つるぎのおか

つるぎのおか


一面に花が咲いていた

白いばかりで面白味もない

ふりむけば誰もいやしねえ

はぐれやがってと頭を掻く


軽く金属の触れ合う音

少しばかり先に誰かがいる

腹這いで何かしているようだ

暇つぶしに見に行ってみる


まず幅広の剣が目についた

見るからに無骨で質実、悪くねえ

使い手も同じような男だった

そして一心に花を摘んでいた


やあ、とそいつは立ち上がる

白い花束をそっと抱えながら

立ち居振る舞いは相当にやる

手合わせ願いたいが、無理だな


すまないが丘へ行きたい

男が朗らかに言った

後ろにある小高いそれだろう

指さしかけて首を振った


しゃあねえ案内してやるよ

言えばすまないなと頭が下がる

剣士のよしみだと笑ってやった

脇を通るとかすかに花が香った


君は三振りも使うのかい

あァ、三刀流だからな

よくわかるもんだと相槌をうつ

背後から花が一つ落ちる音がした


丘へ一歩を進めるたびに

花の落ちる音がした

足下を見れば同じ花だ

詰まれ萎れて潰していた


丘の頂上は礫と砂ばかり

一つだけ突き立てられた石

脇に何かが転がっている

見覚えのある赤錆びた幅広の剣


両目を矢に貫かれた男の骸


背後から花が一つ、飛んできた

手にしたそれを供えてやる

骸の抱く墓に白い花が揺れた




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