り続けている。
「不測の事態を怒ってもしょうがないでしょう!全くもう!」
「あ・・・おう・・・?」
「いえ・・・でも・・・」
「でもも無し!ヴィカルナ兄さんだって最近知り合ったばかりの人なのに教育に悪いってたくさんの人に怒られているじゃない!」
「えぇ・・・?」
怒ってますという表情を隠しもせずに言葉を紡ぐ女性の勢いに押されたかのようにドゥフシャーサナは思わず頷いてしまうが、ヴィカルナは反論しようとする。その言葉を聞いた女性は最近カルデアでよく見られるようになってしまった「私は○○しました」という文字の書かれている看板を首から下げたヴィカルナのことを指摘する。そこに話が飛ぶ?とでもいうように困惑した声を出すものの、ポコポコ怒り続けている女性に頭が上がらないのか自主的にマスターに教えられたのか正座の姿勢をとりだした。
「・・・なぁ、あれって・・・」
「兄ちゃんが思い浮かべた通りの人だと思いますよ。さて、この後どうするべきなのでしょうか・・・」
ドゥフシャーサナに胸倉掴まれても固まったままだったビーマがようやく動き出しスススとアルジュナに近づき見知った女性の姿を指さす。ポコポコと怒り続けている女性に申し訳なく感じているのかヴィカルナはなるべく小さくなるように体を縮こませしょんぼりと肩を落としていた。話を止めるべきなのだろうが怒った女性というのは厄介でこちらにも説教が飛んできかねない。どうするか戸惑ってしまった2人を他所にカルナはためらうことなく怒り続けている女性の元へと近づく。
「止まれ」
「止めないでよ!私はこの馬鹿兄貴に対して説教をー」
「落ち着け。ドゥリーヨダナ。」
「・・・。・・・・・・・・。か、るな・・・?」
言葉少なく女性に声かけたカルナに嚙みつくように言葉を続けようとした女性に「彼」の名前を呼びかける。女性は驚いたように目を見開きはくりと言葉を止める。ぐにゃりと女性の姿が揺らぎ、ふらふらとたたらを踏むようにして壁へとぶつかる。ノロノロと顔を上げカルナを見つめ返すその姿はドゥリーヨダナのものに戻っていた。
「グラグラする・・・。気持ち悪い・・・。わし様、今、なにを・・・?」
「・・・そうか。戻るぞ」
焦点の定まりきれてない瞳がゆらゆら揺れて、顔色も悪い。先程までの記憶が全く残っていないのか困惑しきったような声音で言葉を呟く。カルナはほっとしたような雰囲気を持ちながらもドゥリーヨダナに近づきその体を抱き上げた。
「お・・・わぁ!?・・・カルナ、いきなりどうしたのだ?」
「・・・疲れたのだろう。寝てしまえ」
カルナに抱き上げられることに何とも思っていないのか暴れる体力すらないのかドゥリーヨダナは大人しく腕の中に納まったままの状態で問いかける。カルナは問いかけに応えずポンポンと背中を叩き眠りへと誘導させるような行動をとる。その瞬間どろりとその瞳が歪みうつらうつらとし始めた。
「・・・?わしさま・・・まだ、ねむく・・・な、ど・・・?」
「大丈夫だ。この俺がお前の眠りを守ってみせよう」
ゆるゆると落ちる瞼に瞳が隠されていく。急な眠気に戸惑うような声音に安心させるかのようにカルナが言葉を紡ぐ。急な変化にアルジュナはただただ見守るしかできなかった。ドゥリーヨダナの瞳が瞼の裏に隠されるまで静かに見届けた後カルナはようやっとこちらに目を向けた。
「では失礼する。」
スタスタとこちらを顧みることなくカルナは颯爽と立ち去っていった。
「うぅ・・・。足が・・・痛い・・・。」
「とりあえず戻るぞヴィカルナ。・・・謝らねーからな。」
「ま・・・まって。あし、足が~・・・」
正座をしていたせいかよろよろ立ち上がるヴィカルナに呆れたような目線を向けた後ドゥフシャーサナはビーマに目線を向け、ぎろりと睨みつけた。その後ヴィカルナの手を引き情けないヴィカルナの悲鳴を無視してカルナたちが歩いて行った方向とは別方向へと立ち去っていく。
「兄ちゃん・・・大丈夫ですか・・・?」
「・・・悪ぃな、アルジュナ。・・・さ、部屋に戻ろうぜ」
何とも言い難い表情をしている兄の顔を覗き込む。一度たりとて向けられなかったドゥリーヨダナの視線に何か思う事はあるのだろうが心配させないためかビーマはアルジュナに二カリと笑いかけ向かう予定だった場所へと歩を進める。
騒ぎが大きくならないのは良いことだが、こんな何とも言えない不穏な空気が続くのもいかがなものかと思考してしまう。(元の彼の騒がしい声が聞きたいだなんて思う私もだいぶ毒されているのでしょうか・・・。)そんなことを思い浮かべながらもアルジュナはビーマの背を追いかけていった。