とある日の面接
色々とスレから着想を得て。時系列ぐちゃぐちゃ オリキャラの名前思い付かなかったので違和感全開だけど許して
さて、我々も深く知る通り、例の同盟はその後合流した戦力を含め正に大合従を生み四皇二人をその玉座から引きずり降ろした。同盟の立役者である現在30億の賞金首トラファルガー・ローは全てが計画通りに進んだ・・・・・・とは限らないが、人生の目的を果たすことが出来たのである程度満足している。
彼は諸事情あって単身サウザンド・サニー号に居候する期間があった。ドレスローザの戦い後も邪魔になることは幾らかあった。これは彼が船上の騒がしい毎日の中で特に印象に残っている話である。
バルトロメオ「また来たべか」
ロー「誰がだ?」
バルトロメオ「ウチに入りたいという志願者だべ。ここのところ3日に1回は知らねェヤツから電伝虫がかかってくるもんで大変でな」
バルトロメオのぼやきがつい気になったので尋ねてみると、どうやらその面接擬きがさんざっぱら繰り返されていることに辟易しているらしい。確かに「麦わら」の名は裏社会で響いている。「ドンキホーテ・ファミリー」失墜後、その立場に成り代わり人員を増やしているのだから。やることといえば傘下の海賊団に入団して治安維持、敵潜入員の排除、そして闇市場の根絶がある。戦乱に乗じ傭兵稼業で荒稼ぎする競合企業「バギーズ・デリバリー」とは真逆のスタンスだ。ある人曰く「次代の白ひげ」と称える声もあるという。
ローはそんなまさか、と考える。所詮背伸びしたガキであることを様々な形で熟知している彼からしてみれば、あの麦わらが白ひげのような人格者にはなれないし本人も「なるつもりがない」と豪語するだろうと確信できる。そもそも救世をアウトロー如きに求めるのも世の末。海兵に縋る方が余程良い。
バルト「ホレ、あの船。あっこに今回の面接希望者が乗ってるんだべ」
ロー「随分と多いな。全員分やるのか」
バルト「それがルフィ先輩のスタンスだからな。・・・お前ェも欲しいのいるか?」
ロー「おれが見定めたヤツ以外ポーラータング号に乗せるつもりはない。お前、面接官だろう。ここで油売ってて良いのか」
バルト「いや、今回は最終面接だからな。オラの出番はないべ。先輩方が直々にやるからな」
麦わら屋達が?
ローはその興味本能に誘われ、少し立ち寄ってみることにした。この後はチョッパーと見識共有がてら新刊でも借りに行く予定があったが、まぁ火急ではなかった。
既に例の小舟にはサニー号から射出された階段が繋げられており、一人一人が列となって自分の番を待っている。何処かで見たような凶悪な賞金首からこんな世界に足を突っ込んでしまった哀れな少女もいる。馬鹿なヤツだ、と独りごちた。
いつもなら宴会会場となっていた草原生い茂る甲板、そして奥の船長室までずっと列は続いていた。社会から爪弾きにされた連中には並んで待つことが耐えられない狂犬のような人間もいるので騒ぎでも起きるんじゃないか、と思ったが全員が一列で収まっている。成程ブランドは権威に箔付けするらしい、誰もが畏怖しているのだろう。
船長室の前まで来てみるとばったりここの航海士と会った。
ナミ「どうしたの?ここに来るなんて」
ロー「大したことじゃないが、少し気になってな」
ナミ「それなら見学でもしてみる?」
見学だと、おれは小学生じゃねェなんて零したくなるがこの一味はこれが通常運行。気兼ねなく接することのできる相手とはまるで友達に話しかける感覚でぐいぐいと来る。これもあのマフィア気取りのガキが余計な渾名を付けて呼ぶからだ。だが気になっていたので幸いにも中に入ることができた。
ルフィ「ナミ、トラ男」
ロー「麦わら屋・・・・・・この面接擬きは一体何なんだ」
ルフィ「知らねェよ、何でか来るんだから。ロメ男やキャベツ、サイにも任せていたがアイツらも忙しそうだからな」
ロー「随分と傘下思いだな?」
ルフィ「しがらみばっかりさ」
少し諦念の混ざった屈託のない笑顔。海賊王になるから傘下なんて邪魔、と言い切る程の自由人にも関わらずいざ大船団結成となればちゃんと面倒を見ているのだから気質は案外真面目なのかもしれない。船長室には長机があり、そこに並ぶ様にフランキー、ロビン、ルフィ、ブルック、ゾロが座っている。対面には椅子が一つ。志望者が座る用。折角だから、という事でナミとローの分も椅子を運んできてくれた。有難く座らせて貰った。
志願者①「失礼するぜ」
さて、早速始まった。最初に入ってきたのは先程見かけた凶悪犯だ。ズカッと椅子に座り、足を組んで余裕綽々。ローの隣にいたフランキーがこっそりと耳打ちした。
フランキー「ありゃダメだな」
ロー「お帰り願うのか」
フランキー「インや、ウチの仕事がちーと増えるだけさ」
凶悪犯は下卑た笑顔で自らを売り込んだ。
①「おれは元々北の海でビジネスをやっていてな。あんたらの事業でも十分に役立つと思うぜ」
