どうして…

どうして…


補助監督の運転する軽自動車に揺られて、俺は現場へと向かった。

すると、到着した先には──悪夢が待っていた。

「あ、賭けさんだ!今日は賭けさんと組むんすね、よろしくおねがいするっす!」

「嘘だろ……」

不運なことに俺は“例のストーカー女”と任務をすることになったらしい。

俺は補助監督から任務の内容を聞き、女から逃げるように走り出した。

だが、足の速さは女の方が上なようで、数分もしない内に追い抜かされた。

「賭けさん、今日も良いっすね!えっちっす」

「…………」

「あ、呪霊!ウラ"ァ!!」

道中で出遭う呪霊を片っ端から消し飛ばしていく姿には思わず抱いたこともないような恐怖を感じさせられた。

俺の神経は全神経は呪霊でも呪詛師でもなくあの女に注がれ、移動中でさえ気が気でなかった。

「待て」

「!」

そんな中、一級相当の呪霊複数体と遭遇し、交戦することとなった。

そのときの俺は一級と準一級の術師が居て負けることはないと高を括っていた。

だが、女に神経を使いすぎたのか、仕事のパフォーマンスも著しく低下、結果として同等級の呪霊に敗北し、地に伏すこととなった。

それからしばらくして、赤黒い光が見えたと同時に姿を消していた女が戻ってきた。

「祓ってきたっすよ」

ただ一言、そうだけを言って倒れ込んでいた俺を抱え上げる。

「とりあえず、治療しておくっす♡」

悪寒がした。

完全に雌の顔をした女が治療と称して接吻しようとしている。

あのときのように。

「はぁー…んっ……ちゅ…」

嫌だ。

やめてくれ。

口の中に女の舌が入り込んでくる。

そしてそのまま俺の口内を蹂躙し始める。

おかしい。

こんなはずじゃなかった。

誰か助けて。

「ん〜ちゅっ……れろれろ…ん…」

息ができない。

苦しい。

怖い。

おかしい。

おかしい。

おかしい。

(賭けさんのココ、膨らんでる……?)

なんで?

なんで?

なんで?

どうして俺は感じているんだ?

こんな気持ちの悪い女とのキスで。

嫌だ。

嫌なのに……。

「ん……ぷはぁ…!これで治ったっすね!」

女は舌を抜く。

傷が癒えたことを確認すると、立ち上がって元来た道を戻る。

「待ってくれ!」

だが、俺は引き止めた。

女はキョトンとした表情で俺を見つめている。

「その……まだ万全じゃなくて…見えない怪我とかがあると思うんだ!」

俺は何を言っている?どうしてこんなことを……

「ふふふ…そうっすよね!じゃあ、もうちょっと“治療”していくっす♡」

あいつの艶やかな眼が俺の情欲を煽る。

あぁ、もうなんでも良いや。

ごめん。

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