なかよし

なかよし



「ンアーーーッ!!!!リバティちゃん!!アースが消えかけてるのにどうして泣いているだけなんですか!!!タイホ先輩も!!!!ねぇ!!!!聞いてますか!!!!ンアーーーッ!!!!アース消えちゃいます!!ねぇ!!アースのこと見てくださいよ!!」ハッと目が覚める。

初夢が自分がどんどんと消えかけてるにも関わらず、兄妹に完全スルーされる夢とはなんて最悪な一年の予兆なのだろうか。

「んあ…最悪な夢を見てしまいましたね!!リバティちゃん!!」枕元にちょこんと座っている、リバティちゃんを模したぬいぐるみに話しかける。「うわーー!てかリバティちゃんのぬい、前から思ってましたけどむちむちですね!!!本物のリバティちゃんそっくりです!!って!アースぬいぐるみになにセクハラしてるんでしょう!!!虚しすぎますね!!!」

リバティちゃんのぬいを枕元に綺麗に置き直した後、何故かベットの下に落ちて寂しく足を覗かせているタイホ先輩のぬいぐるみも、取り敢えず卓上に置いてあげる。

「そうだ!朝練に行きましょう!!!悪夢を打ち消すには丁度いいですね!!」

こう言うものは善は急げ、考えたら即行動!だ。なにしろこんな寒い中では少しでも躊躇ったら布団の誘惑に敗北してしまいそうだ。いつも通りの支度をした後、念入りにウォーミングアップをする。

その後に本格的に走る。壊れやすい足のために一生懸命に考えたプラン。

「ンアーーーッ!!!アースの脚みたいにアースの性格ももうちょっと繊細な方が良かったでしょうか!って!そこは笑うところですよリバティちゃん!!!」

返事をするはずもないリバティちゃんぬいに話しかけながら、朝独特の寒空の空気を肺に入れ込む。こんな独り言を虚しいだなんて考えてしまったらおしまいだ。スターズオンアースは常に明るくって図太くってちょっとおかしくて…そういうキャラクターなのだから。

このキャラクターでいれば、どんなに失敗してもレースで1番になれなくても、気にしなくていいような気がして。本当はそんな事ないのに。ずっとずっと悔しくって悔しくって仕方ない酷い人なのに。こんな事を常日頃思っていると知られたら、周りはどんな反応をするのだろう。

「んあー。リバティちゃんもタイホ先輩も、アースの事、嫌いになっちゃうんでしょうか…。あっ!ていうかもう既に嫌いだったらどうしましょう!!!!笑っちゃいますね!!!!…アースがあの夢みたいにアースから離れていっちゃうのでしょうか…。」

「アース先輩。実は私、アース先輩の事、結構好きなんですよ。」

「ンアーーーッ!!!!?」びっくりして振り向くとリバティちゃんが立っている。

「おはようございます!!!!リバティちゃん!!!!!!今日も可愛いですね!!!ほら!このリバティちゃんぬいも!!本物そっくりでむちむちなんですよ…」

しまった、絶対に聞かれていた。アースの心がドクドクと言う。あんなしんみりした事言ってしまうなんて、アースらしくない。しかもそれを聞かれてしまうなんて…。恐怖と羞恥が同時に湧き上がってくる。いつも明るくって図太くって…そんなアースが崩れてしまう。アースの心を守るために建てた壁が、こんなにも簡単に崩されてしまうなんて…アース、無念…。

「アース先輩がいつも何考えてるかなんてわかりません。けど、そんなアース先輩も好きですよ。憧れの先輩です。」

「んあっ!!リバティちゃん、突然のデレですか??アース、照れちゃいますよ。

…けど、アースそんなに凄い先輩じゃありません。」

しまった。いつもならふざけられるのに、今日はなんだか口が止まらない。ドクドクと身体が言っている。

「いっつも悔しいなって羨ましいなってみんなのことを思ってます。リバティちゃんだってそうですよ!アースが取れなかったトリプルティアラをすぐとっちゃうんですから!あの時、心の底からおめでとうと思うと同時に、本当に本当に悔しかった。アース、こういう先輩ですよ。JCの時も、貴方に先着されて悔しかった。そんなアースでも本当に憧れの先輩って言えるんですか?」

っ…言ってしまった。やってしまった。どんな反応をされてしまう?失望?リバティちゃんは純粋な子ですし、怒るでしょうか?!

リバティちゃんは少し目を丸くする。

「アース先輩、そのくらいみんな思ってると思いますよ。私だって2度負けて、その時にすっごく悔しかったんですよ!なんで?どうしてって…。そのくらいみんなだと思いますよ。というかその程度で先輩を嫌いになりません。先輩にはまあ、色々…やられていますが!それでもアース先輩の事嫌いにはなりません!」

パッと手に持っていたリバティちゃんぬいを本人に奪われる。

「これは回収です!ぬいぐるみにまでセクハラしてるなんて嫌いになりそうです!!」

「ンアーーーッ!!!えっ!さっきリバティちゃんどんなアースも好きっていいましたよね??!えっ!!嘘だったんですか!!!!」

リバティちゃんが駆け出す。

「ンアッ!!!返してください〜!!!愛しのリバティちゃんぬい!毎日一緒に寝てるんです!!!」

あぁ、幸せだ。アース。意外とありのままで大丈夫なのかもしれない。けど、まだちょっとこのままでいいかもなんて。だって結構楽しいですから!!!

ンアーーーッ!!!

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