ロビン「具体的には?」
①「まぁまずは武器密売、転売、後は政府の船から奪った色々も扱ってる。特に悪魔の実に関しても少し詳しいんだ」
ブルック「それはそれは、素晴らしいことで・・・」
ブルックはまるで動じていない。
ブルック「それで実に詳しい、とは?」
①「おれの仕事仲間にコレクターがいてな、そんじょそこらの博士なんかよりも賢いんだ。確か元は政府お抱えのベガパンク、そうアイツの仲間だったもんでな。ベガパンクと言い合いになって出ていったらしいぜ」
①「アイツの実験は凄いんだ。まさにリアル体験だからな」
ロビン「・・・リアル?」
①「聞いて驚け、おれの部下が拉致してきた孤児共に喰わせて・・・」
ルフィ「ゾロ」
ゾロ「おう」
ゾロが突如立ち上がった。手のジェスチャーで右側にある扉を開けて向こうの部屋に行くように示す。男はホイホイと楽観的に付いていった。その後ゾロが右側に部屋に入ったと思ったら、少しの物音が鳴った。そしてゾロだけが戻り、何事もないように座り直した。ローは即座に理解した。フランキーの言っていた仕事、それは「海のクズ」の排除を指していたのだ。
ルフィ『ま、おれがその代表例みたいなもんだが』
ロー『それなら海軍にさせれば良いだろう。お前がやる必要があるのか、麦わら屋』
ルフィ『全くないな。でもロメ男達が役に立ちたいとさ。折角だと思って』
ロー『軽いノリで粛清ごっことは末恐ろしいヤツだな』
ルフィ『「七武海」様のお墨付きってか』
そんな話を過去にしたことがある。
次に入ってきたのはこれもまた先程見かけた少女だった。
志願者②「麦わら」
彼女の睨み付けるような声が響き、ルフィと目が合った。
②「お前を殺しに来た」
ルフィ「・・・へェ」
その場にいた全員が彼女に視線を注いだ。彼女の発言には一寸の怯えもなかった。そこにあるのは憎しみだった。ゾロは自らの相棒に手を伸ばした。
ルフィ「手の込んだ自殺願望、ってわけでもないようだな」
②「私はお前達のような下劣な連中とは違う。真正面からお前達を消し飛ばすことができるからここに来たんだ」
ルフィ「何故?」
②「しらばっくれるな・・・・・・あのクズを解放したのはお前だろう、麦わら!そしてトラファルガー、お前もだ!」
ロー(クズ・・・・・・・アイツか)
ローはとある男を思い出した。あの悦楽のためだけに他者加害を繰り返す外道を。シーザー・クラウン。ローとルフィによる四皇打倒作戦のために捕虜として連れて行き、WCIの一件で用済みとなったので放っておいたあの科学者。どうやらこの女は彼の被害者という。前髪で隠れていた顔の右半分が爛れていたのはそういうことなのだ。確かに自分達が暴れて彼を引きずりだしていなければ被害者が増えることはなかっただろう。本心を述べると彼の動向など知ったことではないが、責任がないと断言はできない。ローは否定せず、開き直ることもしなかった。ただ睨む彼女と向き合った。どんな罵声を浴びせられようとも文句は言えない自覚があったからだ。
ルフィは立ち上がり、彼女に近づいた。
ルフィ「そうか。・・・それで、どうやっておれ達を葬る」
②「この身体には沢山の爆弾を括り付けてある。少しでも触れてみろ、貴様諸共・・・」
ルフィ「無理だな」
②「余裕だな?」
ルフィ「なら何で震えてる?」
全てを圧倒する声だった。その場のどんな小さな音も飲み込んだ。志願者の怒気が消えた。メッキが剥がれ、隠していた怯えが見えてきた。
ルフィ「お前、家族がいるんだろう。弟が一人」
②「な、何でそれを」
ルフィ「あの野郎の動向は調べてる」
②「・・・・・・」
ルフィ「下らんマネはすんなよとは忠告した。傘下にも、たまに監視としてつけて貰ってたが・・・・・・これがアイツからの返事か」
ルフィが目配せを送ったや否や、ブルックがふらりと彼女を横切った。チン、と仕込み杖の音。バラバラと彼女が纏っていた爆弾がその場に散らばった。
ルフィ「食い扶持はあるのか?」
②「雇うつもりか・・・・・・今更罪悪感が湧いたか」
ルフィ「実験の後遺症に苦しむ弟を捨てて特攻か?」
②「うっ・・・」
ルフィ「おれを殺す、それは良い。当たり前の考えだ。だが苦しむ家族見捨てて死ぬのはタダのエゴだ」
最早彼女に言い返す気力はないようだ。
ルフィ「ロビン、ナミ。コイツを医務室へ連れてってやってくれ」
ロビン「分かったわ」
ナミ「任せて」
項垂れる彼女を支えながら、二人は部屋を出た。啜り泣きが聞こえたが気のせいということにしておく。
ルフィ「ブルック、後で連絡頼む。サイの所だ。アイツと、アイツの故郷に行ってもう一人雇ってやってくれってな」
ブルック「ヨホホ、拝命しました」
ルフィ「・・・トラ男」
ロー「一々言われなくとも分かってる」
対等な同盟の割に、無理難題を押し付けられることも多かった。それらと比べると簡単で重要なことだ。ローも立ち上がり、医務室に向かった。