■■の虜

■■の虜


夜、藤丸立香のマイルームにて。


「…三人で随分お楽しみだったようですね?」


アルトリア・アヴァロンが頬を膨らませながら呟く。

視線の先、ベッドの上で気まずそうにしているのは、部屋の主である立香、セイバーの「両儀式」、そして霊基第三のアーキタイプ:アース。三人は先程まで、ベッドの上で大層お楽しみだった。いわゆる抜け駆けである。

脱ぎ捨てられた豪奢な衣服はぐちょぐちょに濡れており、行為の激しさを物語っている。濡らしているのは、本人達をいやらしく彩る精液と愛液の混合物と同じものだろう。


「…ごめん……二人の誘惑に負けた…」

「そうね、今回は誘惑した私達が悪いわ。でも貴女も悪いのよ? 昨日立香と二人きりで過ごしたでしょう?」

「それも私達を差し置いて。何回立香のものを肚に受けたのですか?」


立香の謝罪を押し退けるようにして、「式」とアースが反論してくる。そう、抜け駆けは今に始まったことではない。三人一緒も良いが、やはり二人きりの時間というのは欲しいものなのだ。…まあ、今回は「式」とアースがダブルブッキングしたので二人きりではなかったのだが。


「…私も混ぜてくれなきゃ許しません」

「分かってるよ。おいで、アルトリア」


むくれるアルトリアに対し、苦笑しながら手招きする立香の“それ”は、もう臨戦態勢を整えていた。連戦後にも関わらず回復が早いのは、「式」やアースの加護でもあるのか。不明ではあるが、アルトリアにとってはさして重要でもない。


「…はい♥」


立香のOKサインで即座に機嫌を直したアルトリアが、身に纏うものを全て脱ぎ捨てていく。そして十分も経たないうちに、その素肌は唾液と精液に穢された。


───


三人が、思い思いに立香と唇を重ねる。優しく触れるだけだったり、情熱的に舌を絡めたり、その時その時で触れ方を変えて互いを貪った。


体位を変え、責め方を変え、ひたすら快楽に堕ちていく。三人の膣内と肌は、余すところなく立香の精液でマーキングされた。


激しい情交の中、立香が「孕め」と叫ぶ。受肉しても叶うか怪しいことだけど、その射精の勢いは奇跡を期待させてくれるに足るものだった。


そして事後。情事の跡を残したまま、四人で眠りについた。自分達が撒き散らした性臭の中の眠りではあるが、だからこそ気にせず安眠できた。

立香の右腕にアルトリア、左腕に「式」、身体の上にアースが寄り添う。身体の上はローテーション制なので、別の日には「式」やアルトリアがここに寄り添うことになる。


───四人一様に幸せを噛みしめる。微睡む三人を眠らない「式」が見守る中、夜がゆっくりと更けて行った。


───


だが、立香除く三人はこの幸せをカルデア内で終わらせるつもりは毛頭なかった。

三人は人間から見て超越者だ。彼女達の時間感覚からすれば、人間の一生ですら長いとは言えない。

…まあつまり。超越者を虜にした立香が一般女性と愛し合う機会はもう二度と来ない、ということだ。しかし、その事で立香自身が不満を漏らすことはないだろう。

───何故なら、立香もまた彼女達の虜なのだから。

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