とかして、とけて
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「ァ……アッ、……ん、ぁ、ハァ……あっァ」
ベッドで仰向けの錆丸に宝太郎は覆いかぶさるようにして浅く腰を動かした。錆丸は小さく開いた口から涎を垂らして、揺さぶられるまま微かな声が漏れる。
〈そこ、好き〉
〈ゆっくりして〉
ローテーブルの下に放り出されたタブレットから電子音声が低く囁いた。AIアイザックの言葉は錆丸の心でもあると知る宝太郎はその通りに柔く腰を埋める。抱きとめるようにきゅうと締められ宝太郎はわずかに下唇を食む。
「んっ、う……はぁ…」
「ぁ、……っ、ぅ、ん」
「ここ、ですか」
〈そう、そこ〉
「ぁ、やだ……」
〈いいから〉
「ぅ、あ」
〈気持ちいい〉
「オレも、すごく、気持ちいいです」
どっちが本心なのか、どちらを聞こうか、宝太郎は錆丸の顔色を見る。まるい頬は火照り、赤く染め上げられている。普段目元を隠す長い前髪は汗で額にへばりついて、瞳はとろりと溶け出しそう。シーツの上で絡めあった指を握れば錆丸はふにゃりと笑う。
「ほう、たろぅ」
「へへ」
どちらにしてもすごく気持ちよさそうで、宝太郎は一旦ぎりぎりまで腰を引き、切なげに寄せられた眉にキスをして再びゆっくり腰を進めた。
「ぁッ……! あ、」
「ここですか?」
〈そこも好き〉 〈全部好き〉 〈だからもっと〉
「んっ、ぁっ、ぃ、あ、や……っ」
「オレも……!」
宝太郎のゆるゆるとした甘いストロークに錆丸はまた小さく達した。
〈もっとして〉〈激しいのがいい〉 〈好きにしていいから〉
「ほんとに?」
「この、ままで」
〈欲しい〉
「どっちですか、聞かせてください」
「……宝太郎が、ほしい」
「あげます、全部あげますから」
ぽたり、錆丸の頬に汗が落ちる。太い眉を困ったようにひそめているのは、きっと宝太郎も限界が近いのだ。体を思ってゆるゆると動いてくれるだけじゃ、宝太郎も満足できないだろう。
〈ちゃんと気持ちいいか?〉
「はい……!」
「うん、じゃあ、いいよ」
「っ、……でも」
「好きにして」
赤らめた顔で微笑み、囁くその言葉に宝太郎は生唾を飲み込んだ。浅くに留めていた自身を錆丸の中に押し込んだ。
「アッ、ぁ……! っは、ぅ」
〈くる〉
「すみませ、っ」
〈いいから続けろ〉
「っ、はい!」
ゆっくりとした腰つきから変わって切羽詰まったように求める宝太郎、錆丸は絡めた指の先に力を籠める。
「先輩、先輩っ……!」
「ぅ……っ、ぁ、あっ、」
〈いいぞ、宝太郎〉
両手を繋いだまま支えのない態勢ではそう上手にはできない、それでも宝太郎は夢中で動く。気持ちいいのと、大好きな先輩に気持ちよくなってほしいのとで頭はいっぱいだ。
〈かわいいな〉
「せんぱぁい…」
大きな眼を細めてすり寄ってくる宝太郎は大きな猫みたいで愛らしい、そんなモヤのかかり始めた思考もアイザックは拾う。だけど。
「もっと……気持ちよくなりましょ?」
「きもち、いいよ…」
「先輩、オレを見て」
〈見てるだろ〉
「ううん、もっと」
宝太郎は中ほどに擦りつけるのをやめ、ぐっと奥へ自身を押し込んだ。息を詰まらせて背を丸める錆丸に宝太郎はついばむようなキスを落として、また突き上げる。ぐちゅぐちゅと、水音を立てて激しく、何度も。
「いっ……、 アッ」
「せんぱい、ほら、どうですか」
「ぁ、あ、、」
〈あ、キてる、キて、ル〉
「さびまる、っせんぱい、……オレで、ちゃんと気持ちいい?」
「ァ、……ぁ、あッ……!、ぅ、、、ん、ぁ、ぁっ」
〈ア、……あ、あッ……!、う……、ん、あ、あっ〉
錆丸とアイザック、2つの声が重なる。思考と意識を受けて話す彼までもついに、それが宝太郎には嬉しくてたまらない。
大好きな先輩がオレで気持ちよくなってる、気持ちよくさせてあげられてる。なにも考えられなくなるまでどろどろに溶かして、怖いことぜんぶ忘れさせたい、先輩が人がキライなら近づけさせないから、今だけ、今だけは。オレだけを見て。
「……好きです、錆丸先輩」
「ぼく、も……好き……っ、ぁっあ、」
「~~っ!」
宝太郎はその囁きにぶわりと頬を染め、突き上げた奥で擦り込めた、自分でいっぱいになるように。錆丸の喉からうわずった声が響く。錆丸が達すると同時にそこはきつく締まり、宝太郎は奥歯を噛みしめた。腰が甘く痺れ、そのまま宝太郎も果てて。……錆丸の上に倒れ込んだ。
「はぁ、……は、ぁ……」
「はは……あー、ほんと好きです。はぁ、めっちゃ好き」
「ふふ…」
「へへ」
息をつく間もなくなにを、と錆丸が笑えば宝太郎も笑い返す。跡がつくほどきつく握りしめあっていた手を一度解いて、どちらともなく結び直す。
「錆丸先輩、もうちょっとだけいいですか」
〈体力考えろ〉
「はぁい」
「…………………、いいよ」
「!!」