つめたくて、あたたかい

つめたくて、あたたかい


「おにいさま!ダンスの練習しましょ!ねぇ、いいでしょう?」

 柔らかな月明かり。煌めく星。サラサラ流れる、小川の歌声。

 遠く遥かに聞こえるは、楽しい楽しい祭り囃子。明るく楽しい笑い声。

 往く人、去る人。多種多様。陽気なピエロ。陰気な魔女。しかし、顔は、皆一緒。幸せいっぱい笑い顔。

「まったく……しょうが無いな。いいぞ!ラミ!でも、少しだけだからな!」

 小さな小さな少女の手を、小さな立派な兄が引く。月に煌めく白い橋。つめたいダンスホールを彩る、あたたかい踊り。


とんとんとん


てんてんてん


たんたたたん


クスクスクス――


 祭り囃子のリズムに合わせて、ステップのリズムを踏みましょう。

 間違えたって、ご愛嬌。だって、二人は、まるで妖精。愛しい愛しい、かわいい坊や。

 踊れ、踊れ、月の下。くるくる、くるくる、回れ回れ。回り回る、運命の輪が、いつか巻き込む過酷も知らず。

「楽しいね!おにいさま!」

「楽しいな!ラミ!」

 運命の輪は、糸巻き車。手繰った糸を巻く車輪。手繰り寄せた、運命の糸。燃える白、流れる赤、暖かく心地良い、沢山の黄色――そして、たった、一本の。

 ほつれ捻れた、桃の色

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