どこまでも伸びる腕

どこまでも伸びる腕

とあるSS書き


海兵になりたてのルフィとウタはかつて世界の三分の一の黄金を手にしたという大海賊ウーナンの黄金を回収すべく初めての任務に出た。しかし、航海の途中にルフィは全ての食料を食い尽くし、挙句の果てに道中遭遇したおでん屋で食い逃げを働いたのだ。


その埋め合わせをすべく、ルフィとウタは黄金を目指し、ウーナンの眠る島へと上陸。道中、同じく黄金を狙う海賊エルドラゴと激突したのであった…











「ゴムゴムのォ〜ピストル!」


ウーナンの宝が眠る墓場にて一人の海兵と一人の海賊が拳をぶつけ合う。一方は小柄の青年ルフィ、もう一人はルフィの数倍の体躯を誇る大男エルドラゴ。

風を切り、猛スピードで迫るルフィの拳をエルドラゴは噛みついて防ぎ、そのまんま勢いよくロケットのように突っ込みルフィを吹き飛ばす。

「うわァあ!テメェ!おれの技を真似しんじゃ…がッ!」

吹き飛ばされ、岩盤に激突したルフィに即座に追いつき金の指で締め上げる。金色の爪がルフィの喉に食い込み、赤い血を流す。

「テメェ…はな…せ…‼︎」

「ガハハハ…!何度も俺の邪魔をしやがって…お前も、あの女もな!俺が欲する黄金を…何故邪魔する⁈」

「テメェこそ…なんで金の為なんかに!」

「ガハハハ!黄金が全てだ!ワシが欲するはただ黄金のみ!それ以外は等しくゴミだ!」


「………………………!!!」


エルドラゴの宣言にルフィは目を充血させて歯を軋ませて睨みつける。この男は屑だと。これまで散々見てきた海賊とおんなじだ。アーロン、クロ、クリーク…己の実力に物を言わせて人々を虐げる悪。

ルフィはそんな悪逆な海賊たちをいくらでも見てきた。大切な人の笑顔を奪い、自らの利益しか顧みない愚かな奴ら。


このエルドラゴだってそうだ。私欲で友人のウーナンの為の岩蔵の大切なおでんを蹴り飛ばし、挙句何の罪の無い少年トビオを傷つけた。彼の行為はルフィの怒りに火を付けたのであった。

「ガハハハハハ!もう終わりか?」

「…………いや、まだだ。お前をぶっ飛ばすまでおれは死なねェ!」

その叫びと共にルフィはエルドラゴの脇腹に嵐脚擬きの鋭い蹴りを叩き込み後退りさせる。

「お前…」


「黙れよ」


「………!」


「お前の大事な黄金は…おれにとっちゃ石ころだ…!黄金は笑わねェし歌わねェ!そんなものの為におれは大切な人の笑顔を…」


「笑顔を奪う奴を許さねェ!!!」


その宣言と共にルフィは地面を蹴って脱兎の如くエルドラゴに迫る。彼のスピードはエルドラゴの瞳にすら映らない。彼の持ち前のフィジカルにかつて戦ったクロの足捌きを参考にした剃擬き。

懐に入り込んだと同時に…

「ゴムゴムのォ〜鞭‼︎」

足を蹴り上げてエルドラゴを遥か空中に打ち上げ、更に自分の体に空気を入れて瞬時に吐き出すことで空に舞い上がる。

「まだ…まだ終わらんぞ!黄金を手にするまではァ!」


エルドラゴは尚も叫び、ゴエゴエの能力を限界まで解放した咆哮をルフィに浴びせかかける。青い奔流がルフィを襲い、肌を引き裂き、全身から大量の血を溢れさせる。だがそれでもルフィはエルドラゴに向かって手を伸ばし続けた。


ゴムの腕はどこまでも伸びる腕。


大切な人を守るにはその手をいつも握る必要がある。


いつも側にいる大切な人の泣く顔を、苦しむ顔をもう二度と見たくない。だからどんなに傷ついてもルフィは迷わず手を伸ばすのだ。彼の守るものの為に。


「ゴムゴムのォ〜〜!」


エルドラゴの咆哮が限界を迎えたタイミングを見計らい今まで大きく下げていた両腕を思いっきり打ち出すその一撃は…


「バズ〜カ〜〜!!!」


金の鎧をも打ち砕き、悪逆非道な海賊を天高くまで打ち上げたのであった。


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