とある賞金稼ぎの不運4
突如船内から消えた、麦わらの一味の“歌姫”ウタ。
彼女を捕らえているのは、麦わらのルフィの仇敵、海賊ブリード。
ブリードは、麦わらの一味の10人に行き先を指示。彼らがそこに向かってみると…
「ふー…ふー…」
「!ウタ!!!」
そこには、檻の中にて猿轡をつけられ、さらには海楼石の手錠を嵌めた状態で横たわっている、ウタの姿があった。
檻の中にいるウタの肌には、鞭で打たれたかのような痣が多数…
「…!ウタ、大丈夫か!?今助けーー」
ルフィは事の元凶であるブリードに対する怒りを募らせながらも、彼女を助けようと飛び出すがーー
「っ!?むーーっ!!」
突如、跳ね起きたウタが叫ぶ。
それに再会を喜ぶ歓喜の色はなく、寧ろ悲痛さがあった。その理由はーー
「ルフィ!危ない!!」
「避けて!!」
「っ!?あっ…」
ドガァッ!!
「うわああぁ!!」ドスーン!
「なんだ…あの獣共は!?」
ウタの元に駆けるルフィを不意に殴り飛ばしたのは、巨大な大獅子(おおじし)。
さらには…
ドカンッ! ズシンッ!
「まだ来るのか!?」
建物の壁を突き破り、島の巨獣達が一斉に姿を現した。
グルルル…
巨虎(きょこ)
ウッホ…
大ゴリラ
アオーーン
巨狼(きょろう)
パオォ…
巨象(きょぞう)
ピィー!
巨大鷲(きょだいわし)
この島だけではなく、近隣の無人島を統べるボスクラスの獣達とその配下達が一堂に会し、麦わらの一味に相対したのだ。
ピィー
「む!?んんーー!」グラッ
「あっ、テメェッ!」
巨大鷲は、ウタの入った檻を自慢の鉤爪でガッチリ掴むと、そのまま破壊された建物の天井の上にそれを運び、自身はそのそばに鎮座した。
「コイツら、あのブリードってヤツの手先なのか!?」
「うん!アイツには“ペトペトの実”という相手を首輪で支配する能力があるんだ!」
「でも見て!アイツらの首!」
「な、なんでねぇんだ!?あの緑色の輪っか…」
ルフィ達が確認したところ、各島のボス達は勿論その配下達にも、ブリードの首輪が見当たらなかった。
強いて言えば、ウタの首にはあったが…
「じゃ、じゃあどうしてコイツらはーー」
『ペトトト…知りたいのなら教えてやろう…』
すると、獣達の後ろの壁に、映像電伝虫の映像が映った。
「!ブリード!!」
そこにいたのは他でもない、ウタを痛め付け檻に入れた、ブリードであった。
「テメェ!ウタを返せ!!姿を現せ!!」
『まぁまぁ、落ち着き給えよルフィ君。俺様が今から、ショーの概要を説明するのだから』
激昂するルフィに対し、ブリードの態度は余裕そのもの。
『まず、なぜこの動物達が俺様に従うのかを教えてやろう…』ピッ
「あっ…」
すると画面が切り替わり、そこにいたのは、檻に入れらた幼き巨獣の子供達…
グオオォ!!
ピィー!!
アオーーン!!
それを見て、巨獣達が悲痛な声を上げる。
「ま、まさか、コイツらのガキか…?」
『正解だ、鉄人フランキー…。俺様とこの動物達は取引をしていてね。この動物達が貴様等を皆殺しにした暁には、ここにいる彼らの子供を解放することになっているのだ』
「なんて汚い…」
『ペトトト…俺様はな、度重なる敗北で学んだのさ!能力で動物を従わせるのにも限界があると!!ならばどうする?…強制的にではなく、自ら俺様に従わざるを得なくしてやれば良いのだ!!!』
ブリードの下卑た嘲笑が、屋内に響き渡る。
「ブリード…テメェ…!!」
『さぁ、我が愛しの巨獣(ペット)達よ、麦わらの一味を皆殺しにするのだ。…もしこの場から1人でも逃したり、檻の中の娘を奪われたりしたら、貴様等のガキがどうなるか…』
…!グオオォ!!
ヴホォォ!!
アオーーン!!
パオォ!!
ピィー!!
「…!皆、やるぞって言ってる…!おれ達を皆殺しにしなきゃ、子供達は助からないって…!!」
「…クソがァ!!」
『さぁ、ショーの開幕だ!!!』
一方その頃…
「ぜぇ…やっと見つけたぜ!」
ブリードに雇われ、ウタを攫った張本人である“億狩り”の賞金稼ぎが、何かを見つけて笑っていた。
「グハ…!Dr.チョッパーに縫われた傷が開いちまったな…!だが、これを届けてやらねぇと…!」
全身ずぶ濡れで、横腹から血を流しながらも、“億狩り”は船に乗り込んだ。
「俺が教えた場所…外れてなきゃいいが…」
行き先は、今麦わらの一味が巨獣達との死闘を繰り広げている、例の島である。